この記事の要約
機械器具設置工事業の特定を取得したい事業者向けに、取得するための申請フローについてまとめました。私としては許可行政庁に指導監督的実務経験を申請するのではなく、また有資格者を雇用するでもなく、実務経験による監理技術者証の取得を提案します。配置技術者として必要な監理技術者証を取得することで機械器具設置工事業の特定の専任技術者として認められるからです。どのように取得するのか、注意点についてまとめていますのでご確認ください。
機械器具設置工事業の特定を取得したい事業者向けに、取得するための申請フローについてまとめました。私としては許可行政庁に指導監督的実務経験を申請するのではなく、また有資格者を雇用するでもなく、実務経験による監理技術者証の取得を提案します。配置技術者として必要な監理技術者証を取得することで機械器具設置工事業の特定の専任技術者として認められるからです。どのように取得するのか、注意点についてまとめていますのでご確認ください。
建設業許可の業種の一つである機械器具設置工事業の専任技術者として認められる資格は他の業種と比べて数が多くありません。
特に機械器具設置工事業の特定に関しては技術士のみです。
さらに技術士の機械部門は全体の登録者数で見ても令和3年時点で6,400人ほどしかいません。(日本技術士会 HPより)
そう考えると、特定の機械器具設置工事の取得を希望する事業主は技術士を新たに雇うということは現実的ではないと言えるでしょう。
ではどのようにすれば特定の専任技術者要件を満たせるでしょうか。
私の意見としては指導監督的実務経験を用いて監理技術者証を取得することをお勧めします。
この記事ではその理由と、監理技術者証明書を取得するための必要な準備や注意点についてまとめました。ご確認ください。
Contents
なぜ特定の機械器具は監理技術者がおすすめなのか
監理技術者証を取得して特定の専任技術者として許可申請をすることをおすすめする理由は、ズバリ指導監督的実務経験の証明が比較的容易だからです。
なぜ容易なのでしょうか。
大きく次の2点が要因です。
それぞれ確認しましょう。
①機械器具代金を含んで税込4,500万円以上の元請工事の実績が使える
特定の専任技術者になるためには指定業種を除き一般の専任技術者要件+2年以上の指導監督的実務経験で認められます。
指定建設業とは、特定の専任技術者が有資格者でないと認められない業種です。詳しくは特定の許可取る事業所必見!7つの指定建設業の注意点にてご確認下さい。
指導監督的実務経験とは施主である発注者から直接請負った元請工事で主任技術者、工事主任、施工監督的などの立場で下請業者に対して工事の技術面を総合的に指導監督した経験です。
この指導監督的経験として認められるために請負金額の要件があります。
それが4,500万円です。そしてこの工事代金には機械器具の装置代金を含めることが出来ます。
機械器具設置工事は請負金額が高くなることが一般的には多いです。
よってこの税込4,500万円の基準を満たしやすいと言えます。
よってこの税込4,500万円の基準を満たしやすいと言えます。
まとめると次の通りです。
②実績証明資料が比較的柔軟に審査される
監理技術者証を用いて特定の専任技術者になることをおすすめする理由として指導監督的実務経験の証明が比較的容易と書きました。
というのも、実務経験で特定の専任技術者になるための方法は次の2つがあります。
①許可行政に指導監督的実務経験証明申請
②一般社団法人建設業技術者センターに監理技術者資格証明の新規申請
今回私が記事にまとめている方法は②の一般社団法人建設業技術者センターに監理技術者資格証明の新規申請です。
①と比べて指導監督的実務経験として認められる書類の量が違います。
①の具体例を確認しましょう。
例えば、東京都知事許可の建設業許可の手引きでは次のように書かれています。
【東京都 令和5年 建設業許可 手引】
まとめると、次のことが確認できます。
・工事経歴書に記載の無いものを指導監督的実務経験で使用する場合には工事の契約書や施工体系図などの写しが必要。
・施工体系図等の指導監督的な地位にあったことがわかる資料が必要
・証明書類として工事の契約書しか認めないこと
注文請書で取引していればそれも認められません。
また契約書を締結しており、その中に工事の責任者や現場代理人として専任技術者の氏名と工期が確認出来ればそれで証明できますが、契約書には書いていないことも多々あるのではないでしょうか。
技術者の名前が確認出来ないのであれば施工体制台帳を提出するように指示を受けますが、施工体制台帳の作成義務のある民間工事は特定の許可が必要な工事と同じ基準です。つまり4,000万円以上の下請契約(令和5年1月1日以降の契約であれば4,500万円)がないと作成義務はありません。
そもそも特定の許可を取得したいから指導監督的実務経験の申請をしているのに、特定の許可業者に作成義務が課せられている資料の提出が求められるわけです。
また機械器具設置工事業の場合、工期がまるまる認められない自治体があります。
組み立て、据え付けの期間を明確にわかるように工程表まで求められることもあります。(ただ、指導監督的実務経験であれば、据付期間とイコールではないのでは?というのが個人的見解です。)
機械器具設置工事業の実務経験について詳しく書いた記事はこちらの 自社の実務経験で機械器具設置工事業を取るための必須知識! にてご確認ください。
これを24ヶ月分用意するのはなかなか難しいのではないでしょうか。
では建設業技術者センターは?
