建設業の許可を取得した後に、許可業者には大きく5つの義務が課せられます。許可後の5つの義務につきまとめましたのでご確認ください。
建設業の許可を取得するには要件を満たす必要があります。
申請時に要件を満たしていないと許可は下りないのは当然ですが、許可後にも要件が満たせなくなったら許可は継続出来ません。
許可を継続するためには、ずっと要件を満たし続けなくてはいけないということです。
また許可取得後には新たな義務が課せられます。
その義務に違反した場合には行政処分の対象になります
許可を受けた事業所は以下に挙げる5つの義務を必ず確認しましょう。
Contents
許可業者に課せられる5つの義務
建設業許可を受けた事業者は以下の5つの義務が課せられます。
①変更内容の届出義務
②標識の掲示、帳簿の備付と保存及び営業に関する図書の保存義務
③契約締結に関する義務
④工事現場における施工体制の義務
⑤下請け代金の支払い期日に関する義務
1つずつ確認しましょう。
①変更の届出義務
許可の要件等に変更があれば届出を出さなくてはいけません。
例えば専任技術者や経営業務の管理責任者などですね。
許可申請で届出た内容に変更が生じたときは変更の届出が必要です。
法律で期間が定められていますので必ず期間内に届出ましょう。
許可要件以外にも変更があれば届出が義務付けられているものがあります。
以下まとめました。
■変更届の提出が必要な項目■
・商号
・資本金
・業種
・5%以上株主の就任、削除
・取締役(就任、退任ともに)
・営業所の名称や所在地( 主たる営業所、従たる営業所)
・経営業務の管理責任者
・専任技術者(変更、削除)
・健康保険の加入状況
・例3条の使用人
・電話番号
・廃業、一部廃業
ちなみに決算の変更届とこれは別です。
詳しくはこちらの『決算変更届作成のポイントと経営事項審査の流れ』をご覧ください
②標識の掲示、帳簿の備付と保存及び営業に関する図書の保存義務
許可業者は標識の掲示義務が課せられます。
店舗及び建設工事の現場ごとに公衆の見やすい場所に掲げます。
金看板でなくても問題ありません。手作りでもいいですが大きさに指定がありますのでご注意ください。
次に帳簿の備付、保存についてです。
請負契約の内容が確認できる書類を適切に整理した帳簿を保存する義務が課せられます。
これも営業所ごとに作成します。
発注者と契約した住宅建築工事に係る帳簿は10年間、それ以外の帳簿については5年間の保存義務が課せられます。
帳簿には以下の事項を記載します。
①営業所の代表者の氏名・代表者がその営業所の代表者となった年月日 ②注文者と締結した建設工事の請負契約に関する事項 ③下請人と締結した下請契約に関する事項 ④元請人が特定建設業者で下請人が一般建設業者(資本金が4000万円以上の法人を除く)、または個人の一般建設業者と下請契約を締結した時は以下の事項 |
最後に、営業に関する図書の保存です。
これは元請業者を対象とします。
営業所ごとに当該建物の引き渡しをしたときから10年間の保存義務があります。
■営業に関する図書の具体例■
・完成図(工事目的物の完成時の状況を表した図)
・発注者との打合せ記録(工事内容に関するものであって、当事者間で相互に交付されたものに限る。)
・施工体系図
・請負契約の写し
③契約締結に関する義務
請負契約の締結に関しては、次の規定があります。
・着工前書面契約
・契約書面への記載必須事項
工事を施工する前に必ず書面で契約を交わしましょう。
請負契約書面には次の項目を記載する必要があります。
■契約書面に記載する記載必須事項■
1、工事内容
2、請負代金の額
3、工事着手の時期及び工事完成の時期
4、前払金または出来高払の時期及び方法
5、当事者の申し出があった場合における工期の変更、請負代金の額の変更または損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め
6、天災その他の不可抗力による工期の変更または損害の負担及びその額の算定方法に関する定め
7、価格等の変動若しくは変更に基づく請負代金の額または工事内容の変更
8、工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
9、注文者が工事に使用する資材を提供し、または建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及
び方法に関する定め
10、注文者が工事の全部または一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引き渡しの時期
11、工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
12、工事目的物の瑕疵担保責任または瑕疵担保責任に関する保証等の措置に関する定めをするときは、そ
の内容
13、各当事者の履行の遅滞その他の債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
14、契約に関する紛争の解決方法
15、工事を施工しない日、時間帯の定めをするときはその内容
契約を締結するにあたり、自己の取引上の立場を利用して不当な金額で請負契約をさせたり、資材などの購入先を指定することは禁止されています。
事業者間、発注者との平等な関係性を実現するための規定です。
④工事現場における施工体制の義務
工事現場における施工体制に制限が課せられます。
1、工事現場への主任技術者の配置義務
許可業者が請負う全ての工事は現場に主任技術者を配置しなくてはいけません。
主任技術者とは営業所に専任する資格要件を満たす技術者のことです。
主任技術者についてはこちらの『建設業許可の主任技術者とは?専任技術者との違いや役割』をご覧ください。
特定建設業の許可業者で、一定基準以上の工事を請負場合は監理技術者の配置義務があります。
2、一括下請負の禁止
・自社で請け負った工事を他社に一括して下請負に出す行為
・他社が請け負った工事を一括して受ける行為
これらは原則、禁止されています。
詳しくは「建設業法で一括下請が禁止されている理由とその一括下請けの判断基準」をご覧ください。
⑤下請け代金の支払い期日に関する義務
建設業法では下請業者に対して代金を支払う際、規定があります。
注文者から請負代金の出来高払又は竣工払いを受けたときは、その工事を施工した下請負人に対し1ヶ月以内に下請け代金を支払わなくてはいけません。
1ヶ月以内であればいつでもよいというのではなく、できる限り短い期間内に支払われなくてはいけません。(建設業法第24条の3第1項)
さらに元請人が特定建設業者であり、下請人が一般建設業者(資本金が4,000万円以上の法人を除く)である場合、注文者から工事代金の支払いがあったか否かにかかわらず、下請け人が引渡しの申し出を行なった日から50日以内でかつできる限り短い期間内に下請け代金を支払わなければなりません。
また下請代金への支払は可能な限り現金払いにしなければなりません。
手形で支払う場合、手形期間は120日以内にしてできる限り短い期間としましょう。120日以上になると長期手形と判断され割引を受けることが困難である手形の交付に該当する可能性があり、そうなると建設業法違反になります。
現金払と手形払を併用する場合であっても、支払代金に占める現金比率を高めましょう。
少なくとも労務費相当分は現金払いが好ましいです。
まとめ
建設業の許可業者に課せられる5つの義務につきまとめました。
事業をしていると許可を受けた当時と状況が変わってきます。この変更事項を届出すということも大切な義務ですのでお忘れなくお取り組み下さい。
建設業法上、悪質な違反だと判断されると罰則が課せられます。
詳しくは建設業法違反の罰則|これをしたら罰金、懲役、過料のまとめでご確認下さい。