経管 いない

この記事の結論と要約
建設業の許可要件である、経営業務の管理責任者が自社にいない場合の対処方法をまとめています。まず本当に自社に要件を満たせる人がいないのか確認して、いないのであればどんた対処方法があるのか。詳しくは記事内でご確認下さい。

建設業の許可要件は全部で6つあります。

その中でも比較的難しいと言われている要件が「経営業務の管理責任者の配置」です。経営業務の管理責任者について詳しく知りたい方は「建設業の許可要件である経営業務の管理責任者とは?」をご覧ください。

経営業務の管理責任者(以下、経管)がいない場合は建設業の許可は取得できません。

経管になるための条件は建設業の工事を請負う会社での一定期間以上の経営経験です。

自社に経営経験の要件を満たしている人がいない場合は許可が取れません。

では経管の要件を満たしている人材が自社にいない場合もしくはいたけどいなくなった場合はどうすればいいのでしょうか

経管の要件を満たして建設業の許可を取るには?

経管の要件を満たせなくて困っている方は、だいたい以下の①か②のどちらかのパターンです。

 

①経管になれる人がそもそも自社にいない場合

②経管はいるが、近い将来いなくなってしまう場合

 

それぞれ確認しましょう。

①経管になれる人がそもそも自社にいない場合

経管になれる人が自社にいない場合はどうするのか。

その場合の解決案は3つあります。

◆経管の要件を満たした人材がいない場合の解決策


⑴ 現在の役員が経管の要件を満たしていないのか再度確認する

⑵ 既に経管の要件を満たしている人を取締役に就任させる

⑶ 出向役員として受け入れる

 

一つずつ確認しましょう。

⑴ 現在の役員が経管の要件を満たしていないか再度確認する

経管は法人の場合、申請会社で常勤の取締役である必要があります。

その常勤の取締役が5年以上の建設業の事業主の経験があれば、経管として認められ要件を満たせます。

建設業法が改正される前は経営経験は申請業種と同じ業種でないとダメでしたが、廃止されました。経営経験を調べる際には業種は考える必要がないのでご安心ください。

この5年以上の経験を自社だけで満たす場合には5年間という時間が必要です。つまり、申請日時点で5年に達していないのであれば、5年に達するまで待つしかありません。

しかし、ここで今一度確認して欲しいことは、経管は過去の別会社で事業主経験が合算されることです。

自社だけでは5年に達しなくても経管として認められます。

◆経管になれる者がいないかのチェック事項


・過去の会社での取締役経験を合算して5年に達しないか

・過去の個人事業主としての経験と合算して5年に達しないか

・過去に大臣許可で令3条の使用人として登録を受けた期間と合算して5年に達しないか。

・過去の会社で執行役員として務めた期間と合算して5年に達しないか

 

