建設業は現場への移動が多い業種です。会社から現場が離れていれば移動だけでも結構な時間になりますよね。
その移動時間は労働時間にあたらないのでしょうか。もし労働時間に該当するのであれば給料が発生しますし、残業代の計算にも含めないといけません。
また2024年から建設業も時間外労働の上限規制が始まりました。ただでさえ現場で働ける時間に制限がかかるのに、移動時間も労働時間にカウントしするとなると大変ですよね。
結論から言えば移動時間そのものが労働時間になる場合とそうでない場合があります。
そこで建設業の現場間の移動時間が労働時間になるのか、会社から見たらお給料を支払わないといけないのかにつき判断基準をまとめます。
全部が全部その基準でやれば大丈夫とは言えないのですが、参考にはなるはずです。
Contents
労働時間の定義
移動時間でも給料が発生する=その時間は労働時間という関係性が大前提にあります。
では労働時間とはどういう時間を指すのでしょうか。判例にて確認しましょう。
労働基準法上の労働時間とは「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」 (最高裁判決 平成12年3月9日)
つまり会社や上司に業務の命令を受けて業務に取り組んでいる時間が労働時間です。
これは口頭で指示があった場合に限りません。黙示の指示やいつからかそれが当然に行われるようになっていた業務も労働時間と解されています。
これらは、就業規則等の規定に左右されず、客観的に見て労働者の行為が使用者から義務付けられたものと言えるか等により個別で判断されるものです。
つまりこうすれば絶対に労働時間にはならないといった基準ではなくケースバイケースで移動時間が労働時間にあたるかどうかという判断が必要になります。
移動時間が労働時間になる場合とは
労働時間に該当するかどうかの判断基準は会社や上司による指揮命令の有無でした。
ということは、その移動は会社や上司が指示をしたのか?って観点が重要だということになりますね。
つまり、会社が事務所に帰ってきて機材を片付けをするように指示をしたり、現場までの移動中に次の工事の手順や配置の話をしていれば労働時間に該当する可能性が高いと言うことです。
ここで移動が労働時間に該当する可能性が高いケースをまとめます。
イメージできますでしょうか。
移動時間が労働時間にならない場合とは
今までは現場間の移動のお話でしたが、移動時間の中には通勤時間があります。
この通勤についても確認しましょう。
通勤とは自宅と就業場所の往復です。
通勤時間は労働時間とは異なりお給料が発生しません。なぜなら通勤時間は会社や上司からの指揮命令下にあるわけではないからです。スマホを見てても音楽を聞いていても怒られませんよね。
つまり事務所から現場までの移動が通勤時間と実態上、変わらないということであればお給料は発生しません。
この考え方が移動時間中、給料が発生するかしないかの判断として重要です。
会社の指示で移動手段を細かく定めないで直行直帰を認めていたり、会社は単なる待ち合わせ場所にして移動中はスマホを見ていても寝ていても問題なく基本自由なのであれば、実態上その移動は通勤だとと考えられるでしょう。
以上踏まえ、移動が労働時間に該当せず、通勤時間と同様の移動だと判断される可能性が高いケースをまとめます。
現場と現場の間の移動は?
移動時間が労働時間に該当するかどうかは会社や上司の指揮命令下にあり自由な時間にあたるかどうかで判断するとのことでした。
では就業時間中の現場間の移動時間はどうでしょうか。現場間の移動も通勤と同じように自由にしたら労働時間に該当しないという考えでしょうか。
これも個別ケースによるとは思いますが、基本的には労働時間と考えられています。
シンプルに考えれば、その日の労働が始まる始業時刻から終業時刻までは労働時間です。
休憩時間を除き労働時間だと考えれば現場間の移動は労働時間と解するということでいいでしょう。
もし現場間の時間を労働時間にしない場合には、その時間を休憩時間にするといったケースが考えられますが、これは会社側から移動手段につき指示しないことが前提になるので中々難しいと個人的には考えます。
まとめ
移動時間も給料が発生するかどうかは、その移動が会社や上司の指揮命令下にある労働時間かどうかで判断します。
会社から自社の作業場に来るようにいわれて、そこから機材を積み現場に移動するのであれば、作業場につくまでが通勤で、作業に取り掛かった時点で労働時間は開始されます。つまりそこからの移動労働時間に該当するだろうという考えです。
対して、前日の時点で従業員に明日の現場は何時にここでと伝えた程度で直行直帰を認めているのであれば、工事現場までの移動時間が出勤になり労働時間にはならないでしょう。通勤時間と同じだとみなされ、業務につかなくてもいい自由な時間と判断される可能性があるからです。
会社側からすれば、ただ移動するだけの時間は労働時間にしたくないと思いますので、前日の時点で現場の機材の準備や指示はは済ませておくことが大事だと言えるでしょう。
実態はそんな風にはいかない、といったご意見もあると思いますがこの記事でまとめた判断基準は判例で示されたものです。よってもし従業員がこの移動は労働時間に該当する!といって過去の残業代金を支払うように訴訟を起こし、言い分が通れば最大過去3年遡って未払分を支払わなくてはなりません。
ご参考までに。
お疲れ様でした。