この記事はYouTubeで配信している「建設業許可を初めて取得する方向け 要件につき解説してみた」の内容を文字起こししたものです。
建設業許可を取得するために満たさなければならない要件についてまとめましたのでお役立て下さい。
これから建設業許可を取得する事業者さんや、建設業の依頼を初めて受けて許可の要件を調べ出した行政書士の先生方向けの記事です。
Contents
はじめに
①建設業許可の要件の大局を掴むことを最優先事項とする
そのため、細かい箇所はあえて省略しています。
執行役員や補佐人等の内容には触れませんのでご了承ください。
②取得すべき適切な許可の形態を選ぶには、前提知識が必要
以前配信した動画「建設業許可制度のイロハ教えます!」で許可制度の前提知識を得ることができます。
事前にこの動画をご覧いただき、ある程度理解された状態で許可要件を調べる方が効率的です。
まだご覧になっていない方は、こちらからまず見られることをお勧めいたします。
③初めて建設業許可を取得する方向けの記事
この記事で説明する建設業許可は、初めて建設業許可を取得する方のボリュームゾーンであろう一般建設業の知事許可を想定しています。
特定や大臣の話はしませんのでご了承ください。
「一般建設業の知事許可」と言われて何かわからなかった方は是非「建設業許可制度のイロハ教えます!」の動画をご視聴ください。
建設業許可を取得するために満たさなければならない要件
許可を受けている世の中の建設業者(大手ゼネコンから一人親方まで)は例外なく建設業許可条件を満たしているため許可を持っています。
その条件のことを法律用語では要件といいます。
建設業許可の要件は以下の7つです。
この7つは、理解しやすい順番で並べました。
それぞれ詳しく確認していきましょう。
①誠実性要件
誠実性要件とは、「誠実性がないと許可はあげませんよ」という意味です。
誠実性がないと判断される定義は建設の請負契約時に詐欺や横領、請負契約を違反する行為が明らかな者です。
・ 個人事業主 ⇒ 本人
いわゆる経営判断をする人物が対象です。
行政書士の実務上、誠実性要件を満たさないということが理由で申請書が受理されなかったことは、私は今まで一回もありません。
なぜ誠実性要件で拒否された事がないのでしょうか?
それは、どうしても主観的な判断を拭えないからです。申請書だけで、客観的に明らかに不正又は不誠実である行為をする建設業者だと役所が判断することは難しいためです。
よって、語弊を恐れずに言えば特に心当たりがなければ誠実性要件は満たせています。
「許可を受けるにあたり、誠実に請負施工します!」という宣誓的な意味合いで捉えても問題ないでしょう。
②欠格要件
欠格要件とは、簡単に言うと「今まで悪いことをしていなかったかどうか」の確認という意味です。
「欠格要件に該当すれば許可を与えてはならない」と規定されています。
・ 個人事業主 ⇒ 本人
つまり経営者です。
法人や個人事業主に雇われている従業員が欠格要件に該当しても、許可を受ける上では問題ありません。
この欠格要件は色々ありますが、下記の質問への返答が全部NOであれば、ほぼ問題ないと言えます。
✓ 昔、建設業の許可を取り消された心当たりはあるか?
✓ 昔、建設業の営業停止処分を受けた心当たりはあるか?
✓ 禁錮刑、罰金刑、懲役刑を受けたことはあるか?
✓ 未成年者か?
✓ 暴力団と関係があるか?
✓ 精神的な障害があると診断された経験はあるか?
欠格要件の対象者全員に質問しましょう。
皆さん、全てNOでしたでしょうか。
もしそうであれば欠格要件は問題ないです。
仮にYESがあれば、その項目につき精査が必要になります。
行政書士の実務上、ご依頼者さんにこれら欠格要件の質問を根掘り葉掘り聞くことは正直気が引けます。
重要なことなので「あくまでも許可に必要な情報なので」と前置きし、聞き方に最大限気をつけた上で質問するようにしてください。
欠格要件の注意事項は、申請書を提出する段階だけでなく、許可を与えられた後にも関係します。
許可後に欠格要件に該当した場合や、申請書に嘘の記載をして許可を受けた場合、許可が取り消されることがあるのでご注意ください。
③財産的基礎要件
財産的基礎要件とは「一定基準以上のお金を持っていないと許可はあげませんよ」ということです。
この一定基準額が500万円です。
財産的基礎要件(=500万円以上の金額を持っている)の証明方法は2つあり、いずれかを選ぶことになります。
② 銀行の預金残高証明書
それぞれ確認しましょう。
①直近の決算日の貸借対照表
すでに決算を迎えている事業者さんは、手元に決算書があります。税理士さんに作成してもらう書類ですね。
一番最近、税務署に提出した決算書を開くと「貸借対照表」と書かれた名前の書類があります。
書類の中の「純資産額」の項目に500万円以上の金額が書いてあれば、財産的基礎要件は満たせています。
もし書類の見方に自信がなければ顧問税理士さんに「うちって一番最近の決算の純資産額って500万円以上ありますか?」と聞いてみてください。
税理士さんから『あります』と回答をもらえれば、財産的基礎要件は満たせているといえます。
では、貸借対照表の純資産額が500万円未満の場合はどうすればいいのでしょうか?
その場合は次の方法で証明できます。
②銀行の預金残高証明書
銀行口座の預金に500万円以上あれば要件を満たせます。
銀行の窓口に行き、預金残高証明書という書類を発行してください。
④社会保険要件
次に、こちらをご確認ください。
② 厚生年金保険
③ 雇用保険
社会保険要件とは、この3つに加入義務のある事業者は「適切に加入していないと建設業の許可はあげませんよ」という意味です。
では加入義務のある事業者とは、どんな事業者でしょうか?
