最近、機械メーカー様から問い合わせをよく受けます。

基本的には建設業許可を取りたいというご相談です。

昨今のコンプライアンス意識の高まりを背景に、機械メーカーが自社の商品を設置する場合にも建設業許可が必要だと施主である発注者から指摘を受けることが多くなってきているようです。

その際に発注者の方が何の気なしに「注文する人も罰則を受けちゃうからねー」ということを言っていたとのことで、こちらとしては許可を取らないとご迷惑をかけてしますうとお困りでした。

また別の問い合わせで機械を取り扱う商社から、仕入先の機械メーカーから「建設業許可を取得しないと今後この機械は貴社には販売しない」と言われ困っています、ということもありました。

機械メーカーの方が「無許可業者と分かってて販売すると弊社もそれ相応のリスクがある」ことを心配されているようです。

もちろん、業界全体の遵法意識の高まりは素晴らしいことだと思いますし、今後もこの流れはメインとなっていくことは私は歓迎します。

しかし、建設工事の発注者(施主)や材料提供者であるメーカーが無許可業者と取引することによって罰則の対象となるのでしょうか。

もちろん私は話の全部を聞いたわけではないですし、罰則の対象じゃないから気にしなくていいというスタンスでもありません。

ただ考える良いきっかけになったのでこれを端緒に発注者や材料提供者が無許可業者と取引すると罰則の対象となるのか、罰則の対象とならずとも無許可業者と取引する際のリスクやデメリットにつき考えてまとめてみました。

注文者や材料提供者は建設業法の罰則の対象に・・・・

結論からいうと、罰則の対象になりません。

注文者や商社に商品を卸す材料提供者を罰する規定は建設業法には無いのです

理由を説明します。

建設業法は基本的には国と事業者の関係性を定める縦の法律です。いわゆる行政上の目的を果たすための取締法規に該当します。

今回、例で上げた施主や商社に卸す機械メーカーは建設業者から見れば当事者間の契約です。つまり縦ではなく横の関係性になります。

よって建設業法を根拠に罰っせられることはそもそも法の目的に合致しないため罰則はない、ということです。

むしろ施主である発注者に関していえば、建設業法上、保護すべき対象ですので当然罰則の対象にはならないと言えます。

あくまでも建設業法は建設業者が遵守すべき法律なので、建設業者でないのであれば罰則の対象にならないということです。

では、今後の無許可業者との取引は問題ない?

今ここまでこの記事を読んで、胸を撫で下ろしている施主さんや機械メーカーさんもいるかもしれません。

しかし、罰則はなくとも施主や機械メーカーが無許可業者と取引して生じるデメリットはあります

むしろ機械メーカーに限っていえば、材料提供のみだけであれば問題ありませんが、立場によっては建設業法の対象となります。つまり罰則の対象です。

ここでは無許可業者と取引を通じて生じるデメリットにつき施主、機械メーカーの立場にて確認しましょう。

(1)施主の立場から見るデメリット

建設業法は施主の保護が大きな目的としてあり、その目的を達成するための手段として許可制度や主任技術者の配置などが義務付けられています。

それらを行う体制や意識は抜けていると言えるでしょう。

また施主といっても今回のケースは住宅の注文者のような個人ではなく、企業が事業用用途に使用するための注文です。く

また施主に直接的な罰則はなくとも、取引先へのリスクがあります。

例えば無許可業者が500万円以上の工事を受注すると、管轄の行政庁から指示や営業停止処分を受けます。営業停止処分の場合、期間は様々ですが10日~30日程度でしょうか。

継続反復的に付き合いのある事業者が営業停止になることは、今後の事業の継続においてはリスクといえます。また一回処分を受けたにも関わらず改善されない場合には処分は重たくなっていく傾向があるので取引を継続することは難しくなるでしょう。

さらに無許可業者に発注することは法リテラシー、コンプライアンス意識の低い会社というレッテルが張られても文句は言えません。他からの信用を失うことにも繋がり、経済的損失を被りかねない大きなリスクがあるといえます。

おそらく冒頭の例であげた施主は、具体的な罰則を意識した発言ではなく、取引から生じる不利益を心配していたのだと私は推測します

よって正しい付き合い方としては、早く建設業許可を取れるように促すことです。

建設業許可が取得出来るかどうか自信がない場合には建設業に強い行政書士に相談されることをオススメ致します。

(2)機械メーカーの立場から見るデメリット

機械メーカーはどのように自社の機械(材料)を提供しているかで罰則の有無が大きく異なります

今回の例で言えば、商社に機械を卸すという立場で材料を提供しているのであれば建設業法の罰則は関係ありません。

しかし次の2つの場合はメーカ側も建設業法の適用になるため注意が必要です。

◆機械メーカーが罰則を受けないための2つの注意点◆

①お客さんから直接注文を請けて、自社の従業員が設置する

②注文は商社からだが、設置は自社が指定する下請業者に作業させる(販売代金に含まれている)

 

それぞれ確認しましょう。

①お客さんから直接注文を受けて、自社の従業員が設置にいく

商社が介在しないケースです。これは機械メーカーが材料提供者には該当しません

施主から設置作業を直接請けているので元請業者として建設工事の請負契約を締結しているということになります。

よって発注が500万円以上であれば機械メーカは建設業許可が必要です。

これはご理解されている方も多いでしょう。ご注意ください。

②注文は商社からだが、設置は自社が指定する下請業者に作業させる(販売代金に含まれている)

