建設業は、全産業の国内総生産・全産業就業者数の5~8%を占める地域の基幹産業です。
地方圏においては公共投資への依存度が高い地域もあり、公共工事の発注が減れば倒産する事業者が出てくることも考えられます。
また災害時には十分に建設業者が確保できていないと復興も進みません。災害が多い日本では有事に備え、常に建設業で就業する人数を確保して持続可能な産業にしないといけないといえます。
そんな重要な産業であるからこそ、国は建設業法を初めとする関係法令を制定、改正して問題点を解決していく義務があります。
しかし国(建設業を管轄する国土交通大臣)は実際の建設業に関して十分な知識があるわけではありません。
どのようにして国土交通大臣は問題点を探し、法改正の案を作成するのでしょうか。
その答えは審議会への諮問、意見聴取です。
審議会とは何でしょうか。
この記事では建設業と関係する審議会についてまとめました。
Contents
審議会とは
まず審議会の定義を確認しましょう。
審議会とは特定の分野やテーマについて、幅広い政策提言や議論を行うための主要な諮問機関です。
諮問する者は長官や大臣に該当して、その諮問内容に応じて審議会は調査、審議をして長に助言を行います。
審議会は法令に基づき設置されるもので、委員の人数や任期も法に定めなど細かく規定があり重要な行政機関と言えるでしょう。
建設業に関係する2つの審議会
建設業に関係する審議会は次の2つです。
それぞれ確認しましょう。
①社会資本整備審議会
社会資本整備審議会は国土交通大臣の諮問に応じて不動産業、宅地、住宅、建築、建築士及び官公庁施設に関する重要事項の調査審議、関係行政機関への意見が主な管轄事務です。
根拠法令は国家行政組織法第三条第二項の規程に基づく国道交通省設置法です。
国土交通省設置法 (第六条)本省に、次の審議会等を置く。・国土審議会・社会資本整備審議会・交通政策審議会・運輸審議会
また国土交通省設置法の第13条には次のような記載があります。
社会資本整備審議会は、次に掲げる事務をつかさどる。一 国土交通大臣の諮問に応じて不動産業、宅地、住宅、建築、建築士及び官公庁施設に関する重要事項を調査審議すること。
二 前号に規定する重要事項に関し、関係行政機関(不動産業及び宅地に関する事項にあっては国土交通大臣、官公庁施設に関する事項にあっては関係国家機関)に意見を述べること。
ポイントとしては国土交通大臣の諮問に応じることです。
つまり国土交通大臣が重要な所轄事務だと判断したものを専門家として調査を依頼し意見を述べることが役割といえます。
②中央建設業審議会
中央建設業審議会は建設業法34条以下に定められ、主な所轄事務は次の通りです。
(1)経営事項審査の項目と基準について(建設業法第27条の23第3項)* 公共工事を受注しようとする建設業者の経営の規模と経営状況を審査する経営事項審査において、その項目と基準の制定において意見を述べること。(2)建設工事の標準請負契約約款について(建設業法第34条第2項)* 公正な立場から、請負契約の当事者間の具体的な権利義務関係の内容を律するものとして標準請負契約約款を決定し、当事者にその採用を勧告すること。(3)工期に関する基準について(建設業法第34条第2項)* 著しく短い工期による請負契約の締結を禁止するため、工期に関する基準を作成し、請負契約の当事者に勧告する。(4)公共工事の入札・契約に関する「適正化指針」について(公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律第17条第5項)* 公共工事の入札・契約の適正化を図るための措置に関する指針である適正化指針の案の作成において意見を述べること。 等
建設業中央審議会の意見を聴いて、請負契約の標準約款の改正や所轄事務にかかわる建設業法が改正されるという流れです。
各審議会ともに国土交通省のHPで議事録が確認出来ます。
分科会、部会、委員会とは
審議会が法に定められ設置された諮問機関だということがわりました。
ご覧いただいた通り、重大な役割ですのでテーマが深くなれば深くなるほど、技術的要素が強ければ強いほど専門的な知識、が必要になります。
そこで審議会の下部組織として分科会、部会、委員会といったものがあります。
