建設業を取扱う行政書士事務所のHPで「他の事務所で断られた案件でもご相談ください!」といった謳い文句をご覧になった方向けに、なぜ行政書士事務所によって許可取得の可否が分かれるのか3つの理由を添えて説明しました。許可が取れないと言われた事業者必見の内容です。
私の行政書士業務のメインの一つに建設業法があります。
建設業は事業者数も多く申請数も多いので、建設業を取り扱っている行政書士事務所も比較的多いのではないでしょうか。行政書士の中でも新規許可の取得をサポートしている事務所が多い印象を受けます。
今この記事をご覧になっている方も建設業法の情報を知りたいがゆえに役所や行政書士のホームページから情報を得ようとしてご覧になっているのではないでしょうか、
建設業許可の新規申請とは自社の営業所を管轄する都道府県知事等から初めて許可を受けるために必要な手続です。東京に営業所があれば東京都知事許可、大阪府に営業所があれば大阪府知事許可に申請書を提出して許可を受けるといった関係性ですね。
そこで皆さんも建設業の新規を取り扱っている行政書士事務所のHPを見てみると、
他の事務所でも断られた案件でもご相談下さい!!
こういった文言をよく目にしませんか。
つまりうちの事務所に依頼すれば、よその事務所で建設業の許可が取れないって断られた案件でも建設業許可を取れるかも知れません。諦めないでお問い合わせください!ってことですよね。
でもなんかおかしいと思いませんか。
建設業法という法律で定められた統一の基準があって、それを証明するための書類は手引きで公開されています。なのに、なぜ行政書士事務所によって許可が取れる、取れないと判断・結果が別れるのでしょうか。
もしここまで読み、建設業許可の取得を希望している方で、許可の要件はクリアーしたから近くの行政書士に相談したのに、建設業許可は取れない、書類がないので証明が出来ないと言われた皆様。
まだ諦めない方がいいです。
なぜなら行政書士によって許可が取れる判断・結果というのよく別れるからです。
このコンテンツを読めば、なぜ判断、結果が別れるかが分かります。
それを踏まえて、自分が最初に相談した行政書士事務所の許可が取れるのか取れないのかの回答が絶対なのか。今一度ご検討ください。
検討の結果、うーん、もしかしたら絶対的な回答じゃないかもしれないと思った方向けに、次はどういう行政書士事務所に再度相談すべきか、つまりセカンドピニオンを求めるべき行政書士事務所について私個人の見解をお話します。
Contents
大前提として
また本題に入る前に一点注意点。私はこのテーマを分かりやすく伝えることを目的とするため、審査が厳しい、審査が緩いという言葉を使います。
審査が厳しい、緩いという判断は私が経験した比較相対的な感覚、つまり主観に基づくものです。また、どっちが良いとか、こうあるべきというスタンスもこの動画ではとっていません。
あくまでも、行政書士 上田貴俊の一意見なのでそこはご了承ください。それでは参りましょう。
なぜ行政書士によって建設業許可取得の可否が別れるのか。
私は次の3つの理由で建設業許可取得が出来る出来ないの判断が別れると思っています。
それぞれ確認しましょう。
① 建設業許可に対する行政書士事務所のスタンス
全国には行政書士がたくさんいます。
当然、建設業を全く取り扱っていない行政書士事務所もありますが、建設業者数も多く全体の申請数も多いことが建設業許可の特徴です。
少なからず建設業の申請経験がある行政書士事務所は多くいらっしゃることはでしょう。
以上踏まえると、建設業に対する行政書士事務所のスタンスはざっくり次のように分けられるのではなないでしょうか。
X事務所 ・・・簡単なら出来る
Y事務所 ・・・手引きレベルなら出来る
Z事務所 ・・・建設業特化
とりあえず建設業者は事業者数が多く、申請数も多いので、申請経験のある行政書士事務所はたくさんあるってことを覚えておいてください。
② ???が原因で建設業許可が取れないと判断されることが多い
