ad7fd9cb-s

この記事の結論と要約
専任技術者が退社した場合にとるべき手続きと、いなくなっても許可が継続できるようにするための注意点を書いています。専任技術者がいなけれ該当する業種の許可は取消対象です。自社に専任技術者の要件を満たしている人が退社した人以外にいなければ、要件を満たしている人を雇用する必要があります。雇用する際の注意点もまとめています。

建設業の許可を取得するためには6つの要件を満たす必要があります。

要件の1つが営業所ごとに常勤で専任技術者を配置することです。

常勤の専任技術者については『専任技術者の営業所における専任性とその具体的基準|建設業許可』でご確認下さい。

専任技術者は誰しもがなれるわけではありません。

一定年数以上の実務経験や資格を有していることが求められます。

専任技術者になるための要件については『建設業の許可の専任技術者になるための要件は?』をご覧ください。

専任技術者の要件は申請書を提出する時点はもちろん許可が下りた後もずっと満たし続ける必要があります

なので、もし許可取得後に専任技術者が退社するとなると、他の要件を満たす専任技術者に変更しなくてはいけません。

他に要件を満たした技術者が1人もいない場合は許可は許可は取消対象になります。

どうにか許可を継続するためにはどのような対処をすべきでしょうか。

この記事を読むことで専任技術者が営業所からいなくなった場合の対処法と、退社しても許可を失効させないための予防法を知ることができます

専任技術者が退社する場合の対処方法

専任技術者として登録をしている人が退社する場合、許可を継続するためには他の技術者を専任技術者として変更する手続きが必要です。

これは業種単位で判断します。

例えば電気工事業の専任技術者がAさん、電気通信工事業の専任技術者がBさんだとします。

Aさんが退社するのであれば電気工事業の専任技術者になれる人物を探し変更手続きをとるということです。

また各々の業種には一般か特定のどちからが振り分けられています。

特定の専任技術者になる方が難しく特定の専任技術者になれる労働者は一般の専任技術者になれます。

一般と特定の違いについては『一般建設業と特定建設業の許可の違い。どっちをとればいい?』こちらでご確認下さい。

それでは専任技術者が退社する場合に取り組むべきことを確認しましょう。

まずは専任技術者に変更できる者が自社にいるか調べましょう

専任技術者になれる人物を調べる方法

まずは次の情報を揃え、順番通りに探してみましょう。

◆次の専任技術者を探すために集めるべき情報

①全ての労働者が所有している資格を一覧にした表

②退社する専任技術者が担当する業種の許可を初めて取得した日

③理系の学校を卒業した労働者の卒業学科

④10年以上雇用している労働者及び指定学科卒業者の社会保険加入日

⑤自社で働く前に建設業許可会社で働いた経験がある労働者の情報、またその許可会社で専任技術者になったことあるかどうかの確認

この5つです。

一つずつ確認しましょう。

①全ての労働者が保有している資格の一覧表

専任技術者になるために一番証明が簡単な方法は適切な資格を保有していることです。

もし労働者が保有している資格の一覧表を作成していなければ、これを機に作成しましょう。建設業関連の資格であっても専任技術者になれる資格でないことは結構あるので注意しましょう。

その表を見ながら、変更する業種の専任技術者の資格を確認します。当事務所のHPのサイト内検索で該当業種を記入いただければ、専任技術者になれる資格が確認出来るのでご活用下さい。

もしくは建設業許可の手引きがあれば専任技術者の資格ページをご確認ください。

自社で作成した資格者の表と比べて、該当資格者がいればその資格者に変更します。現在も自社の社会保険に加入していることを確認して変更手続きに移りましょう。

この資格者は従業員だけでなはく代表取締役や取締役などの役員も対象です。つまり役員も専任技術者として登録出来ますので、役員の方も含めて資格の一覧表を作成しましょう。

もし資格者がいない場合、次のステップに進みます。

②退社する専任技術者が担当する業種の許可を初めて取得した日

有資格者で専任技術者を変更出来ない場合、実務経験で専任技術者になれる人物がいないかを確認しましょう。

実務経験で証明する場合、一般的に次のルールが適用されます。

建設業の許可期間中=工事の請求書や通帳が不要

無許可期間中   =工事の請求書や通帳が必要

なので自社が許可を初めて許可を取得した日から専任技術者が退社する日までは工事の請求書や通帳を準備しなくても、実務経験として認められます。

10年以上の実務経験があれば原則どんな方でも専任技術者になれます

もし初めて許可を取得した日が専任技術者が退社した日から遡って10年以上前で、その間はずっと社会保険に加入していたのであれば専任技術者として変更できます。

この社会保険に加入していた期間とは在籍期間中の常勤性を示します。後述しますが、ただ10年間会社に籍を置いてあっただけでは専任技術者の要件としては不十分と判断されます。

