許可業者は許可を受けている業種の工事現場には、請負責任の一環として現場ごとに直接雇用の技術者を配置しないといけません。具体的には主任技術者、監理技術者がそれで配置技術者と呼ばれます。
元請下請、全ての工事現場に専任技術者相当の能力を有する主任技術者を配置する必要がありますが、小規模な事業者だと主任技術者等の要件を満たす技術者を複数人雇用していません。労働人口が減少していく中でこの規定を硬直的に運用することは難しいからか、工事現場の請負金額が一定額以上にならないと現場に専任性が発生しない決まりになっています。専任性とはその工事現場の専属の技術者で、その工事が施工されている間は他の配置技術者になれないことです。その専任性が発生する請負金額の基準が税込4,500万円です。(令和7年2月より4,000万円から改正されました)
言い換えると4,500万円未満の現場であれば専任性が発生しないため、複数現場の配置技術者になれます。掛け持ちの数に上限規制はありませんが、請負責任を果たせることが条件ですね。
(複数現場を兼務する場合の話は主任技術者が複数現場を兼務できる請負金額はいくら?【建設業許可】
ただこれら配置技術者は原則、建設業の許可要件である専任技術者とは別の人にしないといけません。なぜなら専任技術者とは営業所で働く請負契約の責任者であり、営業所に専任性が発生するからです。例外的に現場から近くていつでも連絡できる体制で工事現場に専任性が発生しないん4500万円未満の現場だったら配置技術者になれるというルールがあります。(国交省の資料はこちら)
ただこのルールは許可行政庁によってどこまでが近接しているのかといった基準はバラバラで、私たち行政書士もどのように答えていいか悩みどころでした。
この主任技術者や監理技術者の配置ルールが令和6年12月から改正されました。また本来、専任技術者は現場に行くことがない技術者でしたが今回の法改正で営業所技術者という用語で条件付きで現場の配置技術者になれることも明記されました。
建設業許可業者さまにおかれましては重要なことが書かれていますので、御覧ください。
建設業許可業者さまにおかれましては重要なことが書かれていますので、御覧ください。
Contents
現場の専任の規制の合理化が肝
今回説明をする法改正のテーマは配置技術者の専任の規制の合理化です。
専任性に関して原則的な請負金額の基準があるが、条件を満たせば原則以上の請負金額の現場であっても特例として配置技術者として認められる者を増やした、ということが今回の法改正の趣旨なんです。
冒頭でも触れましたが、令和7年2月から専門工事であれば専任性が生じる請負金額が4000万円から4500万円に引き上げられました。
この4,500万円が原則の専任性が発生する金額の基準です。
ではどんな特例基準が追加されたのか。
それが次の2つ。
これら2つの基準の説明をする前に営業所技術者という言葉につき説明します。
営業所技術者とは
令和6年12月に施行される法改正で営業所技術者という概念が加わりました。
具体的には一般建設業許可の基準が書かれている第7条2号が次のようなっています。
二 その営業所ごとに、営業所技術者(建設工事の請負契約の締結及び履行の業務に関する技術上の管理をつかさどる者であつて、次のいずれかに該当する者をいう。〜省略〜)を専任の者として置く者であること。
簡単にいうと、専任技術者が営業所技術者という言葉に変更されたということでしょう。
アンダーバーが引かれている、次のいずれかとは実務経験が10年や資格者などにあたり今まで認識していた専任技術者の要件が確認できます。
着目すべきはカッコの中の赤文字です。建設工事の請負契約の締結及び履行の業務に関する技術上の管理をつかさどる者。
ここが改正ポイントです。
改正前の専任技術者は請負契約の締結の責任者でしたが、法改正によりそれが明記され、加えて履行の業務に関する技術上の管理をつかさどる者も記載されました。
同様に特定建設業許可の基準が書かれている15条2号も改正されています。