この???に入るものが、多くの建設業者が悩んでいることで、行政書士事務所によって許可取得の可否の判断が別れるものです。
この???に入るもの、それは 「過去に在籍していた会社で積んだ実務経験の証明」 です。
もちろん他にもありますが、体感的には9割はこれです。私の事務所への問い合わせでも多い悩みですし、私が出しているこの動画もニッチなテーマの割には視聴されているのではないでしょうか。
(関連コンテンツはこちらです! 過去に働いていた会社の実務経験の証明方法|建設業許可 )
ご存知の方も多いですが、建設業の許可を取得するためには実務経験の証明が求められることがあります。この実務経験は自社や自分で積んだ経験だけではなく、以前勤めていた会社の経験を計上可能です。
これが例えば昔、建設業許可会社で常勤の役員等や専任技術者で登録してたことを証明出来れば楽に認められることもあります。しかし一回も許可を取得したことがない事業者の経験だと最大10年分(しかも既に辞めた会社の分!)の工事の契約書や請求書を準備しないといけません。
③ 自治事務の差
自治事務とは簡単にいうと、行政庁が自己の責任においてある程度自由に審査方法を決めてもいいとされる事務です。
同じ建設業の新規許可でも東京都と大阪府で審査の方法が違うということです。
この自治事務がさきほど過去に在籍した実務経験が絡んでくるとかなり行政書士の知見の差が出てきます。
専任技術者で見てましょう。
専任技術者になるためには該当資格がないと、最大10年間の実務経験証明が必要です。
そして専任技術者たる実務経験を有するかどうか審査する際には次の2つが重点的に見られます。
能力証明とは許可を希望する業種で必要期間分の実績を有するかどうかです。
在籍証明とは、その実務経験を積んだ期間中に会社に在籍していたことを書類で証明することです。
この能力証明と在籍証明が適切に出来るかどうかで許可の可否が決まります。
具体例で確認
では具体例を見てみましょう。
申請人である建設太郎さんは過去勤めていた会社で大工工事業の実務経験10年を積みました。それを証明しようとします。
営業所はA都道府県にあるので、Aの建設業許可の手引きを読んでみました。
すると実務経験証明には次の書類が必要だと書いていました。
A知事許可を取りたい・建設太郎さん ①能力証明・・・・請求書&通帳 1ヶ月1枚以上、つまり120ヶ月以上の請求書&通帳 ②在籍証明・・・・被保険者記録照会回答票 ※厚生年金保険の加入記録 |
つまり実務経験を積んだ会社で厚生年金保険に加入していた期間は在籍していたと認めるということです。
建設太郎さんで言えば、専任技術者になるためには厚生年金に加入していた期間内で120ヶ月分以上の取得したい業種の請負工事の請求書と通帳が証明書類として求められます。もし過去に在籍していた会社で厚生年金保険に加入していなければその会社に在籍していたと認められず実務経験は認められないということです。
では次に、土木花子さんのケースを見てみましょう。
土木花子さんが過去に務めていた会社の実務経験10年を証明しようとします。
営業所はB都道府県にあるので、Bの建設業許可の手引きを読んでみました。
すると実務経験証明には次の書類が必要だと書いていました。
B知事許可を取りたい・土木花子さん ①能力証明・・・・原則不要 ②在籍証明・・・・原則不要 |
つまり、許可申請するにあたり、証明書類は何も準備しなくていいということです。
これが自治事務の差です。
つまり申請する都道府県によって実務経験をどのように認めるかどうかは異なり、提出すべき書類が変わるということです。
とはいえA知事許可とB知事許可はあまりにも極端な例だと思われるかもしれません。
しかし両方とも実際に運用されている審査方法です。
A知事許可の方がB知事許可より審査基準は厳しいし、B知事許可は審査基準は緩いと言えるのではないでしょうか。
では審査が緩いB知事許可を取りたいと土木花子さんは行政書士事務所に依頼したとしましょう。
すると先ほどの事務所に依頼すれば
