専任技術者の要件を実務経験のみで満たす場合、常勤で10年以上の実務経験が必要です。個人事業主や過去の会社での経験も合算して良いのですが、その場合は以前の会社で常勤で工事を経験していたかを証明しなくてはいけません。過去働いていた会社に連絡せずに複数の会社での経験を合算して、実務経験を証明するための方法をこの記事でまとめてあります。
また同じテーマで動画でもお話しました。その動画を文字起こした記事はこちらの『【実務経験で専任技術者になる!】昔働いていた会社に連絡しないで実務経験を証明する方法!【建設業許可】』からご確認下さい。
※令和3年から建設業法上の書類には押印義務が廃止されました。過去に働いていた会社から印鑑をもらう必要はございません。ただしその会社が無許可会社であれば、当時の工事の請求書や契約書が引き続き必要です。
建設業許可を取得するためには6つの要件を満たさなくてはいけません。
そのうちの1つが専任技術者です。
常勤要件以外に技術的な能力を要件として求めています。専任技術者について基本的なことを知りたい方はこちらの『建設業の許可の専任技術者になるための要件を分かりやすく 一般編』をご覧ください。
技術的能力の1つに取得する業種の実務経験が常勤で10年以上あることとあります。
この実務経験証明ですが、過去に働いていた会社の期間が含む場合が厄介です。
今は一切連絡をとっていない過去の会社から資料を借りないと原則証明できないからです。
単純に先方が過去の会社の資料を貸すことが難しいケースもありますが、そもそも昔すぎて書類を保存していないこともあります。
実際に10年以上常勤で働いていた場合でも、当時の資料を貸してもらえないとなった場合には、許可は取得できないのでしょうか。
そうではありません。
自治体によっては以前働いていた会社の書類を用意せず実務経験を認める方法を設けています。
この記事を読むことで、以前働いていた会社と連絡することなく、そこで常勤として働いていたことを証明する方法を知ることが出来ます。
Contents
基本的事項の確認
建設業許可を取得するにあたり、専任技術者の実務経験として認めてもらうための3つの基本的ルールを確認しましょう。
1つずつ確認しましょう。
① 一定の期間内に1つの業種のみしか実務経験は認められない
例えば1人の技術者が業種Aと業種Bの工事を同時並行で10年間施工したとします。
その場合実務経験として認められる業種は1つのみです。つまりAかBのどちらかをしか取得できません。
1人の技術者が実務経験で2つの業種の専任技術者になるためには、最低でも20年以上必要です。
もし取得したい業種の指定学科卒業であれば実務経験は3〜5年で認められます。複数業種を申請する場合も、条件に適合すれば6〜10年で2業種の専任技術者となれることも同様です。
② 常勤で働いていた期間しか実務経験に認められない
実務経験は常勤で働いていた期間しかカウントされないことが一般的です。
常勤証明として1番ポピュラーなものが厚生年金に加入していることです。厚生年金に加入している期間は年金事務所が発行する記録照会票で証明します。
もし厚生年金に加入していなかった場合には次の書類を期間分収集することで証明します。
・住民税特別徴収決定通知書
・確定申告書に記載された役員報酬ページ(取締役の場合)
・確定申告書(個人事業主として独立していた期間)
・所得証明書(個人事業主として独立していた期間)
過去の証明期間が個人事業主のものであれば比較的証明しやすいです。しかしそれ以外のケースだと過去働いていた会社から資料を借りる必要があります。
また自治体にもよりますが次の書類も常勤性を認めるようです。
・源泉徴収票
・給料明細と通帳
・タイムカードや工事日報
以上です。
③ 実務経験は合算できる
冒頭からも言及していますが、複数会社での実務経験は合算できます。
Aという会社の実務経験、Bという会社の実務経験、個人事業主としての実務経験など全て合算出来ます。
合算して申請業種の工事を施工した経験が常勤で10年以上あれば要件は満たせるということです。
ちなみに、事務員や単なる雑用として工事に携わっていた期間は認められません。
実務経験の基本的な考え方は以上です。
これをふまえて過去に働いていた会社で常勤として働いてた実務経験の証明をするためにはどうすればよいのでしょうか。
過去働いていた会社に連絡しないで実務経験を証明する方法
過去働いていた会社(雇われていた、取締役等だった)に連絡を取らないで実務経験を証明する代表的な方法を説明します。
前提として次の2つが必要です。
①過去に働いていた会社が建設業の許可会社であること
②許可を取得していた期間、技術者が厚生年金に加入していたこと
一つずつ確認しましょう。