二 その営業所ごとに、特定営業所技術者(建設工事の請負契約の締結及び履行の業務に関する技術上の管理をつかさどる者であつて、次のいずれかに該当する者をいう。〜省略〜)を専任の者として置く者であること
一般の専任技術者のことを営業所技術者と呼び、対して特定の専任技術者のことを特定営業所技術者と呼び分けていることが確認できますでしょうか。
改正前 | 改正後 |
---|---|
一般・専任技術者 | 営業所技術者 |
特定・専任技術者 | 特定営業所技術者 |
そこ以外は同じですね。つまり括弧の中が今回の改正を理解するにあたって大事です。
元々、請負契約の締結責任者であったことから、改正ポイントは履行の業務に関する技術上の管理をつかさどる者とは何かを確認しましょう。
履行の業務に関する技術上の管理をつかさどる者とは
冒頭でも触れましたが、許可を受けている業種の請負現場には主任技術者や監理技術者などを配置することが必要です。これら配置技術者と専任技術者は原則は兼務が出来ないが、営業所と近接していて常に営業所と連絡が取れるのあれば専任性が発生しない金額未満であれば例外体に認められていました。
しかし労働人口が減少する中、専任技術者相当の技術者を現場を配置したいというニーズは高く、条件つきであれば認めてもいいのではないか?ということで法改正により特例が設けられました。
つまり、この括弧書きに履行の業務に関する技術上の管理をつかさどる者と記載し、請負契約の責任者だけではなく、現場技術者としての役割を認めるようにしたというところでしょう。
以上が営業所専任技術者の説明でした。
専任性の特例基準を確認する
では今回の特例基準についてお話をします。
理解するにあたって2段階で考えてください。冒頭で次のように記載しました。
①は通常の配置技術者が専任性が生じる原則の請負代金額以上の請負現場を兼務できるための特例基準。つまり専任技術者以外の主任技術者や監理技術者です。
②は営業所技術者(専任技術者)が専任性が生じる原則の請負代金額以上の請負現場を兼務できるために特例基準。
①は配置技術者で②は営業所技術者になりどちらに該当するのかにより特例の基準が異なります。
それぞれの特例基準を確認しましょう。
①配置技術者が原則超の請負金額でも現場を兼務できる特例基準
まず配置技術者が原則の金額以上の建設現場に配置出来る基準を確認しましょう。
それは改正後の建設業法26条3項一号に、専任の配置技術者を配置しなくてもよいといった除外規定で記載されています。
3 公共性のある施設若しくは工作物又は多数の者が利用する施設若しくは工作物に関する重要な建設工事で政令で定めるものについては、前二項の規定により置かなければならない主任技術者又は監理技術者は、工事現場ごとに、専任の者でなければならない。ただし、次に掲げる主任技術者又は監理技術者については、この限りでない。一 当該建設工事が次のイからハまでに掲げる要件のいずれにも該当する場合における主任技術者又は監理技術者イ 当該建設工事の請負代金の額が政令で定める金額未満となるものであること。ロ 当該建設工事の工事現場間の移動時間又は連絡方法その他の当該工事現場の施工体制の確保のために必要な事項に関し国土交通省令で定める要件に適合するものであること。ハ 主任技術者又は監理技術者が当該建設工事の工事現場の状況の確認その他の当該工事現場に係る第二十六条の四第一項に規定する職務を情報通信技術を利用する方法により行うため必要な措置として国土交通省令で定めるものが講じられるものであること。
これが法律である建設業法です。
アンダーバーの部分を見ると政令や省令で定めると記載されています。法令と省令を確認して現時点では次の建設現場の全ての条件を満たす場合には専任性がなくなり、現場を兼務できるようになります。
以上です。
ICTの有効活用を行う計画書を作成・機器の導入をし、配置技術者と常時連絡を取れる者を現場に配置して金額的、地理的、現場数の条件を満たせば4,500万円以上の工事現場でも配置技術者に専任性は生じず現場を兼務できます。
②営業所技術者が配置技術者になる特例基準
旧専任技術者である営業所技術者が原則以上の請負金額の現場の配置技術者になるために特例条件を確認しましょう。
