とび工事

この記事の結論と要約
工事業種の一種であるとび・土工・コンクリート工事業の専任技術者要件をまとめています。以下とび工事業と書きます。び工事業の許可を取得する場合は専任技術者要件である文中の資格、該当する請負工事の一定以上の実務経験、卒業学科などの条件を満たす方が必要です。またとび工事は非常に多くの工事が該当し、他業種と分類が難しい工事もございます。そちらも代表的なものをまとめましたので、ご確認ください。

建設業許可の工事の種類は全部で29種類あります。

それぞれの業種で専任技術者になるための細かい条件があり、各々必要な資格や経験等が異なります。

1番注意することとして、取得予定の業種と実際に施工している工事が建設業法上、とび工事業と合致しているかという点です。

自社が施工している工事がとび工事業に該当するか不明な場合はこのページに判断する方法が記載されていますのでご確認ください。

もし合致していなければ、何かしら他の業種の建設業許可を取得しても500万円以上のとび工事を請け負うことは出来ません。また実務経験で専任技術者の要件を満たす場合でも適切な実務経験として認められません。

この記事を読むことでとび・土工工事業の専任技術者になるための要件、実務経験としてカウント出来る工事、資格、学科を知ることが出来ます

とび・土工・コンクリート工事業の専任技術者になるための要件の概要

とび工事業の建設業許可を取得するためには営業所ごとに常勤のとび工事業の専任技術者を配置することが必要です。

専任技術者とは営業所に常駐して技術的な観点から発注者と請負工事に関する契約を締結する際の責任者です。

業種により専任技術者に課せられる資格や経験等は異なります。

専任技術者について一般的な概要はこちらからご覧ください。

建設業許可の専任技術者になるための要件は?

建設業の許可要件である営業所における技術者の専任性とは

建設業許可の主任技術者とは?専任技術者との違いや役割

専任技術者になるためには各業種に対応した技術的な要件が求められます。

技術的な要件は次の①〜④のいずれかに該当することです。

■専任技術者の技術的要件■


①国家資格・検定を持っている

②許可を取得する同業種の請負工事を常勤として10年以上働いた実務経験

③指定学科卒業後に一定以上の実務経験

④大臣同等と認められるもの

※ ②と③は一般建設業の専任技術者になるための要件。

※ 特定建設業の場合、別途条件あり⇒特定の許可取る事業所必見!7つの指定建設業の注意点

とび工事業の技術的要件を確認しましょう。

とび・土工・コンクリート工事業の専任技術者の資格

とび工事業の許可を取得する場合といっても、一般か特定かいずれかの許可を取得するかで専任技術者の要件は異なります。

一般と特定の違いについてはこちらの『一般建設業と特定建設業の許可の違い。どっちをとればいい?』をご覧ください。

貴社が元請けとして直接工事を請け負うことがなければ一般建設業の許可が必要とお考え下さい。

とび土工コンクリート工事業の一般建設業の場合

一般建設業の資格要件は次の通りです。

◆とび土工の一般建設業の資格


・2級建設機械施工技士

・2級土木施工管理技士(種別:土木)

・2級土木施工管理技士(種別:薬液注入)

・2級建築施工管理技士(種別:躯体)

・技能検定の職種「型枠施工」の合格者(※)

・技能検定の職種「とび・土工・コンクリート圧送施工」の合格者(※)

・技能検定の職種「ウェルポイント施工」の合格者(※)

・地すべり防止工事試験に合格して国土交通大臣の登録を受けたもの+実務経験1年以上

*技能検定の等級区分が2級の者は、合格後3年以上の実務経験が必要。

とび土工コンクリート工事業の特定建設業の場合

特定建設業の資格要件は次の通りです。

◆とび土工の特定建設業の資格


・1級建設機械施工技士

・1級土木施工管理技士

・1級建築施工管理技士

・技術士法の建設部門「鋼構造及びコンクリート」を選択科目で合格

・技術士法の総合技術管理部門「建設(鋼構造及びコンクリート)」を選択科目で合格

・技術士法の農業部門「農業土木」を選択科目で合格

・技術士法の総合技術管理部門「機械(流体工学又は熱工学)」を選択科目で合格

・技術士法の水産部門「水産土木」を選択科目で合格

・技術士法の総合技術管理部門「水産(水産土木)」を選択科目で合格

・技術士法の森林部門「森林土木」を選択科目で合格

・技術士法の総合技術管理部門「森林(森林土木)」を選択科目で合格

※ 特定建設業の資格要件を満たせれば、一般建設業の技術者になれる。

 

