この記事の要約
建設業許可の要件である常勤の役員等について、ほとんどの許可業者が施行規則イの(1)に該当する取締役5年以上の経験で許可を取得していると思います。しかし常勤の役員として認められる方法は全部で6つあることはご存知でしょうか。この記事ではその6つを体系的に説明しました。許可が取れない、維持できないとお困りの事業者は是非読み進めて見てください。
 
建設業許可を取るためには常勤の役員等と言って、建設業に関わる経営業務の管理を適正に行うに足りる者が必要です。
 
経管(けーかん)なんて言われていますね。取締役経験が5年以上あるものがいないと許可は取れない言われたことがあるかたもいらっしゃると思います。
 
その常勤役員等は建設業法の第7条に規定されてます。
 
第七条 国土交通大臣又は都道府県知事は、許可を受けようとする者が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない。
一 建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有するものとして国土交通省令で定める基準に適合する者であること
 
 
この常勤の役員等に求められる能力の具体的な基準は建設業法施行規則で定められています。
 
現在の基準のままだと許可を維持することが難しいと判断されると、法改正され条件が緩和されてきた経緯があります。
 
最近でいうと令和2年10月に次のように改正されました。
 
 
すごく簡単に言うと旧は常勤の役員一人でしか認められていなかったのが、新しく管理体制という形で複数人体制でも許可要件として認められるようになったということです。
 
そう聞くと、現在経管が見つからない、常勤の役員では許可を維持することが難しい事業者からすれば救済措置のように感じるかもしれません。
 
私個人としては半分そうです、半分はそうではないという意見です。
 
なぜそう思うのか。
 
それは5年以上の経験以外で常勤の取締役として認められるためには、各制度をしっかり理解して構築する必要があるからです。結果的に要件を満たせていたなんてことはあまり想定されていないように思います。
 
そこで今回は常勤の役員等が見つからない、後継者が見つからず許可の維持が難しいとお考えの事業者向けに常勤の役員等として認められる方法を徹底解説したいと思います。
 

建設業法施行規則を確認する

冒頭で常勤の役員等の具体的な基準は建設業法施行規則で定められていると書きました。
 
そこで建設業法施行規則を確認しましょう。
 
常勤役員の具体的な基準は施行規則7条に次のように書かれています、
 
イ 常勤役員等のうち一人が次のいずれかに該当する者であること。
(1) 建設業に関し五年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者
(2) 建設業に関し五年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る。)として経営業務を管理した経験を有する者
(3) 建設業に関し六年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験を有する者
ロ 常勤役員等のうち一人が次のいずれかに該当する者であつて、かつ、財務管理の業務経験(許可を受けている建設業者にあつては当該建設業者、許可を受けようとする建設業を営む者にあつては当該建設業を営む者における五年以上の建設業の業務経験に限る。以下このロにおいて同じ。)を有する者、労務管理の業務経験を有する者及び業務運営の業務経験を有する者を当該常勤役員等を直接に補佐する者としてそれぞれ置くものであること。
(1) 建設業に関し、二年以上役員等としての経験を有し、かつ、五年以上役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位にある者(財務管理、労務管理又は業務運営の業務を担当するものに限る。)としての経験を有する者
(2) 五年以上役員等としての経験を有し、かつ、建設業に関し、二年以上役員等としての経験を有する者
ハ 国土交通大臣がイ又はロに掲げるものと同等以上の経営体制を有すると認定したもの。

 
具体的には一号イの(1)~一号ハの6つ定められています。
 
ただ、この施行規則そのままだと何だかわかりにくいですよね、
 
そこで私なりに簡単な表現に書き換えたいと思います。
 
◆建設業法施行規則7条を上田が書き換えた◆
イ 社会保険に加入している取締役等が過去に次の建設業の経験を有していること
 
 (1) 建設業の会社で5年以上取締役を務めていた or  個人事業主で建設業を5年以上やっていた
 
 (2) 取締役会設置会社で執行役員として建設業部門の責任者として5年以上務めていた
 
 (3) 建設業の会社で部長等の地位で取締役をの直接の管理下のもと補佐業務を6年以上経験した
 
ロ 社会保険に加入している取締役のうち一人が次の(1)か(2)に該当する者、かつ、建設業の財務管理、労務管理、運営業務の経験を5年以上有する会社員を建設業部門の部長にして取締役を直接補佐する体制にすること
 