なのでまずは、退職する専任技術者が担当する業種を初めて許可取得した日付、これを調べましょう。

調べ方は許可通知書に記載されています。もし何回か更新して古い情報でわからなけれ許可を担当する都道府県の建設業課に確認しましょう。

一般的には許可番号を伝えれば初めて許可を取得した日がわかるはずです。

③理系の学校を卒業した労働者の卒業学科

実務経験は原則10年以上あれば誰でもなれると書きました。

例外として、実務経験が10年なくても専任技術者になれる方がいます。

それは理系の特定学科を卒業した者です。

業種によって短縮が認められる学科(=指定学科と呼びます。)はそれぞれ異なります。この指定学科は建設業の手引でも、弊所のHPのサイト内検索でも確認出来ます。変更したい業種名で検索してみて下さい。

指定学科の高校卒業者であれば5年以上

指定学科の大学卒業者であれば3年以上

このように実務経験は短縮化されます。

建設業の許可期間が10年は無くても、5年間あったとすれば指定学科高校卒業者がいればその方は専任技術者に変更出来る可能性があります。ただし後述しますが、この短縮期間中は原則、社会保険に加入していることが必要です。

ex)機械器具設置工事業の指定学科=機械工学科

電気工事業の指定学科=電気電子科

指定学科で短縮を使う場合の注意点

指定学科卒の者を専任技術者にする場合は次の2点注意しましょう。

(1)学校教育法に規定された学校か

(2)学科名だけで判断しにくい場合

一つずつ確認しましょう。

(1)学校教育法に規定された学校か

この指定学科の学校は学校教育法に規定された学校でないと実務経験の短縮は認められません。

認められない代表的なものが職業訓練能力開発促進法の規定による学校です。建設業の施工管理技士の受験要件としては認められていますが、建設業法の専任技術者としての指定学科とは認められていません。

学校教育法の学校は文科省管轄で、職業訓練能力開発促進法は厚生労働省管轄の学校で、ハローワークで受講手続きをする職業訓練の際に通うような学校とお考え下さい。

(2)学科名だけで判断しにくい場合

指定学科はある程度、広く認められています。

例えば機械科が指定学科だとする場合、機械精密システム学科や機械設計科なども認められることが一般的です。よって申請者側だけで指定学科に該当するかどうかを判断しない方がいいと思っております。

どういうことかと言うと、指定学科に該当するであろう卒業証明書&履修証明書を発行して事前に建設業の審査課に確認してもらうこと。これをオススメします。

学校教育法に該当するか学校なのか確認されますし、審査課が認めると回答すればそこは悩まなくて済むからです。私も事前にFAXをして指定学科として認めるかどうか言質を取るようにしています。

また学科名だけで判断しにくい場合のもう一つの注意点として履修科目次第で認める認めないが決まることがあることです。例えば機械システム科卒業でも履修科目を見るとプログラミングを主に履修していて、機械工学を学んでいないと判断されれば指定学科扱いしないこともあり得ます。

よって履修証明書も念のために発行しましょう。

④10年以上雇用している労働者及び指定学科卒業者の社会保険加入日

専任技術者には申請業種に関する実務経験が10年以上あればどなたでもなれると書きました。

この間の実務経験は常勤として働いていたことも求められます

アルバイトで週に2~3日働いていただけでは認められず、原則週に30〜40時間しっかり働き続けたことが求められるというわけです。

この常勤性を証明するのが社会保険に加入していた期間です。社会保険に加入義務がある人は一般的に最低でも週に30時間は働いていること推定されます。

なので実務経験を使い専任技術者になる人は社会保険に加入した日がとても重要です。

もし許可を取得した日が10年以上前で、その間ずっと社会保険に加入し続けていれば原則、専任技術者になることが出来ます。

社会保険に加入した日を確認する方法は、専任技術者候補の健康保険証に記載された資格取得日で確認します。

この資格取得日が変更時点で10年以上前かつ、変更する業種の建設業の許可が10年より前で現在も許可が継続していれば、その技術者を専任技術者に変更することが出来ます。

まだ許可を取得してから10年経っていない場合は、許可を取得する以前の実務経験を使用し10年に達することが出来ないかを検討しましょう。ただしこの期間は常勤性が求められますので、社会保険に加入して10年経っていないのであれば、その期間の常勤性を他の方法で証明するというハードルが加わることになります。

また無許可期間は工事の請求書や通帳が必要でしたね。

通帳は請求書の入金額が実際に振り込まれているか原本で確認されます。あまり古い通帳だと保管していなかったります。その場合は、銀行の窓口に行き通帳の取引記録を発行してもらいましょう。申請月より10年間は銀行で保有されています。

