まとめと要約
この記事はYouTubeで配信している「専任技術者について分かりやすく解説!」の内容を文字起こししたものです。
建設業許可を取得するために満たさなければならない7つの要件のうち、専任技術者についてまとめましたのでお役立て下さい。

 
この記事では、建設業許可取得のための専任技術者の具体的な条件や必要書類について説明しています。

はじめに

今回お話するテーマは専任技術者の概要についてです。

専任技術者とは、こちらの図にあるように、建設業の許可要件のうちの1つです。

「専任技術者がいなくて、許可が取れない!」と悩まれている建設業者様は少なくありません。

そこで、以下の点につき今からお話しいたします。

◆今回の記事でお伝えしたいこと◆

 
・どういった方が専任技術者になれるのか

・どういう条件が専任技術者には求められているのか

 
専任技術者が何のことかよくわからない方は、まずは建設業の許可要件について大枠を理解しましょう。

許可要件についてはその全体像を説明した動画がありますので、こちらからご確認ください。
「許可取得の要件につき分かりやすく解説してみた」

専任技術者の許可要件

建設業の許可を取得するためには、取得したい業種に対応する専任技術者が、専属かつ常勤で働いていることが条件です。

この具体的な条件について確認しましょう。

専任技術者の許可要件を大きく2つに分解します。

①専属かつ常勤

②取得したい業種に対応する技術的能力がある

この2つの条件を常に同時に満たすということが必要です。

それぞれ確認しましょう。

① 専属かつ常勤

専属とは

許可を申請する会社の専任技術者として登録されると、他の会社では専任技術者として登録できない、ということです。

つまり1社専属という意味ですね。

なおかつ、その会社で常勤性が必要です。

常勤性とは

申請する会社で、営業時間中は専ら専任技術者として働いている状態を指します。

この常勤性は、一般的には健康保険証で証明します。

健康保険証に申請会社の会社名が書いていれば、その会社での常勤性があると判断されるということです。

ただし、もし専任技術者が75歳以上の場合であれば、健康保険は後期高齢者医療制度に変わりますので、健康保険証では証明できなくなります。
 
その場合には『 住民税の特別徴収 』という手続きが必要です。

住民税の特別徴収とは、簡単に言うと、給料から住民税を天引きする制度です。

専任技術者が住民票登録をしている市区町村から会社に、
 
「昨年の所得を元に、毎月この金額を(住民税として)給料から天引きして本人の代わりに会社が納付して下さい」

と通知書が届きます。
 
この通知書が、申請会社で常勤性があることの証明に使うことができます

なぜかというと、一般的に、主たる給与をもらう会社=「特別徴収義務者」だからです。

申請会社で主たる給与を受けていることが客観的に証明できるということですね。

表にまとめると、以下のようになります。
 

◆注意点◆

常勤性を証明するにあたって、専任技術者に支払う給与額には条件が課せられています

その条件とは、申請会社がある都道府県の最低賃金額 × 120~160を超す給与額であることです。

なぜこのような計算方法になるのか見てみましょう。

下の図にあるように、社会保険に加入条件しているということで常勤性を認めていることから、専任技術者は週に30~40時間働いているということが求められています。

1ヶ月に換算すると、120~160時間働いているということですね。

 
1時間あたりの最低賃金は都道府県ごとに定められていますので、

常勤性を証明するには申請会社がある都道府県の最低賃金額 × 120~160を超す給与額を支払うということが必要になります。

 
◆例)東京都の場合

東京都の最低賃金額は1,013円なので、1,013円 × 120~160 < 給与額となっている必要があります。

専任技術者が取締役であれば最低賃金法の対象外なのでそれほど厳しくは言われませんが、労働者の場合、給与額が最低賃金額を下回っていれば常勤性を認めないといった可能性が出てきます。