簡単に説明します。
1.分科会とは
分科会は、政令で設置することが定められている審議会の下部組織です。常設され、審議会と比べてより特定のテーマや分野に絞って詳細な議論を行います。
分科会での議論結果は審議会に報告され、審議会の最終答申や提言の全てまたは一部となります。
分科会を定める場合には政令で定めます。
例、 社会資本整備審議会令 第六条 審議会に、次の表の上欄に掲げる分科会を置き、これらの分科会の所掌事務は、審議会の所掌事務のうち、それぞれ同表の下欄に掲げるとおりとする。 公共用地分科会 ⇒ 土地収用法及び公共用地の取得に関する特別措置法の規定により審議会の権限に属させられた事項を処理すること。 産業分科会 ⇒ 建設業法の規定により審議会の権限に属させられた事項を処理すること。 |
2.部会とは
部会は審議会や分科会の下部組織にあたります。
審議会や分科会が取り扱うテーマのうち、さらに専門的・限定的な課題について議論する場です。審議会や分科会が調査する項目を部会に付託(頼んで任せる)することが内部の運営規則で定められていることが多いように感じます。
部会の根拠法令は分科会と同じく政令であったり、各審議会の運営規則に基づくことが一般的です。
例、 社会資本整備審議会令 第七条 審議会及び分科会は、その定めるところにより、部会を置くことができる。 2審議会に置かれる部会に属すべき委員等は、会長が指名する。 3分科会に置かれる部会に属すべき委員等は、当該分科会に属する委員等のうちから、分科会長が指名する。 4部会に、部会長を置き、当該部会に属する委員の互選により選任する。 5部会長は、当該部会の事務を掌理する。 6部会長に事故があるときは、当該部会に属する委員のうちから部会長があらかじめ指名する者が、その職務を代理する。 7審議会(分科会に置かれる部会にあっては、分科会。以下この項において同じ。)は、その定めるところにより、部会の議決をもって審議会の議決とすることができる。 |
3.委員会(小委員会)
委員会(小委員会)は部会のさらに下部組織として、特定のテーマについて集中した検討を行うことを目的に設置されるものだと言われています。
具体的な課題の検討や詳細な調査を行い、分科会や審議会に対して提言や報告を行います。法改正や制度変更に関する細かい課題についての議論が行われる場合が多いです。
委員会は部会の内部規則により設置することが一般的です。
ただし委員会とあっても法律に基づき設置する委員会もありそれとは全く異なるもので注意が必要です。例えば原子力規制委員会などがそれで、審議会の下部組織ではなく独立した行政機関です。
注意点
必ずしも分科会⇒部会⇒委員会の順番で設置されているわけではありません。
分科会は上述した通り、原則、政令で設置することが明記されております。
それに対して部会は任意に設置することが出来るというような記載で、委員会も任意規定です。よって審議会の直下に部会があることは一般的なことだとお考え下さい。
まとめ
建設業は重要な産業であるがゆえに、就業者を確保し持続可能な状態を確保しなければなりません。
そのためには現在、これからの建設業の課題を把握し、適切な対策を打てるように法律を定める必要があります。
そのためには国土交通省の国家公務員だけではなく、建設業に関する専門家で構成される審議会に諮問することが必要ということです。
建設業に関係する審議会は2つありました。
中央建設業審議会と社会資本整備審議会ですね。それぞれの下部組織に分科会、部会とあり下部組織にいくにつれて、取扱うテーマが深くなっていきます。つまり専門的ということです。
必要に応じて部会が委員会(小委員会)を設置することが出来ると政令や運営規則で定まっています。
建設業に関しては中央建設業審議会と社会資本整備侵害会が合同で設置した基本問題小委員会というものがあります。基本問題という大きなテーマのため合同で審議しているというイメージでよろしいかと思います。
この小委員会は建設業の現在を取り巻く問題を扱い、建設業法の改正に大きな影響を与えるものです。
今後の建設業の問題点、国の意向を確認されたい方には一度ご覧いただくとよろしいかと思います。
お疲れ様でした。