この記事の要約
建設業を取扱う行政書士事務所のHPで「他の事務所で断られた案件でもご相談ください!」といった謳い文句をご覧になった方向けに、なぜ行政書士事務所によって許可取得の可否が分かれるのか3つの理由を添えて説明しました。許可が取れないと言われた事業者必見の内容です。

労働安全衛生法は労働者の労働災害を防止するための法律です。

元々は労働基準法の一部だったので条文に書いてある内容は最低基準になります。

なので、実際に労働災害が起きたか起きていないではなく基準に達っしていなければ違反になり、罰則を受ける可能性があることが労働安全衛生法の特徴です。

そしてその罰則については労働安全衛生法の十二章で罰確認出来ます。

結構なボリュームがあるのと、建設業者と直接の関係のない機械の製造機関や免許の指定業者などの罰則もあるため、それらはこのコンテンツでは言及しません。

建設業者が関係する罰則について、建設業を専門とする行政書士・社労士である上田が関係箇所だけピックアップしました。

コンテンツ内で建設業者が気をつけたい罰則規定につき確認してみましょう。

労働安全衛生法の罰則の大枠を掴む

細かに見ていく前に労働安全衛生法の罰則規定につき大枠を理解しましょう。

建設業者が関係する労働安全衛生法の罰則は次の4つのパート分けが重要です。

◆建設業者の労働安全衛生法の罰則の捉え方◆


①3年以下の懲役又は300万円以下の罰金  ~116条~

②6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金  ~119条~

③50万円以下の罰金            ~120条~

両罰規定                ~122条~

 

この4つに大別出来ます。

それぞれどういった行為、違反をすると対象になるのか確認しましょう。

①3年以下の懲役又は300万円以下の罰金  ~116条~

労働安全衛生法で一番重たい罰則です。

違反行為該当条文
黄燐マッチ等の危険な成分が含有した物を製造、輸入、譲渡、提供、使用する55条

健康に有害な物質は特に制限を受けています。

②6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金  ~119条~

違反行為該当条文
事業者の講ずべき措置20条、21条、22条、23条、24条、25条
爆発、火災に備えた機械などの備付、
訓練、救護の措置 
25条の2
建設業の元請業者が下請けの労働者も含めて爆発、
火災に備えた機械などの備付、訓練、救護の措置
30条の3
建設業の元請業者が下請業者に建築物や設備を
使用させる際の労働災害防止措置
31条
化学物質等の製造、又は取り扱う設備で改造等の作業を注文する者の下請の従業員の労働災害防止措置31条の2
クレーン等の貸与者が機械による
労働災害を防止するための措置
33条
クレーン等を借り受けた建設業者が、自社の労働者以外に使用させる場合の災害防止措置33条の2
事務所や工場などの貸与者が労働災害を
防止するための措置
35条
検査証を受けていないクレーン等の特定機械を
使用した、又は譲渡や貸与をした
40条
安全衛生教育すべき業務にもかかわらず
特別教育をしなかった
59条
就業制限業務なのに技能講習を受講させずに業務に
就かせた
61条
作業環境を測定すべき作業場なのに環境測定及びその結果を保存していない65条
潜水業務など作業時間の上限が定められている業務の基準を超えて業務に就かせた65条の4
伝染病にかかった労働者を就業させた68条
労働安全衛生法令違反を労働基準監督署等に申告をした労働者に対して不利益な取扱いをした96条
健康診断結果に関する秘密の保持しなかった105条

③50万円以下の罰金  ~120条~

50万円以下の罰金を受ける違反は大きく次の4つに分けられます。

◆労働安全衛生法の罰金50万円以下 4つの分類◆

(1)規定に違反した

(2)役所からの命令又は指示に違反した

(3)立入検査等に協力しなかった

(4)報告をしない又は虚偽の報告、出頭しなかった 

 