とび・土工・コンクリート工事業の専任技術者・実務経験

取得したい業種の実務経験が10年以上あれば専任技術者として認められます。

建設業法上、とび・土工・コンクリート工事業に該当する工事はどんなものがあるか確認しましょう。

とび・土工・コンクリート工事業に該当する工事

とび工事は大きく分けて5種類に分けられます。

◆とび土工コンクリート工事に該当する5種類の工事


①足場の組み立て、機械器具・建設資材等の重量物の運搬配置、鉄骨などの組み立て、工作物の解体などを行う工事

②くいうち、くい抜き及び場所うち食いを行う工事

③土砂などの掘削、盛り上げ、締固め等を行う工事

④コンクリートにより工作物を築造する工事

⑤その他基礎的ないしは準備的工事

これらに該当する代表的な工事名を確認しましょう。

該当する工事の例示

上記の①~④に該当する工事の例示を書きます。

①に該当する工事名の例

・とび工事

・ひき工事

・足場など仮設工事

・重量物の揚重運搬工事

・鉄骨組み立て工事

・コンクリートブロック据え付け工事

・工作物解体工事

 

②に該当する工事名の例

・くい工事

・くい抜き工事

・場所打ちぐい工事

 

③に該当する工事名の例

・土工事・掘削工事

・値切り工事

・発破工事

・盛土工事

 

④に該当する工事名の例

・コンクリート工事

・コンクリート打設工事

・コンクリート圧送工事

・プレストレストコンクリート工事

 

⑤に該当する工事

・泥沼処理工事

・コア工事

・地すべり防止工事

・地盤改良工事

・ボーリングクラウト工事

・土留め工事

・仮締切り工事

・吹付け工事

・法面保護工事

・道路付属物設置工事

・屋外広告物設置工事

・捨石工事

・外堀工事

・はつり工事

・切断穿孔工事(せつだんせんこうこうじ)