 
なお建設業法上、労働者の具体的な賃金額が分かる書類としてはこれらが挙げられます。
 
・ 社会保険の標準報酬決定通知書
 
・ 住民税の特別徴収税額決定通知書 など

常勤性と最低賃金の関係につき、問題がないか確認しましょう。

②取得したい業種に対応する技術的能力がある

専任技術者になれる者は、取得する業種の一定以上の知識や経験を有する者でないといけません。
 

専任技術者の技術的能力の証明方法
次の3つのうち、いずれかの条件を満たすことで認められます。
 
❶ 有資格者
 
❷ 実務経験10年以上
 
❸ 指定学科卒業 + 一定以上の実務経験

 
それぞれ確認しましょう。

②-❶ 有資格者

専任技術者は、業種により、それぞれ認められる資格・検定があります。
 
それは、どのようにして調べられるのでしょうか。
 
基本的には、許可行政庁の手引きで調べれば問題ないでしょう。

今回は東京都の手引きで確認します。
 
例えば一般の電気通信工事業の専任技術者になれる資格・検定を探してみましょう。

手引きの中の技術者の資格に関するページは、このような一覧になっています。
 

建設業の業種は全部で29種類あり、それぞれ一文字に省略され表記されています。電気通信工事業は“通”と表記します。
 
手引きでは、一番右の欄が「建設業の種類」となっています。
 

次に、下の図を見ながら資格・検定名を確認していきます。
 
まずは“通”がどこにあるか探してみましょう。
 
❶に“通”という文字が確認出来ますね。 この“通”の行を横にスライドしていきます。
 
❷に◎が確認出来ました。この列の上に目を移しましょう。
 
❸に一級電気通信工事施工管理技士と書かれています。資格・検定名が確認できました。


 
❶~❸の手順を再度チェックしてみましょう。 

この手順で同様に他の〇や◎も確認したところ、電気通信工事業の欄に以下の資格が確認できました。

● 一級電気通信工事施工管理技士 
 
● 二級電気通信工事施工管理技士
 
● 電気通信主任技術者(資格交付後、実務経験5年以上) 
 
● 電気電子 総合技術監理(電気電子)

 
つまり、電気通信工事業の許可を取りたい事業者はこれらの資格を有している者が常勤・専属でいれば専任技術者の要件は満たせていると言えるわけです。

ちなみに、東京都の手引きにある〇と◎の違いは「一般」と「特定」です。

専任技術者の資格には、

・ 一般のみ認められる資格 ⇒ 〇 
 
・「一般」「特定」の両方に認められる資格 ⇒ ◎

があります。

このように二通りある理由は、特定の方が一般よりも上位資格に該当し、取得が難しいとされているからです。
 
(※「一般」「特定」の表記は許可行政庁の手引きによって変わってくるので、考え方だけわかれば大丈夫です。)

◆注意点◆

資格証があれば実務経験が必要ないことがほとんどですが、中には一部、資格取得 + 実務経験という場合もあるので、ご確認ください。

例)電気通信主任技術者 ⇒ 資格取得後、実務経験5年以上が必要

②-❷ 実務経験10年以上

許可を取得したい業種の実務経験が10年以上あれば専任技術者の要件を満たせます。

実務経験10年以上を証明するには
(1)申請業種の10年以上の実務経験があることを書面で証明する必要がある
 
(2)経験期間は常勤性の証明が必要

 
それぞれ確認しましょう。

②-❷-(1)申請業種の10年以上の実務経験があることを書面で証明する必要がある

申請業種の10年以上の実務経験を証明するためには、工事の請求書や契約書を10年分以上用意する必要があります。

また、当然ですが、準備した書類は許可を取得したい業種に該当するものでないといけません。
 
電気通信工事業を取りたければ、過去に請けた電気通信工事業の請求書や契約書を準備する必要があるということです。

もしこれらの証明書類が自社で準備できるのであれば、問題ありません。保管がしっかりされているのであれば、準備は容易ですよね。
 
しかし自社で準備することができず、以前働いていた会社の書類を使って証明するのであれば大変です。

なぜなら、以前働いていた会社から証明書類を借りなくてはいけないからです。
 
許可行政庁によっては、原本の提示が求められます。

原本とは、コピーではなく、当時作成した書類そのものを指します。

以前働いていた会社に「10年前に作った請負契約書等を貸してください・・・」と依頼する必要があります。これが大変なんですよね。
 
実務経験は一般的には次のうちいずれかの書類で証明します。

準備すべき証明書類

申請業種に係る10年分以上の

● 工事の請求書 + 入金確認が出来る通帳
 
● 工事の注文書 + 請書
 
● 工事の契約書

 
10年分の実務経験を証明すると言っても、どれくらいの資料を集めればよいのか、その必要な量は許可行政庁によって基準が異なるので注意が必要です。

②-❷-(2)経験期間は常勤性の証明が必要

常勤性の証明が必要とは、すなわち、実務経験10年間は専ら建設業に従事していたということが求められているということです。

例えば、同じ10年間でも、アルバイトで週に1回だけ手伝っていたのと、週5日出勤して働いていたのであれば、積んだ経験に大きな差があると言えます。

この「専ら申請業種に関わる工事を経験していた」ということを、常勤性で証明するということです。

では、どのような方法で常勤性を証明するのでしょうか。

一般的には、実務経験の10年間は社会保険に加入していたか、役員報酬や給料をしっかりもらっていたかで確認します。

● 社会保険の加入期間
 
● 役員報酬や給料の書類(決算書など)
 
