この記事の要約
行政手続をするにあたり紙ではなく電子申請が可能になりました。紙だと役所の窓口まで開庁時間内に持っていく必要があったりするので行政書士や社労士に依頼していた依頼人もいると思います。今後は自分で申請しようかと考えている方向けに、電子申請出来る業務を行政書士や社労士に依頼するメリット、デメリットをまとめました。
 
昨今、行政手続に電子申請が導入されてきました。
電子申請が導入されたことで、全国の行政書士、社労士事務所に依頼をすることが容易になったと言えます。
 
この記事を書いている令和5年時点では電子より紙による申請が主流ですが、時が経てば多くの行政手続も電子申請が多数派になっていくでしょう。
 
行政書士、社労士は役所に提出する書類の作成及び申請代行を生業としています。もちろんこれは紙から電子に移行していっても行政書士の職務は変わりません。
 
では依頼人から見て、紙から電子申請に変わることによる行政書士との付き合い方は変わらないのでしょうか。
 
今までは忙しくて書類作成代行は行政書士に頼んでいただけど、電子申請なら夜遅い時間でも自分で出来ると考える方もいらっしゃると思います。
 
そんな方に向けて私の個人的な意見になりますが、お客様である依頼人から見て電子申請によるメリット、デメリットは何なのかを考えてみたいと思います。
 

電子申請 4つのメリット

私なりに電子申請のメリットをまとめてみました。

◆依頼人から見た電子申請の4つのメリット◆
①窓口に行く必要がない
 
②全国の行政書士に依頼が出来る
 
③原本性を証明しやすくなる
 
④公的書類の取得が省略できる
 
 
それぞれ確認しましょう。

①窓口に行く必要がない

業務の種類にもよりますが、申請書の提出時は基本的には窓口まで持っていくことが原則です。
 
コロナ禍により自治体、手続内容によっては窓口だけでなく郵送も解禁されるようになり、引き続き郵送対応を続けているところもあります。
 
しかし電子申請が導入されたことにより、申請書の提出で窓口に行く必要はなくなりました。(一部除く)これにより時間、交通費が節約出来ることはもちろん、役所の開庁時間外でも申請書が受付られることも期待できます。
 
例えば有効期限が3月31日の手続であれば窓口だと3月31日の17時が締め切りでしたが、23時59分まで締切が伸びることも考えられます。
 
とはいえ有効期限日当日に手続をすること自体はあまりよろしくないので紙、電子共に関わらずなるべく避けましょう。
 

②全国の行政書士、社労士に依頼が出来る

今までは役所の窓口で申請する必要があったため会社の近くの行政書士に依頼をしていた事業者さんも、電子申請であれば全国の行政書士から選べるようになります。
 
もし近場の行政書士が依頼をしたい業務にあまり詳しくない場合や相性的に疑問があった場合でも我慢して依頼をしていたことから解放されるということです。
 

③原本性を証明しやすくなる

役所に申請書を提出すると控えに受付印が押されます。
この受付印を持って、この申請書は役所に受理されたことの信ぴょう性を担保するといった取扱です。
 
行政手続の中には過去の実績を用いて手続を進めることがありますが、
その際に大事なことがこの受付印だったりします。
 
この過去の申請書の内容が真実であるなら実績として認める、ということです。
 
申請書の控えが紙だと紛失するリスクはどうしても否定出来ません。受付印ページのコピー、スキャンだけでもあればいいですが、そもそも原本でないと認められない場合もあります。
 
しかしこれが電子申請になると、申請書を提出した際の役所にそれが届いたことが確認出来るメール等を印刷したページが受付印になります
 
例えば法人税の確定申告書も電子申請するとメール詳細というページが受付を証明するページです。
 
メールの保管や電子申請システム内の履歴等、証明方法は複数考えられますので、これは電子申請の明確なメリットと言えるでしょう。
 

④公的書類の取得が省略できる

 
行政手続きには申請書だけでなく、納税証明書等の添付書類があります。
 
紙で申請する場合には税務署等に手数料を支払い原本を取得して添付が必要です。
 
しかし電子申請になると手続によっては法人番号やマイナンバーと紐付けられる情報は省略可能という取扱が期待出来ます。
 
現に社会保険の手続きもマイナンバーを申請書に記載するようになってから、手続の省略、簡略化が進みました。
 
また建設業許可申請でも法人事業税の納税証明書は電子申請の場合は省略可能です。
 
以上が私が考える電子申請のメリットです。
 
 

電子申請のデメリット

 
では逆に電子申請のデメリットはなんでしょうか。
 
これも私の意見をまとめました。
 
◆依頼人から見た電子申請の4つのデメリット◆
① Gbizの取得手続
 
②補正の連絡は電話で来る可能性が高い
 
③不備があるとそもそも申請の取下げを求められる
 
④とりあえず申請してしまうことの怖さ
 
 
 
