令和7年1月31日に関東地方整備局からPanasonicの関連会社に対して営業停止処分をした旨のプレスリリースがありました。
またパナソニック ホールディングス株式会社のHP上にも、関東地方整備局の管轄以外の関連会社も監督処分を受けたことを公表しております。概要は施工管理技士等の受験要件である実務経験不足を端緒とした同様事例を原因とする過去に処分を受けたとのことです。
なぜ大手企業がこのように処分を受けることが起きたのでしょうか。
そこでこの記事では監督処分の原因となった概要とその背景について建設業法に特化した行政書士の私の推測も交えてお話ししたいと思います。
どんな事件だった?
パナソニックグループは、建設業法に違反し、国土交通省および許可権者から監督処分を受けました。
具体的には次のことが原因です。
・資格要件を満たさない者を工事現場の主任技術者や監理技術者として配置していたこと ・営業所の専任技術者として資格要件を満たさない者を配置していたこと ・所定の実務経験に満たない社員が国家資格を不正に取得していたこと。 ・複数の工事現場において現場配置技術者の不設置が確認されたこと。 |
なぜ、こういったことが起きたのか、この処分の背景を理解するためには建設業法を理解しないといけません。
まず会社が建設業許可を取得・維持するためには営業所技術者が必要です。その営業所技術者として認められるためには一定年数以上の実務経験や資格が必要です。
また建設業許可を受けた業種の請負工事の現場には営業所技術者とは別に配置技術者という現場の技術者が必要です。配置技術者になるためには工事現場の規模にもより代わり、有資格者や監理技術者を配置しないといけません。
上述した営業所技術者と配置技術者と認められるための実務経験や必要な資格は概ね同じものです。つまり営業所技術者になれる資格であれば配置技術者になれるという大体のイコール関係があるということです。つまり規模が大きな会社からすれば、営業所技術者と配置技術者になれる技術者は1人でも多く雇用しておきたいと考えます。
その認められる資格の中でも1番ポピュラーなものが施工管理技士という建設業法上の国家資格です。
施工管理技士は複数の種類があり2級と1級に分けられており、1級が上位の資格になります。その施工管理技士の受験をするためには一定年数以上の実務経験が必要でした(今は1次検定であれば誰でも受けられます)
その実務経験を所属する会社が証明することで受験資格があると判断され施工管理技士の試験に臨むことができていたということです。
実務経験の証明は何が必要?
証明であれば、一般的な感覚として何かしらの証明資料が必要なのでは?と思うと思いますが、施工管理技士試験の受験資格の実務経験証明書では特に何かを添付する必要はありません。
しかも過去に在籍していた会社の実務経験も現在在籍している会社が証明します。
となると配置技術者をたくさん雇用しておきたい会社はどうなるか・・・ということがことの原因と言えるでしょう。(虚偽ではないにしても認識の相違という形でジャッジが甘くなってしまう等)
ちなみに、今現在も施工管理技士の実務経験の証明資料は特に求められておりませんが、このようなセンセーショナルなことが起きれば審査が厳しくなるのは世の常なので注意が必要です。
また監理技術者という特定建設業許可が必要な工事現場に配置する配置技術者も場合によっては実務経験が必要ですが、これも過去は証明資料が必要ありませんでした。今は必ず確認資料を求められますし、会社の責任者宛に書類の内容は事実に相違がないか確認の連絡が入るので厳しくなったといえます。
処分内容を確認する
今回の事件では受験資格の実務経験を満たせていないのに受験させたという虚偽の証明行為がクローズアップされています。それもグループ会社の組織ぐるみで長期間行っていたということで社会的な信用や大企業のコンプライアンスへの取組姿勢がショッキングに移ったといえるでしょう。
しかし監督処分という考えで見たら、論点が変わってます。
あくまでもそもそも受験要件を満たせていない者が試験に合格して外形上有資格者になって営業所技術者や配置技術者になっていたことが、建設業法上の配置義務や許可要件を満たせていないということが監督処分の原因ですね。
逆に言えば監督処分で済んで良かったとも考えられます。なぜか。
それは主任技術者の配置義務違反は罰金刑なども可能性的にはあり得るからです。もし悪質だと判断され罰金刑を会社が受ければ許可の欠格要件に該当して向こう5年間は建設業許可を取れなくなります。
もちろん受験者本人にも合格の取り消しや3年以内の再受験禁止といった不利益処分はありますが、会社単位では非常にリスキーな行為だったと言えます。営業停止処分以上に厳しい処分(建設業許可の取り消し)を受ける可能性があったことはコンプライアンスを担当されるかたは強く認識しましょう。
まとめ
Panasonicグループは全体で16社が処分を受けたと報道発表がありました。
監督処分の原因は建設業法違反に起因するもので、資格要件を満たさない者の配置などでした。
許可会社は工事現場ごとに技術者を配置しないといけないため、大きな会社になればなるほど1人でも多く配置技術者になれる者を雇用しておきたいという心理がはたらきます。
配置技術者を増やすために施工管理技士を多く抱えようと受験要件として実務経験証明が正しく出来なかったため、合格の取消(返納)と連鎖し、配置技術者を適正に配置できていなかったと監督処分へと繋がりました。
この主任技術者等の配置技術者を適切に配置しない場合のペナルティは最悪罰金刑です。建設業法を根拠として罰金刑を受けると許可の取消となります。
皆様におかれましたては、実務経験を証明する担当者に定期的なコンプライアンス講習を開催して建設業法を正しく運用することが出来ているか定期的にご確認ください。
弊所でも施工管理技士や監理技術者の実務経験証明が正しく行うための勉強会の講師派遣業務は承っておりますのでご関心があればお問い合わせください。