などで証明することができます。
 

◆注意点◆

ここも許可行政庁によって常勤性を認める基準や必要書類が異なるのでご確認ください。

 

◆注意点◆ 複数業種の実務経験について

 
10年の間に複数業種の工事を請けていた場合でも、1つの業種しかその10年は認められません。
 
実務経験期間は業種の重複が認められないということです。

そのため、10年の実務経験で2業種の専任技術者になる場合には、最低でも20年の実務経験が必要になります。

②-❸ 指定学科卒業 + 一定以上の実務経験

さきほど、実務経験のみで専任技術者になるためには10年間の実務経験が必要だと説明しました。
 
しかし、ある条件を満たせば、実務経験期間は短縮することが可能です。

そのある条件というのが、工業高校や、理系の大学などを卒業していることです。
 
具体的にどれくらいの実務経験の短縮が認められるのでしょうか。
 

実務経験期間を短縮する条件

 
大学卒業の指定学科を卒業していれば、実務経験は3年あれば十分だということですね。

なお、この実務経験についても常勤性の証明が必要とされています。
 
常勤性や必要書類は先ほど申し上げたものと同じなので省略します。

次に指定学科につき確認しましょう。
 
工業高校や理系の大学といっても、学部学科によって学ぶ内容はまったく異なりますよね。
 
そこで、建設業法上、業種によって実務経験の短縮が認められる学科がそれぞれ決まっています。
 
この、業種に対応する学科のことを「指定学科 」と言います。
 
では指定学科はどのようにして調べるのでしょうか?
 
これは、国土交通省が分かりやすくまとめているのでこちらで確認しましょう。
⇒ 国土交通省|指定学科一覧

この一覧で指定学科を調べることができます。

例えば、電気通信工事業の指定学科は何でしょうか。
 

 
電気工学または電気通信工学に関する学科ですね。
 
つまり、下の図のように高校で電気工学に関する学科を卒業している者であれば5年間の実務経験、電気工学系の学科を卒業する大学卒業者は3年の実務経験があれば専任技術者になれるということです。

具体的な学科名に関しては手引きで確認できます。

ここから具体的な指定学科名を確認することができます。電気工学の場合はこれらが指定学科となります。
 

手引きに書いてある学科名とドンピシャであれば問題ないことが多いですが、似たような学科名であれば事前に審査窓口で確認することをお勧めいたします。

まとめ

今回は専任技術者の概要についてお話しいたしました。

簡単におさらいしましょう。

専任技術者の技術的能力の証明方法は3つあります。

専任技術者の技術的能力の証明方法

❶ 有資格者

❷ 実務経験10年以上

❸ 指定学科卒業 + 一定以上の実務経験

 
一番、証明方法が簡単なものは、言うまでもなく❶ 有資格者です。資格証を見せればいいからです。
 
実務経験が絡んでくるとどうしても大変になります。
 
実務経験の証明が大変な理由としては、
 
・昔の書類(当時の契約書・請求書など)をしっかり保存しているかどうかということ
 
・許可行政庁が審査をするにあたり、取得したい業種の経験として認めるかどうかということ
 
が挙げられます。

後者については、業種の判断方法で意見が分かれたり請負工事だと判断できない場合、取得したい業種の経験として認められない可能性があるということです。

こうなると、この記事で申し上げた書類以外にも、書類を準備しなくてはいけません。

ここら辺は建設業者さんによって問題点が変わってくるので、もし自社で申請して実務経験で問題点を指摘されたら、建設業を専門に扱う行政書士を頼ってみることをお勧めいたします。

また許可行政庁にもよりますが、過去に建設業の許可会社で厚生年金に加入していた期間は請求書等の証明書類がなくても実務経験として認めるといった取り扱いがあります。

これは全国で共通しているわけではありませんので、頭の片隅にでも置いといてください。
 
許可行政庁によって証明方法が異なりますので、私がこの記事でお伝えした書類を準備できなくても可能性がゼロではないので、困っている方は専門家に相談してみて下さい。