X 行政書士事務所 ・簡単なら出来る | ◯ |
Y 行政書士事務所・手引きレベルなら出来る | ◯ |
Z 行政書士事務所 ・建設業特化 | ◯ |
そりゃそうだって感じですよね、
では建設太郎さんがA知事許可を取りたいと行政書士に依頼したとします。すると各事務所の判断はこうなるかもしれません。
すると先ほどの事務所に依頼すれば
X 行政書士事務所 ・簡単なら出来る | ✖ |
Y 行政書士事務所・手引きレベルなら出来る | ◯ |
Z 行政書士事務所 ・建設業特化 | ◯ |
しかし、建設太郎さんによくよく話を聞いてみると厚生年金に加入はしていたものの途中で加入していない期間があり10年間は加入していないことが発生しました。
するとこうなるのではないでしょうか。
すると先ほどの事務所に依頼すれば
X 行政書士事務所 ・簡単なら出来る | ✖ |
Y 行政書士事務所・手引きレベルなら出来る | ✖ |
Z 行政書士事務所 ・建設業特化 | △ |
B事務所手引きには厚生年金に加入していないと在籍していないと認めないとあるので10年には達しないので、許可は取れないと判断するでしょう。
では建設業に特化している事務所はなぜ△なのでしょうか。
それは他の方法で在籍証明ができないかどうかと考え方を切り替えるからです。手引きに書いている書類は一例として書いてあるだけで、他の書類、方法でも在籍確認が合理的に証明ができれば許可は取れる可能性は残っています。
この✖️と言われた建設業者向けに、ホームページで他の事務所でも断られた案件でもご相談下さい!と謳っているということです。
そう考えると、この文言はそれほど証明が難しくないものを指して、他の事務所で断れらた案件と言っているかもしれませんし、めっちゃくちゃ難しい案件でもウェルカムですって意味で書いているかは行政書士によりけりだとも言えるのかと私は思います。
セカンドオピニオンを聞くべき事務所は?
ではどのような行政書士事務所にセカンドオピニオンを求めるのがいいのでしょうか。
それは自社の営業所がある都道府県以外に事務所を構える建設業に力を入れている行政書士事務所です。
当事務所にも本件に似たご相談がありますが、そのほとんどは東京、大阪以外の建設業者さんです。それもだいたいが自治事務が厳しい自治体の建設業者です。
「地元では建設業で有名な行政書士事務所に相談したけど、取れないと言われました。10年の実務経験があるのですが、本当に許可は取れないのでしょうか。」
と言った感じです。
ではなぜ県外の事務所が望ましいのでしょうか。
それは自治事務に差があるからです。
地元で有名な行政書士事務所は、申請経験が豊富なためその自治事務で許可を取れるかどうかを判断しがちです。しかし手引き以外の書類でも合理性があれば認められることはあります。
他の都道府県では手引きに書かれているような書類が、皆さんが申請する道府県では斬新な証明方法に見えるかもしれません。
私は東京都・大阪府に事務所があるので、東京・大阪の自治事務はある程度把握しています。別の道府県から相談いただいた場合、問題点をヒアリングして、東京等が認める方法でいけそうだと思えば役所に提案しています。
すると 「あー、、、、なるほど。ちょっと上司に相談します。」 みたいなことも全然あるんですよ。
なので県外の建設業法に力を入れている行政書士事務所に相談することをおすすめします。
県外から相談しても迷惑にならないかなーなんて心配しないでください。
建設業の手続きは令和5年から電子申請出来るようになりました。つまり条件付きではありますが、出張などせずに事務所から全国どこにでも建設業許可申請は出来ます。皆さんも全国の行政書士事務所に相談することは全くおかしなことではありません。
もちろん、電子申請や県外に対応するかどうかは各行政書士事務所のスタンス次第ですので、問い合わせする際は県外の建設業社なんですがと一言添えてから進めてください。
ちなみに弊所は全国対応、難しい案件ウェルカム事務所です!
お悩み、ご相談ごとがあればお気軽にご連絡ください。