決算変更届 経営事項審査

この記事の結論と要約
建設業許可を取得した事業所は毎年決算変更届を提出する義務が課せられます。この決算変更届出とは具体的に何か。作成時にはどんな情報が必要なのかにつきまとめました。

決算変更届とは建設業上定められた決算情報と工事実績をまとめた書類を言います。

建設業の許可を受けた会社は年に1回、毎年決まった時期まで(決算日から4ヶ月以内)に書類を作成して届出さなくてはいけません。

この決算変更届を提出しないと建設業許可の更新手続、業種追加等が出来ません。

また公共工事の入札を希望する事業者は経営事項審査を受ける必要があります。決算変更届で作成する工事経歴書は経営事項審査と強く関連し、通常の決算変更届よりも作成ルールが厳しくなります。

経営事項審査を受審される事業者は決算変更届に必要な情報、作成ルールを明確に理解しましょう。

この記事を読むことで決算変更届を作成する際の注意点と経営事項審査との関係性を知ることが出来ます

決算変更届とは

決算変更届は経営情報と技術情報を第三者にも閲覧させ保護することが目的ににあります。

建設業法の目的には発注者の保護があるので、工事の発注者を保護するためと考えてもいいかもしれません。となると工事に関連する書類が必要になります。

決算変更届の書類は次の通りです。

◆決算変更届に必要な書類リスト


①変更届出書(別紙8)

②工事経歴書

③直前3年の工事施工金額

④財務諸表(貸借対照表、損益計算書、注記表、付属明細表、株主資本等変動計算書)

⑤納税証明書

➅事業報告書(様式は任意、株式会社のみ)

決算変更届の目的は発注者に自社の最新情報を公開することだと言いました。

前年度で請け負った工事の実績や元請下請の工事の売上高、決算書情報を公開して保護します。

②の工事経歴書では自社でどの程度の規模の工事を年に何件受注しているのかが確認出来ます。役所に提出された情報なので正確性はある程度担保されますよね。

また決算書は上場していない限り見ることは出来ません。許可会社の決算情報は誰でも閲覧することが出来るのは、発注者が資金繰りに困っていない会社に注文しないためとも考えられます。

決算変更届を作成・届出す目的は以上です。

ちなみに次の情報は年度内に変更があった場合にのみ、決算変更届と一緒に提出します。


・使用人数

・政令3条の規定する使用人の一覧表

・定款

・社会保険への加入状況

提出時期

決算変更届の提出期限は事業年度終了日から4ヶ月以内です。

注意点は決算変更届は国土交通省管轄の役所に提出する書類であり、税務署に提出する決算書とは異なります。

全く同じものではないのですが基本的には決算書が出来上がらない限り、決算変更届は作成できません。

税理士が作成した決算書の売上高を工事の売上、それ以外の売上に分けて工事にかかる原価を算出しなくてはいけません。

この工事のみの売上高、工事の原価は決算書には書いていません。これら算出する作業は時間がかかるので注意が必要です。

経営事項審査と決算変更届の関係性

公共工事を入札する事業者は経営事項審査を受審しなければなりません。

経営事項審査に関してはこちらの『経営事項審査とは何?一連の流れと注意点まとめ』からご確認ください。

決算変更届は経営事項審査を受ける事業所と受けない事業所で記載する情報量やルールが異なります

具体的には次の2点が相異点です。

◆経営事項審査を睨んだ決算変更届の相違点


①税抜きか税込か

②工事経歴書に記載する工事の情報

決算変更届に記載する情報に財務諸表の売上高と工事の請負金額があります。

この数字を税抜き表記か税込表記かを事業者は選択が可能です。

ただし経営事項審査を受審する場合は、税抜き表記の情報を経営事項審査の申請時に提出しなくてはいけません

そう考えると、決算変更届は税抜きで作成する方が望ましいと断言出来ます。

なぜなら経営事項審査を申請する際には税抜き表記の書類を作成しなくてはいけないからです。経営事項審査は有効期限もあるので、なるべく作業を減らすことは重要です。

経営事項審査を受けないのであれば税抜き税込どちらでも大きな差はないと言えます。作成しやすい方法 を選択すればいいでしょう。

あえて言うのであれば、前々年度の決算変更届と統一した方が望ましいです。なぜなら過去3年の売上高を記載するからです。前回と今回で税抜き税込みが違うと前回に提出した数字をそのまま使えません。

