配置技術者は一定金額以上の請負工事の現場には専任で配置しないといけません。
 
それが令和7年2月から4,500万円になります。
 
4500万円以上の工事現場であればその工事が完了するまでは、他の工事現場の専任になれないことが原則です。例外としてはこちらの法改正の記事を御覧ください
 
しかし工期の開始から終わりまでずーっと現場で施工管理していないといけないのか、というとそうではありません。
 
国土交通省の資料では専任性を要しない期間という形で例示がされています。配置技術者となれる者が少ない事業者におかれましては、その専任性を要しない期間をうまく活用して別工事の配置技術者にしたいとお考えになるのは普通のことでしょう。
 
しかし、何の注意もなく配置していいいのかというとそうではありません。
 
そこでこの記事では配置技術者の専任性を要しない期間につき注意点につきまとめました。
 

専任性を要しない期間とは

 
専任性を要しない期間とは次の4つと言われています。

◆専任性を要しない期間◆

(1)請負契約締結後、現場施工に着手するまでの期間
 
(2)工事の一時中止期間
 
(3)工場製作期間
 
(4)工事完了後の期間

 

 
 
 
図示するとこうなります。
 
 
 
それぞれどういう期間か確認しましょう。
 
(1)請負契約締結後、現場施工に着手するまでの期間:現場事務所の設置、資機材の搬入、仮設工事などが開始されるまでの期間は、配置技術者の専任は不要です。
 
(2)工事の一時中止期間:工事用地の確保が未了、自然災害の発生、埋蔵文化財調査などにより、工事が全面的に一時中止している期間も、配置技術者の専任は不要です。
 
(3)工場製作期間:橋梁、ポンプ、ゲート、エレベーター、発電機・配電盤等の電機品などの工場製作を含む工事において、工場製作のみが行われている期間は、現場への専任は不要です。ただし、工場製作過程においても、主任技術者または監理技術者はこれを管理する必要があります。
 
(4)工事完了後の期間:工事完成後、検査が終了し、事務手続きや後片付けのみが残っている期間は、配置技術者の専任は不要です。ただし、発注者の都合により検査が遅延した場合は、その期間(検査日を含む)も専任を要しないとされます。
 

注意点

 
専任性を要しない期間が4つあることが確認出来ました。
 
ではこれらの専任性を要しない期間であれば何の制限もなく配置技術者は専任性を要しない現場を掛け持ちすることは出来るのでしょうか。
 
そうではありません。
 
特に注意いただきたいことは次の2つです。
 
◆専任性を要しない期間に配置する注意点◆

①発注者との書面によりあらかじめ期間を特定すること
 
②専任が必要な期間中の重複は禁止

 
 
それぞれ確認しましょう。
 

①発注者

 
いずれの4つのケースでも、発注者と建設業者の間で次に掲げる期間が設計図書もしくは打合せ記録等の書面により明確となっていることが必要である。
 
突発的に生じた専任性を要しない期間は(2)を除き想定されていません。
 
これは誠実性の原則や請負責任からくるものとお考え下さい。あらかじめ書面により注文者とう専任性を要しない期間であると承諾を得ることで、その期間中は専任性を要しないと認識が一致され、他の工事に関与することが出来るということです。
 

②専任が必要な期間中の重複は禁止

 
 
国土交通省の資料では次の2つのケースが掲載されています。
 
 
ケース1は上段の工事の最終段階の事務手続きが残っている程度の段階で、下段工事の配置技術者として別工事にかかる調査や打ち合わせやしているイメージです。
 
それぞれ専任性を要しない期間であるが故に認められるとお考え下さい。
 
ではケース2はどうでしょうか。
 
これは配置義務違反にになります。
 
上段の最初に請けた工事の専任制が解除されていないにも関わらず別工事の配置技術者にはなれません。また上段の専任性を要しない期間であれば、下段の工事に施工しても良いと思われるかもしれませんが、これもケース1が完了していない以上は専任義務が免れるわけではないため別工事にて専任性が発生する状態は認められないということでしょう。
 
仮に上段の工事に施工不良などがあったら、配置技術者として対応することなどを考えると妥当と言えるでしょう。
 

結局、重複配置は出来ない?

 
ケース1は配置出来て、ケース2は配置出来ないのであれば結局、専任性が発生する工事は従事出来ない?とお考えになると思いますが、個人的には次のケースでは問題ないと思っています。
 
それは専任性を要しない期間中に工事が開始され終了する工事です。
 
つまり白色の期間内に完結するオレンジの工事ということです。
 
そう考える理由としては、2つあります。
 
 
①発注者に承諾を得られるから
 
②専任性が生じていない期間である以上、専任性が理由で縛られることは合理的ではないから
 
 
上述した通り、専任性を要しない期間は発注者とあらかじめ書面により合意を得ていることが条件です。突発的に発生したものは天災地変を除きありません。
 
である以上は、発注者に対して「この期間中は、期間内に終る別工事の配置技術者になりますが、本件工事に支障はありませんのでご安心下さい」といえます。よって専任を要しない期間中に完結する工事であれば別工事の配置技術者になれるということです。
 
ただし注意点としては、専任性要しない期間における災害等の非常時の対応方法について、発注者の承諾を得る必要があります。対応する者は元の工事の配置技術者と同じ建設業者に所属する別の技術者による対応として下さい。
 
 

天災地変による工事が全面中止の場合は?

 
専任を要しない期間2が工事を全面的に中止している期間になります。
 
理由は工事用地等の確保が未了、自然災害の発生又は埋蔵文化財調査等によるものです。この場合、突発的に生じた期間のためあらかじめ計画して合意を得ることが出来ていません。
 
どうすれば他の工事の配置技術者になれるのでしょうか。
 
それは発注者の承諾を得て、発注者が同一の他の工事(元の工事の専任を要しない期間内に当該工事が完了するものに限る)であれば専任の技術者として従事可能です。
 
突発的に工事が全面中止になった場合においては、発注者が同一という条件が追加されるのご注意下さい。
 

まとめ

 
配置技術者の専任性を要しない期間は、以下の4つです。
 
(1) 請負契約締結後、現場施工に着手するまでの期間
(2) 工事の一時中止期間
(3) 工場製作期間
(4) 工事完了後の期間
 
これらの期間は、あらかじめ発注者との書面(設計図書や打合せ記録など)で明確に定める必要があります。
 
また、専任が必要な期間にかかる重複配置は片方が専任性を要しない期間だとしても禁止されています。
 
ただし、以下のケースでは、専任性を要しない期間中に他の工事の配置技術者になることが可能です。
 
・専任性を要しない期間中に工事が開始され終了する工事
・天災地変により工事が全面中止になった場合で、発注者が同一の他の工事(元の工事の専任を要しない期間内に完了するものに限る)の配置技術者となる場合
 
全てのケースでは、発注者の承諾を得る必要があります。特に、天災地変による全面中止の場合は、発注者が同一であるという条件が追加されることに注意が必要です。
 
重要なポイントをまとめます
 
・専任性を要しない期間は、発注者との書面で明確に定める
・専任が必要な期間中の重複配置は禁止
・専任性を要しない期間中に完了する工事は、発注者の承諾を得て配置可能
・天災地変による全面中止の場合は、発注者が同一の他の工事に限り配置可能
 
 
お疲れ様でした。