この記事の要約
建設業の2024年問題の定義と、その定義を理解するために時間外労働と休日労働につきその違いを説明しました。時間外労働と休日労働をさせるためには36協定も理解し正しく運用しないといけません。詳しくは記事内にてご確認ください。

令和6年4月から建設業の時間外労働に上限が適用されます。

今までは特別な理由があれば青天井で残業、休日労働が出来ましたが、そこにメスが入ったということですね。

残業の上限規制には具体的な基準が課せられています。

一部抜粋します。

・時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満

・時間外労働と休日労働の合計について、2~6か月平均80時間以内

ここで時間外労働と休日労働という言葉が出てきます。

この言葉を正確に理解できますでしょうか。

例えば土曜日に働いたら休日労働に該当するのか。本来6時間労働で上がれるはずだったか7時間働いた場合に時間外労働になるのか。といったことです。

理解するためには最低限、労働基準法を理解する必要があります。

ここでは小難しい話はしませんのでご安心して読み進めてください。

労働基準法と2024年問題

2024年問題とは、建設業にも労働基準法の労働時間に関する規定が適用されることです。

それが具体的に何を意味しているのか一旦確認しましょう。

まず労働基準法についてです。

労働基準法は労働条件の最低条件を定めています。それを書面化したものが雇用契約書ですね。

雇用契約も法人と個人の民間同士の契約なので当事者間で合意があれば自由に締結してもよいものそうですが、何の規制もないと法人が有利な契約になることが歴史が証明してきました。

そこで労働条件を結ぶ時と結んだ後は最低限のルールも守ってね、そのルールというのが労働基準法です。

労働基準法では労働時間、休日ついては次のように定められています。

 

①使用者(会社)は、原則として、労働者に1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはいけません。

②使用者(会社)は少なくとも毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を与えなければなりません

 

このように労働基準法は会社が労働者を働かせすぎないように条件を定めています。

しかし実際はどうでしょう。

言わずもがな多くの人が一日8時間以上働いています。会社は労働基準法を無視してるということでしょうか。

そうではありません。(多分)

この規定に関しては8時間、40時間を超えて働かせる場合には労働者と協定を結ぶことで法律違反になりません。

この協定のことを時間外労働協定といいます。

労働基準法の36条に書かれているので通称36(サブロク)協定とも呼ばれていますね。

この36協定には8時間、40時間を超えて働かせる1ヶ月あたりの時間数、一年あたりの時間数などを記載します。

その労働基準法以上に働かせることが出来る残業時間に令和6年から上限時間数が適用されるようになったことが、建設業の2024年問題です。

労働基準法の時間外労働と休日労働

労働条件につき国は最低限法律で介入してくると書きました。

この最低限守るべき時間を超えて働らかせる時間が今回のテーマになります。

つまりテーマである時間外労働と休日労働は次のようにまとめられます。

◆時間外労働と休日労働の定義◆

1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させた時間

   →時間外労働

毎週1日の休日 or 4週間を通じて4日以上の休日を与えるべきだった日に労働させた時間

   →休日労働

 

労働基準法以上に働いた時間が上限適用の対象です。

逆に言えばそれ以外の労働時間は関係しません。

冒頭で書いた例で言えば土曜日に働いた場合です。

これは1週間で見た時に40時間以上働いたのであれば時間外労働に該当しますが、週休2日制の会社で土曜日出社=休日労働とは必ずしもなりません。一日休んでいれば休日の規定は労働基準法上満たしていると考えられるからです。

また一般的な会社である週休二日制の例でいうと、土曜日は所定休日といいます。

これは労働基準法の基準を上回って休みを与えているものという位置づけになり、会社と労働者で決めた休みなので法定休日ではありません。所定休日と呼び、法律は関係しないため休日労働並みの割増賃金が出るかどうか、代わりに休みが貰えるかは会社が独自に決めていいといえます。

仮に1週間、7日間ぶっ続けで休みなく働いていたなら、原則1日は休日労働に該当します。4週4休なら違反にならないのでは?と思われた方もいらっしゃると思いますが、その場合には就業規則に明記することが必要です。また他にも変形労働時間制を導入しているなど例外はありますが基本的に7日間連続で働いたら法定休日の労働時間は発生すると考えて差し支えないと思います。