指定学科卒業者は実務経験期間が短縮されることは先に触れた通りです。3年ないし5年間社会保険に加入していることが必要になります。

実務経験の注意点

実務経験を利用して専任技術者を登録する事業所は以下の3点も注意しましょう。

決算変更届の工事経歴書に該当業種が実績なしとあると認められない可能性がある

②遠方に住んでいる(目安、片道2時間以上)の人は定期の履歴とか別途提出が求められることがある

電気工事業 & 消防施設工事業 は無資格者の実務経験を原則認めない

⑤自社で働く前に建設業許可会社で働いた経験がある労働者の情報

①~④まで調べたが該当者はいなかった場合、自社だけの実務経験証明だけでは専任技術者になれません。

なので過去に建設業の許可会社で働いていた時の実務経験の有無を確認しましょう。

まず大前提として実務経験は一つの会社だけでなく、複数の会社の実務経験を合算しても問題ありません。

例えば自社の実務経験で6年間証明出来れば、以前働いていた会社で4年間以上働いていることを証明出来れば10年間の実務経験期間になる。ということです。

この過去の会社を探す場合の注意点としては次の3つです。

(1)専任技術者を変更する業種の許可を初めて取得した日(以前働いていた会社が許可会社だった場合)

(2)厚生年金に加入していた期間

(3)過去働いていた会社が無許可会社だった場合、当時の請求書や通帳は借りることが出来る関係性か

一つずつ確認しましょう。

(1)専任技術者を変更する業種の許可を初めて取得した日

過去働いていた会社が許可会社であれば、退社する専任技術者が担当する業種の許可をいつ取得したのかを明確化しましょう。

調べる方法は、その許可を受けている会社の建設業課に問い合わせることです。

許可番号と大体の住所を伝えれば、現在許可が有効な会社であれば許可を受けた日付を把握していることが多いです。

多いというのは建設業課の自治体によって情報を把握しているかいないかそれぞれ異なるためです。

自治体によれば何十年も前の許可情報を保有しているところもありますが、保有していないところだと最近の許可を受けた日付しか分からないところもあります。

初めて取得した日を調べましょうの意味はなるべく古い期間を把握した方が、労働者が働いていた期間をカバー出来る確率が高まるからです。

ここまで調べたけど代わりの者がいない場合

ここまで調べたけど、専任技術者技術者になれる者がいなかった場合にとるべき選択肢は二つです。

①(一部)廃業届を提出する

②許可を継続するために新たな労働者を雇用する

一つずつ確認しましょう。

①(一部)廃業届を提出する

許可を継続する条件を満たせていないため、一旦この許可は取消しなくてはいけません。

この取消をする手続きのことを廃業届と言います。

許可条件を満たせなくなった2週間以内に届出する必要があります

廃業届と一部廃業届の違いは許可そのものを無くすのか、ある業種に限って無くす手続きなのかです。

許可を受けている全ての業種を無くす必要があれば廃業届、専任技術者が退社することによって一部の許可を無くすのであれば一部廃業届を提出します。

つまり許可を取得した行政庁に許可が失効した旨を正式に届け出す手続きとお考えください。

ここら辺について詳しく知りたい方は以下の記事をご確認ください。

しっかり判別したい2種類の建設業許可の取消

廃業届、届出書はどんな場合に提出する?ペナルティーは?

②許可を継続するために新たな労働者を雇用する

もし自社で専任技術者になれるものが他にいない場合には、新たな人材を雇用する等して招き入れるしかりません。

雇用する優先順位は、基本的には自社で専任技術者を探す順番と同じです。がとうする有資格者がいれば変更手続きとしては1番楽なのは間違いありません。

では新たな専任技術者技候補を招き入れる場合に、上で挙げた方法以外ではどんな点に着目して探してみればいいでしょうか。

大きく次の2つが挙げられます。

①他の会社で専任技術者になったことがあるかどうか

②出向社員として出迎えることが可能か

一つずつ確認しましょう。

①他の会社で専任技術者になったことがあるかどうか

自治体によりますが、一回過去に専任技術者になったことが確認できる資料があれば証明資料を大幅に省略することが出来ます。

例えば、東京都ですが専任技術者技術者になったことが確認出来る当時の申請書の控えの原本を窓口で見せると細い証明資料は省略が可能です。

また他の都道府県で専任技術者になったことが確認出来れば同様に認められるケースがあります。同じ建設業法のルールで取り扱う以上、他の都道府県の判断を無下には扱えないのでしょう。

もし過去に専任技術者技術者として登録を受けていたものがいれば、それを証明できる資料があるかないのかも確認してください。その資料が審査窓口で認められればその方に変更でき、許可が継続できます。