たまに自社で5年間、取締役を務めていないから経管になれないと思う方がいますがそうではありません。

過去に建設業を請負う会社で取締役に就任していればその期間は認められます。

また取締役に限らず執行役員での経験期間、大臣許可会社での令3条という支店長の経営経験期間も合算可能です。

ただしこの2つは以前働いていた会社に連絡を取り、資料を借受けることが必須なのでハードルが高いとも言えます。

逆に過去取締役として就任していた会社が許可会社であったり、個人事業主での経験は自分達だけで証明書類を収集することが可能です。

今一度、経管の5年の要件を満たせている人はいないのかを確認しましょう。

⑵ 既に経管の要件を満たしている人を雇う

確認した結果自社には経管の要件を満たす人はいませんでした。

そういった場合には自社の経管の要件を満たす人を常勤の取締役として就任させなければなりません。

では経管の要件を満たす人とは具体的にはどういう人でしょうか。

◆経管の要件を満たす者


❶ 役員経験等を合算して5年に達っする者

❷ 建設業許可会社で5年以上、取締役経験がある者

❸ 過去に他社で経管として認められたことがある者

取締役経験等を合算して5年に達する者とは(1)で説明した者です。

とは言っても、せっかく外部から招き入れるのであれば経管の要件を満たせていることを容易に証明出来る人が望ましいですよね。

となると❷ ❸ が比較的証明が容易です。

❷の建設業許可会社で5年以上、取締役経験がある者とは建設業許可を取得していた期間中に取締役を務めていた者を指します。

もちろん現在は許可が失効している会社でも、その会社が許可を持っていた期間中に5年以上取締役を務めていたのであれば対象です。

この方法だと何が容易なのかと言うと、理由として大きく2つ挙げられます。

一つ目は当時の請負工事の実績を証明する資料がなくても経験として認められる点です。

もし無許可会社の取締役期間を証明する場合には、在籍当時の請負工事の契約書や注文書等の提出が必須です。

許可会社だとこれが求められません。

2つ目は建設業の許可会社の情報や役所が保有していることが多いことです。東京都は平成初期に東京都で許可を取った会社の情報も把握しています。

つまり審査窓口で在籍していた会社の情報を伝えれば、許可日が分かっているので許可証等の準備しなくても証明が可能です。

ただし自治体によっては過去の許可会社の情報を把握していませんので注意が必要です。

次に❸の過去に他社で経管として認められたことがある者につき説明します。

もし過去に別の会社で経管になった者であることを証明出来れば、5年以上の工事の経験年数は証明する必要がありません。

なぜなら過去に証明が出来たので、経管になれたからです。

この過去に経管になった者というのは次の2つの方法で証明します。

 

・過去に経管になった会社の建設業許可申請書の控え(副本、受付印のある原本)

・自治体が把握しているかの確認

 

過去に経管になった会社の建設業許可申請書の控えにある経営業務の管理責任者の氏名の欄に外部から招き入れる者が確認出来れば証明出来ます。

ただし、申請書の控えは原本でなくては認められません。

当時の申請書のデータやコピーでは認められないのでご注意下さい。原本の確認方法は申請書の表紙に当時の建設業課からの受付印が確認出来ることです。

または自治体が当時の許可会社の情報を把握していて経管の名前を保有していればそれでも認められる可能性はあります。

⑶ 出向役員として受け入れる

⑴自社の取締役に経管になれる者がいないかを確認し⑵の経管になれる者を自社の役員に就任させる方法でも経管要件を満たせない場合は、他社から要件を満たす者を出向として受け入れる方法があります。

まずそもそも論として出向でも経管はなれます。

出向とは次のような関係を指します。

出向元で経管の要件を満たす者が出向先で経管になるといった関係です。

ここで問題となるのは常勤性です。

経管になる者は許可を受ける会社で常勤でなくてはいけません。

建設業法上、一般的に常勤を証明する方法は健康保険証に記載された会社名です。

ただし出向の場合には健康保険は在籍元で加入していることが多いです。むしろ申請会社名で健康保険証を発行出来るのであれば建設業許可を取得する上では出向契約を締結する必要がないとも言えます。

つまり出向元の会社名が記載された健康保険証だけでは常勤性が認められないので他の資料の提出が必要です。

必要書類としては次のものが挙げられます。

◆出向契約の常勤性を証明する書類


・出向契約書

・給与の支払い元を証する書面

出向契約書では出向期間や出向にかかる費用負担などが確認されます。

給与の支払い元を証する書面とは、出向先が経管の給料をしっかりと負担しているかどうかが確認されます。

出向先が常勤に見合う賃金を負担していないと判断すると常勤性は否定されますので注意が必要です。

また審査行政庁によっては出向先が給与振り込みをしているか複数月確認してきます。申請日時点で複数月、給与負担をしていない場合には常勤性を認めないこともあるのでこれも注意が必要です。

すぐに許可を取りたい場合は他社で建設業の取締役等として一定期間以上の経営経験がある者を自社の取締役として迎え入れることで要件を満たせます。

 