関係性としては、さきほど①の特例基準の説明の際にまとめた緑の見出しの括弧(◆配置技術者 兼務可能の特例条件◆)内に書かれている条件をベースに考えると理解しやすいと思います。
まずは法律を確認しましょう。
改正後の26条の5に次のように記載されています。
大事なところを赤文字で追ってください。
(営業所技術者等に関する主任技術者又は監理技術者の職務の特例)第二十六条の五 建設業者は、第二十六条第三項本文に規定する建設工事が次の各号に掲げる要件のいずれにも該当する場合には、第七条(第二号に係る部分に限る。)又は第十五条(第二号に係る部分に限る。)及び同項本文の規定にかかわらず、その営業所の営業所技術者又は特定営業所技術者について、営業所技術者にあつては第二十六条第一項の規定により当該工事現場に置かなければならない主任技術者の職務を、特定営業所技術者にあつては当該主任技術者又は同条第二項の規定により当該工事現場に置かなければならない監理技術者の職務を兼ねて行わせることができる。一 当該営業所において締結した請負契約に係る建設工事であること。二 当該建設工事の請負代金の額が政令で定める金額未満となるものであること。三 当該営業所と当該建設工事の工事現場との間の移動時間又は連絡方法その他の当該営業所の業務体制及び当該工事現場の施工体制の確保のために必要な事項に関し国土交通省令で定める要件に適合するものであること。四 営業所技術者又は特定営業所技術者が当該営業所及び当該建設工事の工事現場の状況の確認その他の当該営業所における建設工事の請負契約の締結及び履行の業務に関する技術上の管理に係る職務並びに当該工事現場に係る前条第一項に規定する職務(次項において「営業所職務等」という。)を情報通信技術を利用する方法により行うため必要な措置として国土交通省令で定めるものが講じられるものであること。2 前項の規定は、同項の工事現場の数が、営業所技術者又は特定営業所技術者が当該工事現場に係る主任技術者又は監理技術者の職務を兼ねて行つたとしても営業所職務等の適切な遂行に支障を生ずるおそれがないものとして政令で定める数を超えるときは、適用しない
アンダーバーにある5つの条件(一項の1号~4号&二項)を満たせば営業所技術者を現場に配置して良いということです。具
体的な基準は政令、省令に委任されていますね。
あてはめると次のようになります。
以上です。
主任技術者と営業所技術者の目立った違いは次の通りです。
①配置技術者 | ②営業所技術者 | |
---|---|---|
請負金額の上限 | 請負金額が1億円未満 (建築一式工事については2億円未満) | 請負金額が1億円未満 (建築一式工事については1億円未満) |
現場数の上限 | 2 | 1 |
措置・連絡を講じる者 | 建設現場 (一式工事は要実務経験1年以上) | 営業所及び工事現場 (一式工事は要実務経験1年以上) |
以上です。
営業所技術者の方が全体的に厳しいですよね。あくまでも請負契約の責任者であり、配置技術者としての職務は両立できるようにというところでご理解されるのがよろしいのではないでしょうか。
監理技術者の注意点!
特定建設業の許可が必要な現場においては監理技術者を配置する必要がありますが、この場合には監理技術者講習を受講していないといけません。
営業所技術者になるためだけであれば講習受講は審査時に見られませんので、講習の有効期限も含めて問題ないかご確認下さい。
まとめ
令和6年12月に法改正された現場の専任性基準の特例!営業所技術者につきまとめました。
急激な労働人口の減少、ictの発達により合理的な範囲内で配置技術者の基準が緩和(拡大?)されていっています。建設業者におかれましては多くの技術者を確保することは大変だと存じますので、法改正に則り特例をうまく活用できるように社内体制を整えていかれてください。
今回の記事の国土交通省のリーフレットです。
また別記事で情報通信機器の装置などの要件についても作成しようと思います。
国土交通省のガイドラインやマニュアルも改定されるの合わせてご確認ください。
お疲れ様でした。