それに対して一般社団法人建設業技術者センター(CE財団)で指導監督的実務経験を取得する場合には次のような書類が証明書類として書かれています。
いかがでしょうか。
特筆すべき点は許可行政庁に提出した工事経歴書でも実績証明書類として認められる資料の一例として明記されていることです。
工事経歴書とは新規や更新許可申請時及び建設業の許可業者が毎年提出する決算変更届の書類の一部です。
工事経歴書には元請、主任技術者、工事名、工期の項目があります。
工事経歴書内に請負金額4,500万円以上であり、実際に指導監督的経験を含む工事が確認できれば別途工事の契約書や注文書などの提出は原則必要ありません。
①の許可行政庁に指導監督的実務経験を申請するより書類の数が少なく、認められる書類も複数あるので柔軟性があるということを、ご理解いただけたのではないでしょうか。
工事経歴書を証明資料として使用する場合の注意点
注意点は2つあります。
一つ目は指導監督的実務経験の審査時に、この工事の証明書類の会社に在籍する上司や責任者に確認の連絡が入ることです。
その電話の結果、実績に疑義があるとなれば、契約書や施工体系図などの追加の書類が求められます。書類作成を任せっきりだと審査がスムーズにいかなくなるのでご注意ください。
また過去の会社の実績を活用する場合も、押印こそ必要ありませんが内容につき問い合わせが入るので必ず事前に確認しておきましょう。
二つ目は機械器具設置工事業の工事だと分かるように工事経歴書に記載することです。
機械器具設置工事業は設備系工事の専門工事のどれにも当てはまらないものという枠組みで判断することがあります。自社が施工した工事が、国土交通省の例示にある機械器具設置工事業の工事名のどれに一番当てはまるかを確認して、ご作成ください。
そうしないと、指導監督的実務経験の実績が機械器具設置工事業だと断定できる資料を別途追加するよう求められます。
以上、ご注意ください。
結局、監理技術者証は必要になる
この記事では特定機械器具設置工事業の許可を取得するための手段で監理技術者証の取得を提案しております。
しかし実際に機械器具設置工事業で大きな工事、具体的に4,500万円以上を下請業者に注文する場合には現場に監理技術者を持っている技術者を配置する必要があります。
特定の機械器具設置工事業の許可を取得出来たとしても、すぐにそんな大きな工事を受注する予定はないよ!と思う方もいるかもしれませんが、いざ該当工事が発注された時に監理技術者証がないと工事に間に合わないかもしれません。結局、発行するためには本コンテンツで申し上げた書類が必要かつ、審査が下りるまで時間がかかるからです。
ちなみに私の経験では、過去に指導監督的実務経験で特定の専任技術者として認められた者の当時の許可行政庁の受付印ありの指導監督的実務経験証明書を添付しましたがそれだけでは認められませんでした。今一度工事の契約書や施工体系図を用意するように指示を受けたということです。
つまり特定の許可を取得することを目的とするだけでなく、許可後のコンプライアンスも見据えれば監理技術者証は必要になります。
許可行政庁で指導監督的実務経験が認められても二度手間になるリスクがあることもお忘れなく。
まとめ
特定・機械器具設置工事の建設業許可を取得するための専任技術者になる手段として監理技術者をおすすめする理由についてまとめました。
現に当事務所でも、許可行政庁に指導監督的実務経験で提出したけど認められず困っていると言った連絡をよく受けます。
その場合は監理技術者証明ルートで取得できないかを検討します。
ただし注意点としてはこの、監理技術者証の取得を巡っては過去に虚偽の実務経験で監理技術者証を大量取得した会社が大きな問題となりました。
これが起きた背景としては当時、監理技術者証を取得する際の経験証明書類の審査が厳しくなかったためと考えています。
今は以前よりも経験証明書類の信憑性をしっかり確認するようになったと経験則上感じます。
虚偽で取得してもそれが発覚すれば監理技術者証は取り消され、営業停止等の監督処分も受けるので絶対に避けるようにしましょう。
■ 技術検定の受検又は監理技術者資格者証の交付申請に際し、虚偽の実務経験の証明を行うことによって、不正に資格又は監理技術者資格者証を取得した者を主任技術者又は監理技術者として工事現場に置いていた場合には、30 日以上の営業停止処分とする
(引用元:建設業者の不正行為等に対する監督処分の基準より)
また不正に受検した場合や、技術者本人が監理技術者制度を理解していないと判断された場合には最大3年の受検禁止規定があります。
■ 虚偽の出願における3年の受検禁止に加え、制度の不理解等による出願に関する不正行為についても、原則1年の受検禁止とする規定を追加。
(引用元:建設業者の不正行為等に対する監督処分の基準より)
監理技術者証を申請する場合には万が一にも虚偽だと判断されないこと、工事内容と制度を理解している責任者を担当者にあて、監理技術者センターから確認があった際に対応できるように申請に臨んでください。