この記事はYouTubeで配信している「経営業務の管理責任者とは」の内容を文字起こししたものです。
建設業許可を取得するために満たさなければならない7つの要件のうち、経営業務の管理責任者についてまとめましたのでお役立て下さい。
建設業許可を取るため経営業務の管理責任者について調べたところよくわからなかった方、もしくは経営業務の管理責任者についてもっと詳しく知りたいという方向けの記事です。
※令和2年の建設業法改正により経営業務の管理責任者は一人でなくても体制が整っていれば認められることになりました。この記事では改正前からある一番オーソドックスな経営業務の管理責任者になるための要件につき確認できます。
Contents
はじめに
今回は、許可要件のうちの1つ、経営業務の管理責任者(通称:ケーカン)について詳しくお話いたします。
このケーカン・・・本当に大変なんですよ。
というのも、このケーカンの要件を満たせない/証明が出来ない、といった相談をとてもよく受けます。
またケーカンは許可を取得する時だけでなく許可取得後の維持にも必要です。
許可取得時だけではなく中長期的な目線でケーカンの配置を考えないと許可の継続が危ぶまれるということも特徴です。
令和2年に建設業法が改正されましたが、その背景には、改正前のケーカンの基準のままでいると、今後該当する方がいなくなり建設業許可を維持できない事業所の増加が懸念されたことが理由の1つとして挙げられています。
そこで、今回の記事では以下の点につき触れていきたいと思います。
また、建設業許可を取得するにあたっては、ケーカン以外にも必要な要件が6つ課せられています。ご存じでしょうか。
もしよくわからないという方は、いきなりケーカンの話を聞いても全体像が見えにくいです。
そこで、建設業許可の全体像を把握するために、まずは許可取得の前段階の動画「建設業許可のイロハ教えます!」、
その次に建設業の許可要件の全体像について話をした動画「許可取得の要件につき分かりやすく解説してみた」をご覧いただいてからこの記事を読んでいただくことを強くお勧めいたします。
どちらも、これから建設業許可を取得したい事業所さん向けの動画です。
ぜひご覧ください。
経営業務の管理責任者 ケーカンとは
以前の動画では、7つの許可要件についてこのような図を使って説明しました。
今回は許可要件のうちの1つ、⑦の「経営業務の管理責任者」についての解説です。
通称ケーカンと呼ばれています。
ケーカンとは、建設業の経営の管理を適正に行うことが出来る者とされています。
砕いて言うと、建設業の経営のプロですね。
ケーカンになる方法、ケーカンとして認められる方法は、法改正により全部で6つになりました。
今回説明する方法はその6つの中で一番オーソドックスな方法です。便宜上、オーソドックスなケーカンと呼びますね。
他の5つの方法は別の記事にて説明します。
もちろんオーソドックスなケーカンと他の5つに優劣はありません。いずれかにあてはまればケーカンの要件は満たせます。
オーソドックスなケーカンは、古くから認められている方法で、証明に必要な書類が比較的定型化されています。
全ての建設業者が対象となるケーカン要件!!と言っても過言ではありません。
それに対し他の5つの方法は、対象となる建設業者が限定されています。
・取締役会があり、建設業以外にも複数の事業を行っている会社
・設立年度が古く、歴史のある比較的規模の大きい会社
よって、
・ 設立間もない建設業者さん
・ 従業員数がそれほど多くない建設業者さん
は、ケーカンについては今回説明する方法のみの検討で良いと個人的には思っています。
それを踏まえ、オーソドックスなケーカンとはどんな要件なのかを確認しましょう。
オーソドックスなケーカンの要件
建設業法上求められる経営のプロと判断する基準として、一定期間以上の建設業の経営経験を有することが挙げられます。
この「一定期間」が5年です。
過去に5年以上建設業の経営経験があることが必要になります。
また、ケーカンは経営者として常勤で働く必要があります。
よって、許可を受ける主体が
・法人の場合 ⇒ 役員
・個人事業主の場合 ⇒ 申請者本人
がケーカンでなければなりません。
また、ケーカンは欠格要件に該当してはいけません。
詳しくは「建設業許可を初めて取得する方向け 要件につき解説してみた」でご確認ください。