 (1) 建設業の会社で最低、2年以上取締役(個人事業主含む、以下 等)を務めていた経験& 建設業の会社で部長として財務管理、労務管理又は業務運営の業務を担当した経験のこれらを合算して5年以上有する者
 
 (2) 建設業の会社で最低、2年以上取締役(個人事業主含む、以下 等)を務めていた経験 &
業種に関わらず取締役としての経験のこれらを合算して5年以上有する者
 
ハ 国土交通大臣が外国で積んだ経験を建設業法と同等の能力を有すると認めた者

 

 
 
それぞれ個別に確認しましょう。
 
※基本的には株式会社、取締役が申請対象となることが多いので、この記事では役員=取締役と表記しております。
※役員には監査役、会計参与は含みません。
 
 

イの(1): 建設業の会社で5年以上取締役を務めていた or  個人事業主で建設業を5年以上やっていた

 
これが一番オーソドックスな方法です。
 
この5年以上建設業取締役経験を有する者が5年以上いないときに建設業の許可が取れないと悩む事業者さんが多いです。
 
また公開会社ですと取締役の任期は2年になるので、後継者がいないまま退任してしまうリスクがあり、このまま許可を維持することが出来るかどうか頭を悩ませている事業者も多い印象があります。
 
ちなみに建設業の会社の取締役の経験以外にも令3条の使用人や個人事業主の元で支配人登記されていた経験も活用可能です。
もし許可会社で支店長をしていた方がいれば積極的に確認してみて下さい
 
証明方法や令3条の使用人等に関してはこちらの記事にてご確認ください。
 
 
 
 
 
 
 
 

イの(2): 取締役会設置会社で執行役員として建設業部門の責任者として5年以上務めていた

 
これは執行役員としての経験を認めるというものです。
 
原則、執行役員としての経験は認められません。しかしある条件付きで執行役員としての経験を認められています。
 
それが取締役会設置会社で執行権限の委任を受けた執行役員です。
 
メリット・デメリット共通で挙げられるものとしては、執行役員は取締役ではないことがあります。
 
公開会社は取締役任期が2年です。そこで後継者がいないまま退任してしまうことを懸念されている事業者がいると書きました。
 
しかし執行役員は役員ではなく労働者なので、法律の定めによる任期はありません。
 
つまり労働契約で雇用期間の定めがない場合には定年まで在籍出来ます。
 
建設業法上求められる執行役員制度を会社が導入すれば取締役の経験がなくても許可の維持には問題なくなるということです。もし大臣許可であればれい
令3条の使用人を5年務めさせてから執行役員に任命すれば労働者の地位ですべて解決可能です。
 
ではデメリットはなんでしょうか。
 
それは社内の制度だということです。公的な書類で証明するものではないので、適切に制度を導入、運用しないと経験が認められません。あわせて書類を保管することも重要です。
 
また労働者ながら欠格要件の対象者である許可を受けようとする者に該当するので選任時にはご注意ください。
 
建設業法と執行役員制度についてはこちらからご確認ください。
 
 

建設業許可の準ずる地位とは?執行役員制度の導入・証明方法

 

イの(3): 建設業の会社で部長等の地位で取締役をの直接の管理下のもと補佐業務を6年以上経験した

 
こちらは法人であれば建設業の会社で長年、部長を務めていた者が取締役になったようなイメージです。
 
許可申請時には取締役であることが必要です、求められる能力は労働者として取締役の直下で補佐した経験といった関係です。
 
この制度も執行役員制度と同様に、社内制度ですので適切な制度導入&運用が必要になります。
 
また補佐した経験も建設業の資金調達や技術者配置、下請業者との契約業務に従事した経験が求められています。一部だけ従事していたことも原則
認められないことが多いように経験則上感じます
 
法人に対して、個人事業主は個人事業主の奥さんや息子が対象となることが多いです。証明書類もそれほど煩雑ではなく、確定申告書など公的な書類でなので証明が容易なことがあります。
 
関連記事をまとめました。こちらの記事からご確認下さい。
 
 
 

(ロ):建設業の財務管理、労務管理、運営業務の経験を5年以上有する会社員を建設業部門の部長にして取締役を直接補佐する体制にすること

 
 
