実務経験を使って建設業許可を取得する場合には、なにかと難易度が上がりがちです。

その理由の一つとして「申請先の自治体によって実務経験のルールが異なること」があげられます。

それが手引きに明確に書いてあればいいのですが、ある程度審査が進んだ段階でローカルルールが判明したりすると結構厄介です。

実務経験のローカルルールの例えをあげれば東京都の場合、実務経験証明に使う資料は「3か月に1件」提出する必要がありますが、千葉県は「年に1件」です。

「では、少なくてすむ千葉県の方が簡単なのでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実務の現場では意外にそうではありません。

個人的に「千葉県の審査は癖が強いなー」と思う部分を、実務家の備忘録も兼ねてまとめます。

千葉県の実務経験証明、3つの「癖」

大きく次の3つが該当します。

 

1. 一年に1件の考え方

2. 土木事務所と本庁で保管している書類が異なる

3. 他県は申立書、千葉県は「情報開示請求」が必要

 

それぞれ確認していきましょう。

① 「一年に1件」の考え方

この記事を書いている現在、千葉県の無許可業者における実務経験証明の確認書類(建設工事の注文書や請負契約書など)は「年に1件」で足ります。

実務経験証明には、1年に1行で工事実績を記載します。「令和7年の1月〜12月に請けた工事はこれです」といった形です。

千葉県の場合、令和7年の1月〜12月に請けた実績は「何月の工事でもいいので」1件添付すれば12ヶ月分として認められます。つまり、令和7年5月の実績を添付しても、1月から12月までの通年の実績があるという扱いです(もちろん、実際に通年で実績がある前提です)。

これが他の自治体だと、上記のケースでは「令和7年は5月から実績がある」と判断され、期間が削られることがあります。

この取扱いに関しては、申請者側としては困るルールではないのですが、実務経験期間を充足しているか正確に判断するためには、把握しておかなければならないので「審査の癖」として残しておきます。

② 土木事務所と本庁で保管している書類が異なる

千葉県の建設業許可申請書は、市区町村ごとに割り振られた管轄の「土木事務所」を経由して「県庁」へと届く順序になりそれぞれで審査しています。

語弊を恐れずに言えば、土木事務所では形式的な審査を行い、県庁で中身をしっかり審査するといった棲み分けです。

ここで生じる問題が「土木事務所と県庁で保有しているデータに差が生じている」という点です。

基本的に行政は、許認可に関わる決裁文書(公文書)は5年保管すれば良いとされています。しかしこれは最低基準であって、それ以上の期間保管していても問題ありません。

これが実務経験証明にどう関係するのか。

千葉県では、過去に建設業許可業者に在籍していた期間は「実務経験があった」とみなされ、請負契約書などの確認資料の提出が免除されます(例:過去の許可証の写しと厚生年金記録があればOK)。

しかし、過去に在籍していた会社から許可証の写しを借りるのはハードルが高いケースも多々あります。その際、行政機関が保有している過去のデータで証明できないかを検討します。行政側にデータが残っていれば、手元に許可証がなくても証明可能という取扱いがあるからです。

ここで千葉県のケースに戻ります。

「土木事務所が保管している書類では許可情報が確認できるのに、県庁のデータでは確認できない」といった事態が起こるわけです。

しかも千葉県内に土木事務所は複数ありますが、書類の保管ルールは統一されていないように思います。なので「千葉土木事務所は古い情報でも保管しているが、成田土木事務所は保管していない」といったケースも実際に存在するということです。

私の経験則では、既存の許可業者であれば情報が古くなっても保管している傾向がありますが、廃業した業者の場合、廃業処分を出してから5年経過すると廃棄する傾向が土木事務所にはあるようです。

③ 他県は申立書、千葉県は「情報開示請求」が必要

②のケース(土木事務所にはデータがあるが、県庁にはない場合)に、事務的に追加で発生する恐ろしい作業があります。

それは、土木事務所に対して「情報開示請求」をすることです…

この記事を書いている時点での県庁のスタンスは「完全な書面審査」のため、いくら土木事務所が過去の書類を保管していても、申請書に添付されていなければ「実務経験の確認資料が不足している」と判断されてしまいます。

いや、土木事務所が形式的な審査をする際に実務経験の確認資料なんて必ず確認していますよね。それが県庁まで届いたということは、土木事務所はこちら側が確認資料を用意しなくても許可業者の実績を活用していると判断してるわけです。

なのに情報開示請求をしなさいと?

行政書士的には「同じ千葉県知事許可の管轄なんだから、庁内で電話して確認してOKにして欲しい!」と強く思うのですが、そうはいかないようです。

しかも、情報開示請求の対象書類が許可処分の履歴が確認できる台帳ならまだしも、私が担当した案件では「使用したい期間の許可申請書の表紙(受付印あり)を情報開示請求して添付して欲しい」とのことでした。

「10年以上前の申請書の表紙なんて土木事務所が保管しているのか……?」と冷や汗をかきましたが、どうやら保管されていたようで事なきを得ました。しかし、こんなものが当然にあるとは思えないため、次回以降の申請では事前の綿密な確認が必須だと強く思い知らされました。

ちなみに、他県が保有している許可情報を確認資料として使いたい場合「申立書」を作成します。

「他県の担当者の名前、連絡先を書き、この業者の許可情報に相違はないことを証明する」といった一筆を添えます。

であれば、同じ千葉県内の土木事務所が保有するデータを使う場合も「同じように申立書で良くないですか?」と聞いたところ、それは認めないと言われました。

中々、癖があると思いませんか?

まとめ

千葉県の実務経験証明を使用して許可を取得する場合についてまとめました。

私は、申請先に独自の癖があること自体は否定しません。その「癖」のおかげで、一見難しそうな許可が取れることもあるからです。

今回、備忘録も兼ねて殴り書きっぽく書いたのは、あくまで「この記事を書いた時点での取扱い」であり「手引きには決して書いていないこと」だからです。

私はお客様の許可を取るために、代替手段を何個も提案するスタンスなので、手引きに書いてないイレギュラーな土俵で審査されることがよくあります。結果的に申請して取り下げるレベルの失敗をしたことはありませんが、次回以降のご相談があった際に「このルートをうまく利用したい」と思う部分と「今回はたまたま上手くいっただけだから距離を置いておきたい」という気持ちが交錯し、このような記事を書きました。

実際に審査をされた担当者の方も「これは本来のやり方ではない」と強く仰っていたので、あくまで参考データ的な位置付けで皆様のお役に立てたら幸いです。

そして、このような独特の癖を攻略することに「やりがい」を感じている自分もいるので、愚痴っぽく見えてしまっても、公務員の皆様には感謝の気持ちは本当に持っています。いつもありがとうございます。(私のホームページなど見ているわけないですね。笑)