建設業許可の要件には常勤役員等がいることと定められています。
その者が建設業の役員として5年以上経管があることが求められますが、確自治体の手引には次のような記載があります。
「常勤役員等(経管)」とは、法人である場合においてはその役員のうち常勤であるもの、個人である場合にはその者又はその支配人をいい、「役員」とは、業務を執行する社員、取締役、執行役をいいます。
ここにある執行役。執行役が何かご理解されておりますでしょうか。
また執行役に似た言葉の中に執行役員がありますが、全く異なります。
執行役とは何なのか、一般的な定義と建設業許可を取得する観点でまとめてみましたのでご確認ください。
執行役とは
執行役とは会社法上、定められている指名委員会等設置会社にて設置が義務付けられている取締役の役職の一つです。
取締役会から委任された業務執行の決定、業務執行が主な役割になり、任期は任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までと決まっています。
このように執行役を理解するにあたっては指名委員会等設置会社の概要を把握すことが重要です。
定義を確認しましょう。
指名委員会等設置会社とは
指名委員会等設置会社とは会社法400条以下に定められており、次の3つの委員会を置く会社を指します。
指名委員会
監査委員会
報酬委員会
各委員会は各自、次のような役割を持っています。
これら各委員会のメンバーは3人以上と定められ、取締役会が取締役の中から選定します。そのうちの過半数は社外取締役であること求められていることが特徴です。
これら委員会を設置している会社は登記が必要で委員会のメンバーも登記簿上で確認出来ます。
一般的に指名委員会等設置会社の仕組みを導入している会社は資本金が5億円以上ある大会社や公開会社といった会計監査人を置くことが法律上義務付けられている規模の大きい会社です。
なぜかと言うと、指名委員会等設置会社として登記するためには取締役会の設置(取締役が3名以上+監査役1名以上)が必須で、さらに社外取締役の選任と会計監査人が必要なので、必然的に大規模な会社に定められるためだとお考えください。
ちなみに委員会は取締役から構成されるとありますが、監査委員会のみ、委員になるための条件が限定的になります。取締役、執行役の職務執行を監査するため、監査する側とされる側にパワーバランスがあると職務を行えないからです。
なぜこのような仕組みがある?
指名委員会等設置会社は大会社や公開会社が取り入れていることが一般的だと書きました。
これは会社の規模が大きくなると役員も人数が多くなり迅速な意思決定、業務執行が遅くなるからです。また大規模がゆえに派閥などがあれば、それらを基準とした会社内部の意思決定や判断を行う体制になりかねません。
そうすると株主の保護にならないですよね。
そこで迅速な意思決定、経営の透明性の向上、監督機能の強化を図るために指名委員会等設置会社の仕組みがあるということです。
取締役会は業務執行に特化した執行役を選任し、業務執行を定めて委任します。
そうすることで、取締役会は経営方針の策定や株主総会の議案の決定など、重要事項に専念することが可能になり、執行役は迅速に業務執行が可能になることが可能です。
これは迅速な意思決定を表しています。
各委員会は3名以上で構成され、取締役から選定されますが、過半数は社外取締役でないといけません。社外取締役が取締役の候補者リストの議案の作成、報酬額の決定、執行部分の監査を行うので監督機能の強化が期待出来ます。さらに各委員会の審議内容は上場会社であればコーポレート・ガバナンスに関する報告書の提出義務も課せられているため確認することが可能です。
つまりこれらの取組は経営の透明性の向上に繋がると言えるでしょう
以上、指名委員会等設置会社は、これらの目的を達成するための組織形態として機能することが期待されています。
指名委員会等設置会社は経営者の監督と業務執行を分離した組織形態を持つ株式会社のことだとお考えください。
また指名委員会等設置会社の特徴として他の株式会社とは違い、取締役が原則業務執行できない点です。
つまり、指名委員会等設置会社の取締役は、原則として業務の執行をすることができず、その代わりに、取締役会が選任する代表執行役その他の執行役が業務の執行等を行う形となっています。
取締役ではなく執行役が日常用語でいう「経営陣」に該当し、代表執行役が「経営者」に該当するということです。
執行役と執行役員との違い
執行役は執行役員と似た名前ですが、以下の点で異なります。
表にまとめましたのでご確認ください。
違いを理解するためには太字が特に重要です。
建設業許可と執行役の関係は?
あくまで建設業許可を取得するにあたってですが、とりわけ執行役と指名委員会等設置会社以外の取締役を区別する必要はありません。
指名委員会等設置会社として登記がされていないと、執行役としての経験が使えないという関係性にすぎず、取締役の経験と区別する必要がないからです。
強いて言えば、常勤役員の経験を常勤であったことを求める自治体があるので、執行役であれば通常常勤と考えられるので常勤性証明が省略出来るかどうかくらいだと個人的には考えます。
また執行役員と執行役は異なりますが、建設業法上、常勤役員等を定める建設業法7条第1号イの(2)該当が一般的には執行役員の経験として定めらているものです。
上記表では執行役員は執行役と異なることだけ書いておりますが、ちゃんとした形、つまり建設業法上定める形で執行役員としての経験を積めば、役員の経験として認められます。
詳しくはこの記事内にてご確認ください。
まとめ
建設業法定める、役員の定義に含まれる執行役とは何かについて説明しました。
執行役とは指名委員会等設置会社にて、取締役会から業務執行に関して委任を受けた取締役を指します。
指名委員会等設置会社は公開会社や大会社など比較的規模の大きい会社が導入する仕組みで、迅速な意思決定、透明性の向上、監督機能の強化を通じて株主を保護する仕組です。
この仕組は、こと建設業許可取得という点に関しては執行役と通常の役員としての経験とを差別化する必要はありません。証明資料も原則同じです。
また似た言葉には執行役員がありますが、制度としては全く異なるものです。
しかし建設業法では執行役員の経験も条件を満たせば経験経験として認められます。
つまり次の関係性といえるでしょう。
執行役 ⇒ 認められる・登記簿で経験証明
執行役員 ⇒ 条件付きで認められる・社内資料で経験証明
お疲れ様でした。