②経管はいるが、近い将来いなくなってしまう場合

基本的には近い将来の経管がいない問題を解決するためには①で紹介した同じ方法で探すことになります。

ただし法改正により創設された、今後の建設業許可を継続するにあたっては次のような方法を取ることをお勧めします。

・業務分掌規定、組織図の作成

・給与台帳の保存

・稟議書の作成

これらは何を意味しているかというと、取締役として登記されていない期間でも経管の要件を満たせるこ可能性があることです。

令和2年の建設業法改正により、経管の要件が拡大されました。

これは要件が緩和されたわけではないのですが、書類さえ残しておけば会社の規模関係なく対象となる項目が追加したと考えられることです。

例えば法人・家族経営で建設業許可を取得していた場合を考えます。

お父さんが経管で退任するとなった際に、お母さん子供が取締役を5年以上務めていれば問題ありません。

しかし取締役期間が5年に達していなければ許可の要件を満たすことは無理だと考えられます。

しかし上記の書類があれば補佐経験が認められる可能性があります

補佐経験とは取締役の直下で直接補助した経験を指します。

具体的にどんなことをすればいいのかというとケースバイケースですが、少なくとも補佐者が建設業の決済や稟議書で名前が出てくる等、経営判断に関わっていることを書面で証明出来ると許可を維持出来る可能性は広がります。

また稟議書や決済に関わるのあれば相応な給料をもらっていることが望ましいです。もし健康保険の扶養に入っているようだと補助した経験が否定されるかもしれません。

何が言いたいかというと、どんな小規模な会社でも業務分掌規定や組織図、稟議書等は作成するように書面を整備すべきということです。

もしこういった書類があれば審査行政庁も認める可能性が出てきます。

経管の注意点

経管の要件を満たせる者が見つかったとします。

その者はどんな形で契約してもいいわけではありません。

許可要件を満たすためには次の5点ご確認下さい。

◆経管要件、5つの注意点


①取締役として登記すること


②申請会社で常勤であること(社会保険に加入させる)


③他の会社で経管、専任技術者として登録していないこと

④役員報酬を最低でも毎月10万円程度に設定すること

欠格要件に抵触しない者であること

常勤とは、休日その他勤務を必要としない日を除いて職務に従事していることです。

報酬に関しては常勤性がある=最低賃金程度はもらっているという考え方があります。

とは言っても役員は最低賃金法の対象外ですので、住民税が特別控除される程度はという観点で月10万円程度という考えがあります。もちろん別途控除があれば非課税になるのでなんとも言えないのですが。

アイコン-チェック・経管の経営経験は他社の期間も合算出来る
・外部から招き入れる場合、許可会社で5年以上か経管になったことがある者証明としては比較的容易
・出向は出向元に常勤性があるか重点的に確認される
・経管になる者が見つかったら5つの注意事項を確認する

 

経管 予防

経管になれる者が見つからなかった場合

残念ながら経管の要件を満たせる人がいなくなり、他に該当者がいない場合は建設業許可の維持ができません。

その場合は廃業届出を提出しなくてはなりません。

詳しくはこちらの『廃業届、届出書はどんな場合に提出する?ペナルティーは?』をご覧ください

経管該当者が退任した日から許可要件は満たせないので、500万円以上の新たな請負契約は出来ませんので注意が必要す

まとめ

経管がいなくなった場合にまずすべきことについてまとめました。

経管になれる者の探し方は基本的にはこの記事に書いてある通りです。

ただし大きな会社には執行役員制度や、労務財務建設業を直接補佐した経験が5年以上ある者がいれば建設業の5年以上の役員経験がない者でも許可は取れます。

これらは対象者が限られるので、別のコンテンツで触れる予定です。

もし経管が退任し、他に経管になれる者がいないのであれば許可は維持出来ません。

許可を継続するために出来ることは、しばらく辞めないであろう者を取締役に就任させることや業務分掌規定、組織図を作成して稟議書に補助した者の名前を記載することです。

中長期的な目線で建設業の許可を維持出来るように建設業法は改正されましたので、それに沿うように書面を作成することが大事です。

書類の作り方がご不明な場合は専門家にご相談下さい。