②出向社員として出迎えることが可能か

雇うのではなく、他社に在籍したまま専任技術者として働いてもらうことで許可の継続が可能です。

出向とは別の会社に雇われている状態で他の会社で働くことを言います。出向契約により専任技術者を招聘すし登録することは可能です。

もし専任技術者になれるものが他社にいて、出向する子が両社にとって有益なものであるならば検討しましょう。

ただし出向で専任技術者として登録するためには必要書類が多くハードルは高いです。

出向契約書を締結したり、出向する労働者の給料の支払いまでの入金確認、3ヶ月以上の在籍確認などといきなり導入出来るものではありません。

少なくとも3ヶ月以上前から計画的に出向契約を結び、変更会社で常勤性が確認出来ることも必須です。

アイコン-チェック・申請書を提出した以降も許可の要件はずっと満たしておかなくてはならない
・専任技術者になれる者を配置出来なければ許可は取消される
・代わりの専任技術者が配置出来ない場合、変更届➡廃業届の順番で提出する
・廃業届による許可の取消は、再度要件が満たせ次第すぐに許可申請できる

突然、専任技術者が退社しても困らないためには

専任技術者が退社する理由は様々ありますが、専任技術者が退社しても許可が継続できるようにするためには普段から以下のことを心がけましょう。

◆専任技術者がいなくなることへの4つの予防方法


①技術者を社会保険に加入させて10年以上雇うことを目標とする

②指定学科を卒業した人、過去別会社で専任技術者として登録したことがある人材を優先的に雇う

③過去に自社と同じ業種の許可を取得している事業所に専任技術者として雇用されており、かつ社会保険に加入していた人中途採用で雇う

④該当する資格取得を推進する

⑤家族を取締役に入れて常勤性ありで役員報酬を計上する

この5つです。

専任技術者になるための方法の1つは常勤で10年以上の実務経験です。許可取得するためには常勤で10年間働いた経験を書類で証明しなくてはいけません

常勤性は、社会保険に加入した期間で証明できます。社会保険に加入していないと当時の源泉徴収票や給与明細などが別途必要です。

もし新たな労働者を招き入れる場合には、厚生年金加入記録照会票を確認できれば確認しましょう。

これは社会保険をいつの期間、どの会社で加入していたかを証明することが出来ます。本人には社会保険に加入していたと思っていても、その書類に会社名が確認できなければ加入していなかったと判断されます。

詳しくはこちらの『過去に働いていた会社の経験の証明方法|専任技術者の実務経験』をご覧ください。

事務所が複数あるケース

専任技術者は営業所ごとに配置しなくてはいけません。

2つの事務所の専任技術者にはなれません。

例えば本店、支店とあった場合に本店の専任技術者として配置した人材はB支店の専任技術者にはなれません。

営業所ごとに配置しなくてはいけないからです。

会社単位で許可を継続出来ればいいわけではないので、あくまでも営業所ごとに該当する専任技術者がいるかどうか、退社するのであれば今回の記事に書いた方法で探して見てください。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

専任技術者が退社する場合に許可を継続させるためには、他の専任技術者になれる者に変更しなくてはいけません。

自社内にいなければ新たな人物を招聘する必要がございます。

資格者がいれば簡単に変更手続きできますが、それ以外だと見落としてしまうこともあります。

そういう時はお付き合いのあるまたは専門の行政書士に確認してもらうことをお勧めします。

というのも、なるべく網羅的に書いたつもりですがこれ以外の方法でも専任技術者を変更できる方法はあるかもしれないからです。

事業所によって何が問題で専任技術者を変更出来ない理由は千差万別あります。というのも自治体によってる実務経験の認め方が異なるからです。

関東で言えば、東京だと認めない、埼玉だと認めると言った自治事務が取扱が違います。言ってしまえばその審査方法ありきで専任技術者を変更するベストな方法を探るのが1番効果的です。

これは事業所さんが一から調べるより経験のある行政書士の方が短い時間で導けるのは間違いありません。

また勘違いしやすいことして実務経験の数え方です。

実務経験は1つの業種の専任技術者になるために最低でも10年の実務経験が必要です。つまり2つの業種の専任技術者になりたければ、最低でも20年間の実務経験が必要となります。

10年間で色んな業種の工事を経験していたとしても1つの業種の専任技術者にしかなれません。

退職する専任技術者が資格者で複数の業種を担当していれば、もし実務経験だけで複数業種を取得するのであれば複数人の専任技術者を用意しなくてはいけないことも十分にあり得ます。

色々と考慮することがあり手続きの期限もありますので、お手続きする際にはご注意くださいませ。

以上になります。

今回は専任技術者に関しての記事でしたが、経管が突然いなくなることもあり得ます。その場合の対処法は『経管になれる者が自社にいない場合、許可はどうする?』をご覧ください。