・アンカー工事

・あと施工アンカー工事

・潜水工事

工事名は以上です。

請求書や契約書に、この工事名が記載されていれば原則、実務経験として計上出来ます。

他の工事業種と混同しやすい工事

建設業許可は工事ごとに適切な業種を取得する必要があります。

とびは建築系、土木系もカバーしているため他の工事業種と範囲が重なりがちです。

とび工事業だと思っていたが実際は違った、逆もまた然りといった代表的な工事を3つまとめました。業種判断の参考にしてください。

①看板設置工事

とび工事の例示に屋外広告物設置工事とあります。

また鋼構造物工事業にも屋外広告工事と記載があります。これらの違いはなんでしょうか。

これは鋼構造物が看板を現場で製作し設置するのに対し、とび工事業は既に出来上がった広告物を設置する工事が該当します。

つまり鋼構造物は広告物を現場で製作し設置、据え付けまでを請け負っている。

とび工事業は看板を取り付けるだけ、撤去するだけ、といった意味合いだと言えます。

②機械の運搬工事

機械が関係する工事と言えば機械器具設置工事業と想像する人が多いでしょう。

しかし機械が関係する工事で、実は機械器具設置工事業でなく、とび土工コンクリート工事業が必要だっというパターンは多く見受けられます。

大きな見分け方としては、その機械は既に出来上がっている状態で運搬する工事なのか現場で部品を組み立てて、据え付ける工事なのかで判断出来ます。

前者がとび工事業です。

工事の例示でいう、重量物のクレーン等による運搬配置やアンカー工事がそれにあたります。

大きな機械を現場まで運搬しアンカー打ちをするものはとび工事業の可能性が高いです。

機械器具設置工事業は部品で現場まで持っていきます。完成させていません。

機械器具設置工事業の例にエレベーター設置工事があります。

エレベーターを完成させたまま現場まで持っていくことは出来ませんよね。その場で組立て、建物に据え付けます。

とは言っても機械器具設置設置工事は他の専門工事に該当しない現場で部品をくみ立てる工事という分類です。とび工事業以外にも精査する必要がある点につきご注意下さい。

大事なことは機械=機械器具設置工事業ではなく、とび土工コンクリート工事業かもしれないということです。

③鉄骨工事

とび土工コンクリート工事業には鉄骨組立工事があります。

これは鋼構造物工事業における「鉄骨工事」とどのような違いがあるのでしょうか。

それは既に加工された鉄骨を現場で組立てることのみを請け負うのが『とび・土工・コンクリート工事』における「鉄骨組立工事」になります。

それに対し鉄骨の製作、加工から組立てまでを一貫して請け負うのが『鋼構造物工事』です。

以上、とびと他業種で混同しやすい代表的な工事を上げました。

実務経験で一般建設業の専任技術者になる場合、とびの実務経験が10年以上必要です。

工事名や工事内容が確認出来る発注書や契約書などで期間分の経験を証明出来るか確認しましょう。

指定学科卒業後に一定以上の実務経験で専任技術者になる

実務経験は原則10年以上ですが卒業した学校学科により短縮する場合があります。

特定の学科を卒業すれば実務経験が10年未満でも専任技術者の要件を満たせます。

具体的な実務経験年数は次の通りです

 

・大学または高専の指定学科⇒卒業後3年以上の実務経験

・高等学校の指定学科    ⇒卒業後5年以上の実務経験

 

自社に該当学科を卒業した労働者がいないか確認しましょう。

とび工事業で認められる指定学科は土木工学または建築学に関する学科が対象になります。

◆とび土工工事に該当する指定学科


・開発科

・海洋科

・環境科

・建設科(電気・電子科)

・建築計画科

・森林土木科

・造園科

・地質科

・農業開発科

・住居科

などが挙げられます。

これはほんの一例で類似した名前の学科であれば該当する可能性もあります。上記の言葉が含まれる学科であれば指定学科に該当する可能性が高いです。

実務経験で特定建設業の専任技術者要件を満たすには

実務経験のみでも特定建設業の専任技術者になることができます。

特定建設業の専任技術者要件を実務経験のみで満たす場合には、更に次の3つの条件を満たす請負工事の指導監督的実務経験が2年以上必要です

◆実務経験で特定建設業の専任技術者になるための指導監督的実務経験の条件


①請負金額が4500万円以上

②元請けとして請け負った工事

③指導監督的な立場で指揮をとる

※ 指導監督的な経験・・建設工事の設計、施工の全般にわたって工事現場主任や現場監督者のような立場で技術面を総合的に指導した経験

つまり、実務経験を用いて特定建設業の専任技術者になるための要件は次の通りです。

◆特定の許可を実務経験で取得する場合の必要要件


一般建設業の専任技術者の要件を満たす+3つの条件を満たした2年以上の指導監督的実務経験

一般の専任技術者に実務経験のみでなる場合には、10年以上の実務経験が必要です。

10年以上実務経験をつんだ後に、上の①~③の条件を満たす指導監督的な経験を2年以上積めば特定建設業の専任技術者として認められます。

実務経験の10年の中に指導監督的実務経験が2年ある場合でも認められます。
(実務経験が8年 指導監督的実務経験が2年 →   特定の専任義術者要件を満たす)

指導監督的な請負工事経験は請負契約書で証明します。

必ず請負契約書を締結し保存しておきましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

とび土工コンクリート工事業は範囲が膨大で他業種の工事と範囲が重なっていることが特徴です。

自社が施工したい工事は他業種の工事に該当しないかをしっかり確認した上で申請しましょう。

特に自社が機械器具設置工事業が必要と考えている方は実はとび土工コンクリート工事業が必要だったという事業所さんは多くいらっしゃるように感じます。

業種判断で困ったら許可行政庁に問い合せてご確認ください。