ロに関しては一旦画像で確認しましょう。
 
 
役員一人ではイの(1)~(3)の経験要件を満たせない役員(左側)を申請会社で働く従業員が支える形(右側)となり管理体制として要件を満たせるという関係です。
 
常勤役員を直接に補佐する者はロの(1)と(2)で共通です。画像で言えば(1)がA(2)がBですね。
 
注意点としては直接補佐者の各経験は申請会社の経験のみという点です。
 
他社で過去に、建設業の財務運営をしていたとしても計上出来ません。また経験当時の役職は平社員でも事務担当者でもなんでも大丈夫ですが、ロの管理体制で申請する場合には取締役直下の地位のものである必要があります。
 
取締役直下のイメージとして総務部長や、法務部長、運営部門の長です。
 
直接補佐する者の説明は以上です。
 
次の取締役の経験につき解説します。
 

ロの(1):建設業の会社で最低、2年以上取締役(個人事業主含む、以下 等)を務めていた経験& 建設業の会社で部長として財務管理、労務管理又は業務運営の業務を担当した経験のこれらを合算して5年以上有する者+適切な直接補佐者

 
取締役が最低でも建設業の取締役経験が2年以上必要です。それに加えて建設業の取締役 又は 
建設業の会社で部長等の地位で財務か労務か業務運営に従事ししていた経験を合算して5年以上あるものです。
 
例で確認しましょう。
 
・建設業の取締役2年+ 部長で財務運営   3年 OK
・建設業の取締役4年+ 部長で労務管理経験 2年 OK
 
※役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位にある者としての経験を通算で5年以上有することが必要です。
 

ロの(2):建設業の会社で最低、2年以上取締役(個人事業主含む、以下 等)を務めていた経験 &

業種に関わらず取締役としての経験のこれらを合算して5年以上有する者+適切な直接補佐者
 
これはロの(1)より簡単です。
業種関わらず取締役経験が5年以上あること、そのうち建設業の取締役経験が最低2年はあるものです。
 
これはイメージしやすいのではないでしょうか。
 
直接補佐する者を活用して許可を取得する事業者はこちらからご確認ください。
 
 
 

ハ:国土交通大臣が外国での経験、卒業学科を建設業法と同等の能力を有すると認めた者

 
こちらは主に申請人が外国での実績を活用する場合に活用します。
 
例えば、建設業を営む外国法人の代表者を務めていた場合などです。この経験は日本の経験と外国の経験を合算することも可能です。
 
例えば日本の取締役3年、外国の取締役等の経験が2年あればイの(1)同等の能力を有すると大臣が認めるといったことです。
 
詳しくはこちらの記事にてご確認ください。
 
 
 

用語確認

 
【直接補佐する者の経験】
 
○「財務管理の業務経験」
・建設工事を施工するにあたって必要な資金の調達や施工中の資金繰りの管理、下請業者への代金の
支払いなどに関する業務経験をいう。
○「労務管理の業務経験」
・社内や工事現場における勤怠の管理や社会保険関係の手続きに関する業務経験をいう。
○「業務運営の業務経験」
・会社の経営方針や運営方針の策定、実施に関する業務経験をいう
 
【役員とは】
 
➢ 業務を執行する社員・・・持分会社(合名会社、合資会社、合同会社)の業務を執行する社員
➢ 取締役・・・・・・・・・株式会社の取締役
➢ 執行役・・・・・・・・・指名委員会等設置会社の執行役
 
 

まとめ

 
常勤の役員につき簡単にまとめました。
 
東京都の手引では次のように説明されています。ご理解と一致されていますでしょうか。
 
 
常勤の役員等の許可要件の満たし方は色々とありますが、基本的には5年以上経験の有する者(イの(1))で満たすことが一番証明も簡単かつ解釈に相違がないので望ましいと個人的には思っています。
 
とはいえ、法改正で要件対処者が拡大していった経緯を見ると、5年以上経験の経営経験を持つ常勤の取締役等が不足している現状を想像することは難しくありません。
 
常勤の役員がいない、対処は他社から出向で受け入れる等他にも方法はあります。
 
 
 
 
お困りの事業者はまずは専門家にご相談されてみてください。
 
お疲れ様でした。