過去に働いていた会社が建設業許可を取っていたか確認する
まず最初に過去の会社の情報を調べましょう。
次の情報が分かるとベストです。
上記5つを調べます。
過去に働いていた会社が許可を持っていたか持っていなかったかで、実務経験の証明の難易度が大きく変わるからです。
ポイントは専任技術者が働いていた期間に、その会社が建設業許可を取得していたのかです。
現状、その会社が許可を有しているかは国土交通省のこちらのページから確認でします。
もしここで情報が出てくればその会社の許可番号をメモしましょう。
次に許可を出している許可行政庁を調べましょう
この赤枠に記載されている都道府県が許可を出しています。
該当する都道府県の建設業課に電話して
前に働いていた会社がいつから自社が取得したい業種の許可を取得していたかを確認しましょう。
重複しますが技術者が在籍していた期間に建設業許可を取得していてもこれから取ろうとする同じ業種の許可を取得していないと意味がないからです。
都道府県により過去の情報を保有していない場合がある
残念ながら問い合わせても、昔の情報は一切保有していない都道府県もあります。
前回更新したこと以外は分からないという状態です。そうなると別の方法で許可会社の情報を調べなくてはいけません。
・原則、過去に働いていた会社が実務経験を証明しなくてはいけない
・前の会社と連絡しなくてもよい方法がある ※ 自治体による
・前に働いていた会社が在籍機関中に申請業種の許可を取得していたかを確認
厚生年金加入期間で常勤性を証明する
各都道府県の建設業課に問い合わせた所、技術者の在籍期間中も申請業種の許可を持っていました。
次にこの期間に厚生年金に加入していたことを証明します。
建設業許可の期間と厚生年金加入に加入していた期間が常勤性として認められ、過去の会社に連絡をしなくても実務経験が認められる期間だからです。
最寄りの年金事務所で厚生年金に加入していた期間が確認出来ます。
必要な情報は技術者の基礎年金番号です。
近くの年金事務所で厚生年金加入記録照会票を発行してもらいましょう。
以上、以前の会社で雇われていた、取締役だった場合の証明方法になります。
個人事業主に雇われていた期間の証明
個人事業主のもとで働いていた場合も原則、上に書いた方法と同じです。
ただし個人事業主のもとで厚生年金に加入していた方は少ないでしょう。なので稀なケースと言えます。その場合には他の方法で証明する必要があります。
自分が保有する書類で証明出来るとすれば、源泉徴収票や個人事業主から給与の入金が確認できるものなので証明するしかありません。
過去の会社が建設業許可を持っていない場合・・
過去の会社が許可を持っていない場合には上記方法は一切使えません。
連絡を取らない方法はほとんどないと言えます。
仮にあるとすれば、当時の取引先です。専任技術者にしたい方が主任技術者等の配置技術者として従事した工事の契約書を借りられるか確認してみましょう。
また仮にこの会社か資料を借りることが出来てもで厚生年金に加入していなかった場合、請求書や見積書や給与台帳などを使って常勤で働いていたことを証明しなくてはいけません。
・個人事業主に雇用されていた場合、常勤性の証明が難しい
・個人事業主に雇われていた場合は給与明細や通帳の入金ページで証明する
・過去の会社が許可を持っていない場合、連絡を取り書類を用意してもらうしかない
まとめ
いかがでしたでしょうか。
専任技術者の実務経験が過去働いていた会社の経験を使用して証明することは難しいと言われています。
一切連絡を取らずに証明出来るとすれば次の2つの条件を満たすことが必要です。
①技術者が在籍当時に建設業許可を取得していたことを建設業課が情報を保有している
②在籍当時、厚生年金に加入している
この2つの条件を満たせば過去の会社に一切連絡を取らずに実務経験の証明が出来ます。
ただしこれは自治体によりけりです。東京、神奈川、埼玉県は認めています。北海道は認めていません。
このように自治体によって異なることもあり、建設業許可を取得出来る、出来ないの判断が行政書士の経験値によって判断が分かれることがあります。
その辺について詳しく書いた記事はこちらからご確認ください。
また令和2年までは自分の実印の押印が必要でしたがこれも廃止されました。よって上記①②の条件を満たしていれば大きな障害は無いといえます。
仮に①と②を満たせていない場合でも、やり方次第では許可がとれることもございます。
北海道は認めていませんでしたが、別の方法で許可を取得出来ました。
もし10年以上働いていたことは間違いがないが証明出来ずにお困りの方は、諦めずに建設業を専門に扱う行政書士に相談してみましょう。建設業許可も電子申請が始まったのでどこからでも申請が可能です。