まずは①の規定に違反した場合の具体的罰則を確認しましょう。

(1)労働安全衛生法の規定に違反した

違反行為該当条文
総括安全衛生管理者の選任、統括管理の措置10条
安全管理者の選任、技術的管理の措置11条
衛生管理者の選任、技術的管理の措置12条
産業医の選任、健康管理の措置13条
統括安全衛生責任者の選任、統括管理の措置15条
統括安全衛生責任者による元方安全衛生管理者の指揮、統括管理の措置15条3  4項
元方安全衛生管理者の選任、技術的管理の措置15条2の1項
安全衛生責任者の選任、省令で定められた措置16条
安全委員会の設置、調査審議17条
衛生委員会の設置、調査審議18条
爆発、火災の技術的事項を管理できる有資格者の配置25条の2 2項
事業主が講ずる措置に対する労働者の遵守26条
元請業者が講ずべき措置30条
発注者から氏名された元請業者が講ずべき措置30条 4項
請負人に講ずべき措置32条1項~6項
機械等の貸与を受けた者の措置の遵守33条3項
検査証とともに特定機械等を譲渡し貸与した40条2項
ボイラーその他の機械等の定期的な自主検査、記録の保存45条1項 2項
安全衛生教育の実施59条1項 2項
就業制限業務に無免許者を就かせる61条2項
健康診断、特殊健康診断の実施66条1項~3項
健康診断の記録66条の3
健康診断の通知66条の6
長時間労働者に対する医師の健康診断66条の8の2
機械等で危険な作業を必要とする場合の届出88条1項~4項
労働者への法令の周知101条
安全衛生に関する書類の保存103条

事業所ごとの配置基準や健康に関する規定が確認できます。

(2)役所からの命令又は指示に違反した

都道府県労働局長や労働基準監督署長から措置命令を受けることがあります。

その指示や命令を無視した場合に50万円以下の罰金刑を受ける可能性があります。確認しましょう。

違反行為該当条文

労働基準監督署長により増員又は解任命令

・安全管理者

・衛生管理者

・元方安全衛生管理者

11条2項

12条2項

15条の2 2項

都道府県労働局長による作業環境測定の実施命令等65条5項
都道府県労働局長による臨時健康診断の実施命令等66条4項
都道府県労働局長等による作業や使用停止命令98条2項
都道府県労働局長等による講習受講命令99条2項

(3)立入検査等に協力しなかった

労働基準監督官は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、事業場に立ち入り、関係者に質問し、帳簿、書類その他の物件を検査し、若しくは作業環境測定を行い、又は検査に必要な限度において無償で製品、原材料若しくは器具を収去することができます。

こういった調査等に協力しないと罰則を受ける可能性がある、という関係性です。

違反行為該当条文
労働基準監督官による立入検査等への協力91条1項2項
産業安全専門官又は労働衛生専門官による立入検査等への協力94条1項
産業医の選任、健康管理の措置13条

(4)報告をしない又は虚偽の報告、出頭しなかった 

労働安全衛生法では労働災害防止のために報告が義務付けられていることがあります。

それら報告をしない、虚偽の届出、出頭命令を無視した場合に罰金刑の対象です。

違反行為該当条文
厚生労働大臣等による必要事項の報告、出頭命令101条1項
労働基準監督官による必要事項の報告、出頭命令101条3項

両罰規定   ~122条~

労働安全衛生法では両罰規定というものが122条に定められています。
第百二十二条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、第百十六条、第百十七条、第百十九条又は第百二十条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。

 
これは行為者以外にも管理監督責任の一貫として、法人にも罰則を与えるという趣旨です。法人は懲役が馴染まないので罰金になります。
 
この両罰規定の対象となる従業員の罰則を確認しましょう。
違反行為該当条文
黄燐マッチ等の危険な成分が含有した物を製造、輸入、譲渡、提供、使用する55条
従業員が6ヶ月の懲役又は50万円以下の罰金に該当する行為をした119条
従業員が50万円以下の罰金に該当する行為をした120条

まさにこのコンテンツで記載した行為が該当し、個人だけではなく法人も罰金刑を課せられる可能性があるということです。

ちなにみ両罰規定を定めた122条にある第百十六条、第百十七条の違反行為の主体は建設業者になることは基本的にはないため説明を省略しました。

まとめ

労働安全衛生法の罰則についてまとめました。
 
罰則を受けないにしても、使用停止命令や立入禁止などの行政的な措置を受けることも多いのが労働安全衛生法の特徴です。
 
その行政処分を無視すると罰則の可能性が高まります。
 
労働安全衛生法違反にならないよう、ご注意ください。