欠格要件に該当しているのに誤って許可を取得してしまうと大変なことになりますので、必ず事前確認を行いましょう。
まとめます。
① 法人であれば役員、個人事業主であれば本人がケーカン要件を満たす必要がある
② 常勤性がある
③ 欠格要件に該当しない
④ 建設業の経営経験が5年以上ある
それぞれについて、詳しく確認しましょう。
①法人であれば役員、個人事業主であれば本人がケーカン要件を満たす必要がある
ケーカンは経営者なので、誰かに雇われている者(つまり労働者)は該当しません。
◆法人の場合◆
⇒役員
◆個人事業主の場合◆
⇒個人事業主本人
がそれぞれケーカンに就任し、要件を満たせているかが重要です。
②常勤性がある
ケーカン要件の常勤性があるとは何でしょうか。
具体的には、常勤性は次の2つで判断します。
(1) 主たる営業所に通える範囲に住んでいるか
(2) 自社で毎日所定の時間中、職務に従事しているか
それぞれ確認しましょう。
(1) 主たる営業所に通える範囲に住んでいるか
常勤性とは申請会社で主に働いている状態のことです。
よって日々通勤することが原則求められます。
自治体により日々通勤出来る基準は異なりますが、一般的には次のように定義出来るでしょう。
「基本的に毎日営業所に通うのだから、遠くに住んでいたら通えないよね?」という意味合いです。
(2) 自社で毎日所定の時間中、職務に従事しているか
基本的に毎日所定時間は許可を取る会社で建設業の経営のプロとしてこれから働くのだ、ということを証明しなくてはいけません。
このことを客観的に証明する手段が、適切な社会保険への加入です。
法人の場合
⇒ケーカンの健康保険証の写しを提出し、保険証から申請会社の名称が確認できればOKです。
個人事業主の場合
⇒健康保険証を提出しますが、それだけでは足りません。
健康保険証の提出とは別に、さらに直近の確定申告書の提出が必要になります。
③欠格要件に該当しない
欠格要件とはケーカン及び法人であれば役員全員が昔悪いことをしていなかったかどうかです。
当てはまると許可は取れません。
次のチェックボックスをご確認下さい。
□ 自己破産したことはあるか?
□ 精神的な障害があると診断された経験はあるか?
□ 暴力団と関係があるか?
□ 未成年者か?
□ 禁錮刑、罰金刑、懲役刑を受けたことはあるか?
□ 昔、建設業の営業停止処分を受けた心当たりはあるか?
□ 昔、建設業の許可を取り消された心当たりはあるか?
ケーカンにこれらを質問して、回答が全部NOであれば問題ないでしょう。
④建設業の経営経験が5年以上ある
建設業の経営経験が5年以上あるという要件を次の2つに分解しましょう。
① 経営経験が5年以上あること
② 建設業を営んでいたこと
この①②の要件をケーカンになる者が満たせていることを書類で証明します。
それぞれ確認しましょう。
①経営経験が5年以上あること
経営経験は法人と個人事業主それぞれ認められています。
ただし証明書類がそれぞれ異なるので注意が必要です。それぞれ確認しましょう。
法人での経営経験
法人での経営経験は登記簿謄本で証明します。
登記簿上でケーカンとなる者がケーカンの取締役就任期間が5年以上あることが確認できれば基本的にはOKです。
仮に1つの会社で5年間証明できなくても、複数会社で5年間以上役員を務めていたことが証明できれば問題ありません。
個人事業主での経験
個人事業主での経験は確定申告書で証明します。
以下の点が確認できれば基本的にはOKです。
・ 確定申告書は最低5期分あること
・ 確定申告書は税務署へ届出したことが確認できること
・ 事業所得があること
法人と個人事業主の証明方法の違いは以上です。
ここで確認いただきたいことが法人と個人事業主の経営経験は合算できるということです。
例えば法人にて取締役として3年、個人事業主として2年という場合にはそれぞれの期間分の証明書類を揃えれば証明出来るということです。
法人と個人事業主時代の経営経験を合算して5年以上になる場合も、要件は満たすことが出来ます。
②建設業を営んでいたこと
5年以上の経営経験は「建設業」でないといけません。
製造業や販売業といった建設業以外の経営経験しかない場合、何年やってもケーカンの対象外です。
では、どのようにして建設業の経営経験を書類で証明するのでしょうか?