 

建設業法には一括下請の禁止という、工事の丸投げを禁止する規定があります。

今回のケースで言えば商社が元請業者になるので、下請業者の施工管理は元請業者がしないといけません。

そして下請け業者と請負契約を直接締結し書面を作成することが建設業法上求められ、配置技術者も商社が直接雇用する従業員から出す必要があります。

それをしないのであれば一括下請の禁止に該当し、芋づる方式で商社は建設業に関する違反を重ねることになるでしょう。

どういうことなのか。

それは

機械の販売代金にメーカーが指定する下請業者に支払う作業代金も含めて請求することが、請負契約に関与していない建設業者という立場と主張することは無理がある。ということです。

つまり施工管理に関与しているよね?ってことです。

少なくとも元請業者が建設業法違反になるような契約を材料提供者の立ち位置で物品販売契約に見えるような契約は、外形上建設業法の適用を逃れようとしているのではないか?と疑わるリスクがあります。

お心当たりのある機械メーカーはお気をつけください。

無許可業者は2つに分けられる

ここまで無許可業者という言葉は使ってきました。

この言葉にはどうしても悪い印象があると思うのですが、実態は大きく2つに分けられます。

①大きな工事を請けないから許可を取っていない

②本当は許可が必要だと分かっているけど許可取得に向き合わない

前者の①は何も悪くないですね。しかし後者の②は事情があるにせよスタンスは改めるべきでしょう。

これは私が正義を振り回していたいわけではなく、自社の業務は建設業だと認めることで結局は取引先や関係業者の保護規定が働くからです。

例えば自社の業務が建設業だと認知すれば、建設業法への規定を知る姿勢に繋がり、施主を保護する規定の遵守をすべく会社全体で動いていきます。

それに伴い労災保険法や労働安全衛生法の取組むべき義務を知ることが出来ます。

これらは建設業に作業する従業員が怪我や病気を予防するための法律と実際に被災した場合の保険給付につき定めた法律を指しています。

建設業に関わる労災保険は事務所の労災とは異なり、元請業者が下請業者の作業員まで含めて加入します。

その現場労災が成立していなければ保険給付は受けられません。よって本来であれば現場作業の安全経費や労災保険料というのは請負契約に計上するべきです。

これらは建設業と認めることで始まるものと言えるでしょう。

逆に建設業と認めなければ法律上求められる予防もせず、事故が起きて病気や障害、死亡といった重大な結果が生じたとしても保険関係を成立させていなかったということが明るになり企業体質、コンプライアンスへの取り組み姿勢を問われることになります

通常、大きな事故現場には労働基準監督官が事情聴取、実況見分などを行い違法性が強いと判断し検察官が起訴すれば会社と責任者に罰金刑の前科がつきます。

建設業だと認めないことのデメリットは図り知れません。

しかし、なぜこんなに建設業に関する規定は厳しいのでしょうか。

それは建設業は全ての産業の中で一番被災者が多い産業だからです。さらに建設業の中でも電気が関係すると建設業以外にも守るべき法律は増えていきます。

なぜなら特に電気は危険だからですね。特別教育や登録が必要な作業ではないか、下請け業者が適切な工具を利用しているか等など確認する義務が多く課せられます。

機械メーカーはそこまで管理義務が発生するケースがあるということです。

まとめ

注文者と材料提供者は建設業法の罰則の対象となるのか。というテーマから、無許可業者と取引することのリスク・デメリットと流れで解説しました。

重複しますが発注者を保護することが建設業法の目的です。よって発注者である施主を建設業法が罰っすることはありません。

しかし、施主自身が事業主であれば取引先が無許可業者である限り営業停止処分などの行政処分のリスクを孕む方と継続的な取引をおこなうことはコンプライアンスの観点だけではなく事業の側面でも良いことではないでしょう。

また処分を受けるとその業者の会社名は公表されます。社会的制裁を受けるリスクのある事業者と付き合うこと、自社の信用を保つためにも避けた方がいいという考えは一般的ではないでしょうか。

取引の継続を望むのあれば建設業許可の取得を促すしかありません。

対して機械メーカーは注意が必要です。材料提供者というポジション以外にも建設工事に関わるのであれば、メーカ側が建設業許可を持っていることが求められます

建設業は危険な業務なので、建設業と認め法令を遵守することで施主だけではなく取引先、従業員の保護、安全と繋がるように整備されています。

無許可業者はそれらに関心を割いていないと外形的には示していますので、取引先の選定には細心の注意を払いお取り組みください。

また自社の業務は実質建設業だなと思う機械メーカーさんは許可の取得を前向きに検討しましょう。

弊所は機械器具設置工事業の取得にかかる必要な情報を発信しておりますのでご関心ございましたら下記記事をお読み下さい。

【要件緩和】機械器具設置工事業の許可を実務経験で取りたい!法改正まとめ

自社の実務経験で機械器具設置工事業の建設業許可を取るための必須知識!

取りたいんだけど取れないんだよ!って思っているならまずは建設業に強い行政書士に相談です。近場の行政書士からという方はそれでもいいですが、少なくともセカンドオピニオンが必要な案件である可能性が高いです。

相談、検討することで、何をするべきか、どんなリスクがあるのかを具体的に知るきっかけに繋がるからです。

お疲れ様でした。