ご参考までに。

次に工事経歴書の記載項目につき確認しましょう。

工事経歴書は許可を受けた業種ごとに作成が必要です。

工事経歴書に記載する情報は大体次の通りです。

・発注者名
・元請か下請か
・工事名
・請負金額
・工期
・主任技術者名等
・全体の売上
・元請の売上
・全体の施工数

これらの情報を経営事項審査を受けるか受けないかで記載する工事の件数が違います。

経営事項審査を受けなければ請負金額が大きい上位10件で済みます。(自治体によって細かな差異あり)

しかし経営事項審査を受ける事業者は違います。

まずは元請工事だけに絞り、請負金額が大きい順番で元請工事の売上高全体の7割に達するまで工事を記載します。

次に全体の工事の売上高(元請と下請を合算した金額)の7割超になるまで記載します。ここは元請下請関係なく金額が大きい順番で並べれば問題ありません。

他にも細かいルールがあります、ここでは割愛します。

着目すべき点は経営事項審査を受審しなければ10件工事情報を記載すればいいが、受けるとなると10件では足りないことがあると言うことでしょう。

公共工事を入札するご意向のある事業者は決算変更届の時点で要件を満たした工事経歴書、決算書を作成しておくことが望ましいと言えます。

経営事項審査のスケジュール

経営事項審査には有効期限があると書きました。

決算変更届を提出する時点でスケジュールを理解しておきましょう 。

決算変更届を提出してからの流れをまとめましt。

事業年度が終了した日から2ヶ月以内に決算報告書(税理士が作成)を提出します。

この決算報告書を基に建設業法上の決算変更届を作成して「経営状況分析機関」に経営状況分析申請をして点数の通知書をもらいます。この通知書を手に入れるまで10日ほどかかります。

通知書を受領後、決算変更届を許可行政庁に提出します。

この提出までを事業年度終了日から4カ月以内に取り組まなくてはいけません。

なので決算変更届を作成する期間は実質1ヶ月半くらいです。

その後、経営事項審査の申請書を提出し最終的な点数である総合評定値が通知書が発行されます。

こうすることで公共工事の入札資格を得ることが出来ます。

注意点

経営事項審査の結果通知書を受け取りました。

この通知書には有効期限があります。

その有効期限と言うのが決算日から1年7カ月です。総合評定値の通知を受けた日ではなく事業年度の最終日から1年7ヶ月です。

中途半端な期間だと感じるでしょうが、経営事項審査で有効期限を切らさないようにすると、そんな余裕を持てるスケジュールではありません。

というのも行政庁が経営規模等評価申請を審査して総合評定値を出すまでの期間が約1ヶ月とされています。

決算変更届を提出する期限が事業年度終了日から4カ月以内です。

つまり滞りなく書類を提出しても結果通知書を受け取るまで5ヶ月くらいかかります。また審査窓口の混雑具合によってはすぐ経営事項審査を提出出来ません。

ギリギリに決算変更届を提出すれば既に決算日から4ヶ月経つ頃です。そこから経営事項審査の書類を作成して、申請日まで2ヶ月くらい時間が掛かれば結果通知を受け取る日は7ヶ月になり期限ギリギリの計算になります。

2期前の決算日時点の総合評定値が、直近の総合評定値が出るまでは最新のもです。この有効期限切れると入札参加資格がなくなるので公共工事は受注出来なくなると言うことです。

以上のことから決算変更届は早めに提出しましょう。

アイコン-チェック・決算変更届は毎年提出する。決算日から4ヶ月以内が期限。
・決算変更届は発注者を保護するため
・公共工事を入札する事業所は決算変更届を早めに提出することが重要
・経営事項審査を申請する場合は決算変更届は税抜きで作成しなくてはいけない

まとめ

いかがでしたでしょうか。

決算変更届は毎年提出する義務があり、提出しないと許可の更新や業種追加申請は受け付けられません。

必ず毎年提出しましょう。提出期限は前期の決算日から4ヶ月以内です。

決算変更届の目的の一つは決算情報及び工事の施工状況を開示して発注者を保護することです。特に建設業以外の売上もある事業者は決算書の数字を丸写しするだけでは正確にはならないので作成時にはご注意下さい。

また決算変更届出は経営事項審査とも強く関係します。

受審する場合は税抜きで作成することや、工事経歴書を全体の7割に達っする部分まで記載しなくてはいけないなどルールが厳格化されるのでご注意下さい。経営事項審査の有効期限が切れないように前倒しで準備することも重要です。