それぞれ確認しましょう。
 

①Gbizアカウントの取得手続

 
Gbizアカウントとは電子証明書のことです。
 
行政手続の種類にもよりますが、電子申請する場合には電子証明書の取得が必要になります。電子上の申請人が誰か特定できないといけないのは当然ですよね。
 
ただ行政手続の中には依頼人である事業主が電子証明書を取得しないといけません
 
例えば社労士業務であれば、社労士自身が電子証明書を取得すれば事業主は委任状に記名をすれば良く電子証明書の取得は不要です。
 
そういう意味ではGbizの発行手続が難しくないとは言え、デメリットと言えるでしょう。

②補正の連絡は電話で来る可能性が高い

 
電子申請は窓口に行く必要はないと書きました。
しかし、その申請が全く何のミスもなく進むことは滅多にないと経験則上感じます。
 
その際、補正と言って申請書の内容の確認、修正を求める連絡がきます。
 
この連絡手段が急であればあるほど電話でくるのではないかと。(逆にシステムに則っていないものは自動返信で取り下げられる。例 姓と名の間の空白が半角だったためエラー等)
 
電子申請した事業主にとっては、窓口に行く時間がない(もったいない、本業で忙しい)のに役所の開庁時間で一方的に電話が来て補正を伝えられるのであれば、本末転倒でデメリットと言えます。
 
しかも、目の前に申請書の控えがあることが補正では求められることが多いので、常に机の前にいることが難しい人はさらに困るでしょう。
 
補正の連絡がメールと全国統一されればこのデメリットはないと言えます。
 

③不備が多いとそもそも申請の取下げを求められる

行政手続、特に申請は受理されることが難しいと個人的には思っています。
 
逆に言えば受理までさえ持っていけば、あとは許可が下りる待ちといった傾向の業務もありす。
 
申請書を初めて作成すると、どうしてもミスが多くなるのは普通のことです。
 
そうなるとミスが多いという理由で申請書を本格的に審査する前に、申請を取下げるように指示を受けることになるかもしれません。
 
初めて申請書を作成する場合には、受理されないことを覚悟で窓口まで出しにいく方がいいかもしれません。
 
なぜなら、窓口であれば申請書記載ミスがあっても、その場でボールペンで二重線を引いて訂正出来るからです。また記載ミスを訂正しつつ、中身をしっかり審査され受理されない理由があればそれもしっかりと説明して貰えます。
 
結果的にかかる時間は窓口の方が早いことがあることもデメリットの一つと言えるでしょう。
 

④とりあえず申請してしまうことの怖さ

 
私たち行政書士、社労士が申請代行する場合、今回の申請でこの資料は提出しても認められるか等、結構慎重に進めることが一般的です。
 
確信めいたものがない場合には、必要であれば事前に窓口まで相談に行って言質を取れるまでその資料をどうすべきか熟考します。
 
しかし電子申請で出来るとなると、窓口に行くこともないので、行政書士にも依頼せう相談なしで自分でとりあえず申請してしまおうと考える事業者もいるでしょう。
 
するとその書類を提出してしまったが故に審査がスムーズにいかなくなるといったことも生じてしまいます。
 
例えば行政書士であれば実務経験を証明するためにAとBという書類があった場合、Aを出すと解釈が振れる可能性があるから、Bを提出しようといった判断をします。
 
電子申請のメリットである提出しやすが、ここら辺の慎重さを鈍らせる可能性があることはデメリットと考えられるのではないでしょうか。
 
 

申請と届出は違う

 
今回、電子申請のメリット、デメリットというテーマで記事を書きましたが、結局は申請と届出は違うことを認識することが大事かと思います。
 
簡単にいうと、申請とは行政に何かしらの処分を求める行政手続です。
 
それに対して、届出とは事後報告的な意味合いになります。
 
つまり申請と届出を比べると、どうしても申請の方が行政も慎重になるのはご理解いただけるかと思います。
 
もし自分で電子申請をする場合には、申請系(特に新規)は行政書士に依頼して、届出は自分で対応するという方がいいかもしれません。
 

まとめ

 
自分で行政手続を電子申請することを検討されている方向けに、電子申請のメリットデメリットにつきまとめました。
 
確かに窓口まで行かないことに伴うメリットはたくさんあります。しかし、だからといって行政手続の許可基準や審査そのものが簡単になるわけではありません。
 
特に今までやったことがないことはミスが多くて当然です。そのミスが原因で許可が下りない、申請が進まないとなったら元も子もありません。
 
少なくとも申請は本当に自分で出来るのか、電子より窓口で相談しつつ進める方が良いのでは?と慎重に検討してご判断下さい。