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横浜の杭打ちデータ改ざん問題
昨年、横浜市のマンションが傾いた問題で、国土交通省は2016年1月13日に建設業法に基づき三井住友建設などに対して業務改善命令を出すとともに行政処分を下しました。
業務改善命令の内容は杭打ちのデータが偽装されても真偽が分からず、正確性を確認しない施工体制や管理体制への改善命令です。
行政処分を下された会社と処分内容は以下の通りです。
・三井住友建設・・・国土交通省発注の工事の指名停止1ヶ月間
・日立ハイテクノロジー・・・営業停止15日間
・旭化成建材・・・営業停止15日間
三井住友建設が元請、日立ハイテクノロジーが一次下請け、旭化成建材が二次下請けという関係です。
建設業法では元請に対しては厳しく義務を課しており、事件を起こしたことに対する責任は重く一番厳しい処分となっています。
処分の根拠は何?
事業所に処分を下すには必ず根拠となる法律が必要です。
なんとなくでは行政は不利益(罰則)を課すことはできません。ニュースを見ていると杭打ちデータを偽装したから処分を受けたともとれますが、杭打ちデータを偽装したことを建設業法の根拠として今回の処分が下されたわけではありません。
今回の処分の根拠は次の通りです。
この2点です。
1つずつ確認しましょう。
①下請け工事を一括して丸投げしたこと
建設業法では発注者から直接請け負った工事を元請業者が下請け業者に一括して丸投げすることを禁止しています。1次下請けから2次下請けに丸投げすることも当然禁止されています
理由は責任の所在が不明確になることや実際に工事をしない仲介業者などを排除するためです。
今回の事件は一次下請けである日立ハイテクノロジーが受注した「くい打ち工事」を二次下請けである旭化成建材に丸投げしたことが一括下請け禁止の規定に抵触しました。
二次下請けの完成検査や計画書を一次下請けが行う義務があったにもかかわらず、行わなかったことが問題だったのです。
一括下請け禁止について詳しく知りたいかたはこちらの『建設業法で一括下請が禁止されている理由とその基準と例外規定』をご覧ください。
②主任技術者の配置義務を守らなかったこと
建設業法では一定以上の金額の工事を請負う場合には、現場に必ず専任で主任技術者を配置しなくてはいけないとあります。
専任とは工事の現場に必ず常駐しなくてはいけないという意味です。その現場の工事が終わるまでは他の工事現場で技術者はしてはいけません。複数の工事現場の兼務が禁止されます。
日立ハイテクノロジーと旭化成建材は主任技術者の配置義務違反をしました。
今回の杭打ちデータの工事現場は主任技術者が常駐しなくてはいけない現場でした。しかし主任技術者は同時に他の工事現場の技術者も兼ねていました。
主任技術者の配置義務違反になります。
主任技術者の専任性については次のリンクからご確認ください。
元請の責任の方が重い
元請の三井住友建設は下請けの指導や管理が義務付けられています。
元請業者が上記①②と建設業法違反を認識しながら是正指導をしなかったことは重大な義務違反です。
ニュースで三井住友建設の副社長が旭化成建材に裏切られたと言っていましたが、元請業者は知りませんでしたではすまされないのが建設業法です。
まとめ
以上が横浜マンション問題のニュースからみる建設業法でした。
横浜のマンションの住民の方は大変な思いをされていると存じます。マンションが傾いた原因や住民への補償を始め、まだ明らかになっていませんが少しでも納得できるものが提示されればと思います。
建設業は大事な産業です。そのため、国は許可制というハードルを課して事業所を選別しています。今回の事件をきっかけに建設業法を順守していく風潮がさらに高まればと個人的に願ってやみません。
建設業法違反の罰則については『建設業法違反の罰則|これをしたら罰金、懲役、過料のまとめ』でお調べください。