休日労働になれば通常の1.35倍の給料を支払うことになることも併せてご確認ください。。

またもう一つの冒頭の例も確認しましょう。

6時間のシフトだったけど、1時間残業した場合です。これも1日単位で見れば時間外労働にはなりません。

なぜなら8時間以上働いたら時間外労働になるからですね。

6時間の予定が7時間になった場合には法定内時間労働(法定内残業)と呼びます。

これも1.25倍になるかは会社が独自に定るもので、法律の介入はありません。

しかし時間外労働は1週間で見た時に40時間以上になるかどうかも確認が必要です。

予定より働いたイコール時間外労働ではないということにつきご注意下さい。

36協定の種類

労働基準法以上に働く場合には36協定の締結が必要てあることは申し上げました。

この36協定の条項(記載内容)は2種類に分けられます。

◆36協定の条項◆


①一般条項

②特別条項

 

それぞれ確認しましょう。

一般条項

一般条項とは平時の時間外労働の上限時間を指します。

この上限時間が次の通りです。

 

この36協定の条項(記載内容)は2種類に分けられます。

◆36協定の一般条項◆


時間外労働が1ヶ月で45時間以下&一年で360時間以下

 

つまり建設業者が管理すべきことは1日に8時間以上働かせた時間&1週間に40時間を超えて働いた時間、これら合算した時間が1ヶ月で45時間以下、一年で360時間以下になっているかということです。

この一般条項が原則に該当するので建設業者は、この時間を頭にいれて工程計画等を作成しないといけません。ちなみに休日労働は含まれていません。

特別条項

特別条項とは特別な事由がある場合の時間外労働の上限内容です。

自然災害や繁忙期などの一過性の業務量が増加する場合を想定しています。

この繁忙期や自然災害の復旧作業といった臨時の事情かある場合は一般条項の基準より働かせてもいいけど、この特別条項の基準以下(未満)にしてね、といった形です。

この基準が次の通りです。

この36協定の条項(記載内容)は2種類に分けられます。

◆36協定の特別条項◆


・時間外労働が年に720時間以内
・時間外労働+休日労働が1ヶ月100時間未満
・時間外労働+休日労働が2〜6ヶ月平均で80時間未満
・時間外労働が45時間を超えられるは6月以下

 

臨時の事情があれば一般条項の基準より働かせることが出来ますね。

特別条項のみ休日労働が出てくることが特徴です(逆に言えば一般条項では休日労働時間数の規制はないとも言えます。)

つまり建設業者が管理すべきことは次の3点です

◆建設業者が求められる労務管理◆

①1日に8時間以上働かせた時間&1週間に40時間を超えて働かせた時間+休日労働させた時間 < 1ヶ月で100時間未満&2〜6ヶ月を平均で80時間未満

②1日に8時間以上働かせた時間&1週間に40時間を超えて働いた時間≦一年で720時間

1日に8時間以上働かせた時間+1週間に40時間を超えて働いた時間→45時間に達した月≦6ヶ月

 

ただし災害の復旧、復興の事業の際はこの規定は適用されません。

・時間外労働+休日労働が1ヶ月100時間未満
・時間外労働+休日労働が2〜6ヶ月平均で80時間未満

災害の復旧、復興の事業の際は時間外労働が1年720時間以下と45時間を超えられる月は6ヶ月以下の2つが適用されるということです。

まとめ

時間外労働及び休日労働の定義と建設業の2024年問題についてまとめました。

建設業者様においては中々難しい問題で簡単に解決しないと思います。

コンプライアンスを守るためには必ず36協定(特別条項付き)を締結して労基署に届出ること、時間外労働と休日労働について正確にご理解と管理を願います。

ちなみに2024年の4月1日から上限規制は適用されますが、36協定の締結日によっては適用をもう少し遅くすることも出来ます。

詳しくは『建設業の時間外労働の上限規制!令和6年4月に36協定を結ぶ必要はある?』をご確認ください。

お疲れ様でした。