それぞれの保険について、確認しましょう。
①健康保険
75歳未満の現役世代が加入する健康保険制度は、大きく次の4つに区分できます。皆さんいずれかの保険に必ず加入しています。
・ 全国健康保険協会(通称、協会けんぽ)
・ 国民健康保険組合(土建国保、建設国保など)
・ 自治体が管轄する国民健康保険
ただし建設業許可を受ける上では、いずれかに入っていればいいというわけではありません。適切な健康保険に加入する必要があります。
適切な健康保険とはなにかを確認しましょう。
法人と個人事業主で適切な健康保険は異なります。
◆法人の場合◆
法人の場合、いわゆる自治体が管轄する国民健康保険は不適切と判断されます。
なぜなら法人は労働者を一人も雇わず代表者一人のみであっても、社会保険への加入義務が生じるからです。
◆個人事業主の場合◆
基本的には国民健康保険に加入すれば適切だと判断されます。
ただし個人事業主が労働者を常時5人以上雇用している場合は適切な社会保険は異なります。
具体的には次の通りです。
◆個人事業主(5人以上労働者を雇っている)の場合◆
個人事業主も5人以上雇うと、自治体の国民健康保険では不適切と判断されます。
②厚生年金保険
③雇用保険
雇用保険は、法人か個人事業主かの違いは関係ありません。
ある条件を満たす労働者を雇っているかどうかで決まります。
その条件とは、週20時間以上働いていることです。
週20時間以上働く労働者を雇っている場合、加入義務が生じます。
つまり、次のような場合は雇用保険に加入する義務はありません。
《例》
・取締役しかいない法人
・週に20時間未満働くアルバイトのみ雇用している
表で表すとこうなります。
⑤営業所要件
建設業法上、営業所では建設工事の請負契約を締結するということが想定されています。
そのため、顧客を招き入れることができる接客スペース つまり事業専用のスペースを有する営業所が必要になります。
バーチャルオフィスのような、接客スペースを持たない営業所では許可は取れません。
また、接客スペースさえあればクリア出来るというわけでもありません。
営業所にはプライバシーが確保された自社専用のスペースがあるかどうかが大事です。
例)営業所を借りている場合
自社以外に借りている会社がいない場合は問題ないのですが、注意したいのが、一室を複数の会社で借りている場合です。
下記の場合は、自社の専用スペースがあると判断されます。
しかし、大きな部屋に複数の会社が自由に出入りできるコワーキングスペースのような営業所だと、専用デスクがあったとしても建設業法上の営業所として認められない可能性が高いです。
もしそういった場所を営業所として現在使用している場合には、自社で占有できるプライバシーが確保された営業所を探すことが望ましいでしょう。
電話番号は、自治体によっては固定電話じゃないと認めないと言われます。携帯電話しかお持ちでないのであれば、事前に審査機関に確認しましょう。
⑥専任技術者要件
「建設業許可制度のイロハ教えます!」の動画で、建設業の許可を取得するための重要なステップとして「自社で取得すべき業種を特定することだ」とお話しました。
例えば電気通信工事業の許可を取得したい場合、
500万円以上の電気通信工事を請負いたい
⇒電気通信工事に詳しい知識・経験が豊富な技術者が在籍している事業者だと許可行政庁からお墨付きを受ける必要があるということです。
この必要な知識・経験が豊富な専門性を有する技術者を「専任技術者」と呼びます。
この例でいうと、業種に対応する工事の専任技術者として認められる者がいる/いないで、許可が取れる/取れないというのが決まります。
では具体的に、どのような技術的専門性を有していれば専任技術者は要件を満たせているのでしょうか?
① 実務経験10年以上
② 指定学科卒業 + 一定以上の実務経験
③ 有資格者
※これらの条件について詳しく説明した動画はこちら⇒「専任技術者について分かりやすく解説!」
建設業の許可要件を満たすためには、
申請業種に対応する技術的専門性を持つ者=専任技術者を専属かつ常勤で雇う または 常勤の役員として就任させることが必要です。
⑦経営業務の管理責任者
「ケーカン」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
ケーカン(経管)とは、経営業務の管理責任者を略したものです。分かりやすく言うと建設業の経営のプロである責任者のことです。
許可を取ると大きな工事が受注できるようになりますが、建設業の経営経験が全くない人が経営している会社だと不安ですよね。
建設業法上の目的にある発注者の保護に欠けることになってしまいます。
そこで、
(1)一定期間以上、建設工事を請負う会社の取締役の経験を持つ者を専属におく
または
(2)一定期間以上、建設工事を請負った個人事業主の経験がある者を専属におく
ことを建設業許可の要件としています。
この(1)の「一定期間以上の建設工事を請け負う会社の事業主としての経験を有する者」がケーカンです。
・ 専属なので一社でしかケーカンになれない
・ケーカンになるためには、一定期間(=5年)以上の建設業の役員または個人事業主としての経験が必要
ケーカンに関してはこちらの動画で詳しく解説しています⇒「経営業務の管理責任者とは」
まとめ
いかがでしたでしょうか。
この記事でお伝えしたことが理解できれば、建設業の7つの許可要件について基礎的な知識は身についたと言えます。
冒頭でお話した通り、今回は大局を理解することを目的としたので説明が足りないと感じる箇所もありました。
説明が足りないと思う部分については別の記事や動画でUPする予定なのでもしよかったらご覧ください。