経営経験の証明方法は、過去に在籍していた会社が建設業の許可会社だったか/無許可会社だったか、
許可会社だった場合、ケーカンだったか/ケーカンではなく普通の取締役だったか
で分けられます。
これらの条件を図にしてみましょう。A-1、A-2、Bの3つのケースに分けられることがわかります。
それぞれのケースの必要書類について、確認しましょう。
(A)過去に在籍していた会社が許可会社だった
(A-1)ケーカンだった場合
⇒ケーカンとして登録された申請書の控えがあれば、証明書類として認められます。
その申請書の控えを、以前在籍していた会社から借りられるかがポイントです。
(A-2)ケーカンではなく取締役だった場合
⇒在籍期間分の建設業の許可証の写しが必要になります。
例えば、ケーカンとして申請する者が許可会社に平成23年~28年まで取締役として在籍していたとします。
その会社が平成21年に許可を取ったとします。建設業許可の有効期限は現在5年です。
その場合、平成21年の許可証の写しと、平成26年・平成31年に更新した許可証の写しが必要になるということです。
次に、下の図をご覧ください。
この役員の就任期間と許可を受けていた期間を重ねると、図の黄色い部分がどちらの期間にも該当していることがわかります。平成23年~28年なので、5年間ですね。
つまり、取締役に就任していた期間と許可会社の期間が5年間ある=建設業の経営経験が5年以上ある!!と証明できるということです。
(B)過去に在籍していた会社が無許可会社だった場合
ケーカンになる者が在籍していた当時の工事に関する書類が必要になります。
具体的には、必要証明書類は
・ 請負契約書
・ 注文書請書
・ 工事の請求書と通帳
契約書等に記載された日付ベースで5年間分の提示提出が求められます。
自社の役員経験で5年間を証明する場合には、これら過去の資料が保存されている必要があります。
工事に関する書類は絶対に捨てないでください。
もし他社の経験を使用して申請する場合には、これら資料を借り受けなくてはいけません。
5年間分の資料を借りるというとどうしてもハードルが高くなります。
ここまでお話したケーカンの証明書類についてまとめた表がこちらです。
まとめ
今回は許可要件のうちの1つ、経営業務の管理責任者(ケーカン)についてお話しました。
いや~長かったですね。
オーソドックスなケーカンの要件についてもう一度振り返ってみましょう。
① 法人であれば役員、個人事業主であれば本人がケーカン要件を満たす必要がある
② 常勤性がある
③ 欠格要件に該当しない
④ 建設業の経営経験が5年以上ある
これらの許可要件を満たすこと・証明することが大変なのは伝わったかと思っております。
しかし、どちらかと言うとケーカンは許可取得後の維持の方が大変です。
例えば代表取締役とケーカンが同一人物で、役員が他にいない会社を考えます。
仮にこの会社が30年以上建設業を営んでいたとしても、自社の経験だけでケーカンになれる方はいません。
役員経験のある者が代表以外いないからです。
ケーカンが年齢を重ね引退するとなっても、自社でケーカンを育てるのであればまた5年の時間が必要です。
このように建設業許可の継続を希望する場合にケーカンは大きな壁となることがあります。
また、ケーカンが辞める場合に他の者に変更する手続きも注意が必要です。
ケーカンの退任日時点で他にケーカンの要件を満たす役員がいなければ、許可は維持することが出来ません。
ケーカン関連の手続きをする際には細心の注意を払って取り組んで下さい。
・ケーカン許可継続にあたっての対策について、こちらのブログで説明しております。ぜひご覧ください。
⇒「建設業許可の経営業務の管理責任者とは?通称、経管を徹底解説!」
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