専任技術者は営業所ごとに専任かつ常勤でなくてはいけません。基本的に許可を受けた事業者は工事現場に技術者を配置する義務が課せられます。しかし専任技術者は営業所にで請負契約の技術的な責任者としての職務が課せられいるので現場には配置出来ません。しかしある一定の条件下では専任技術者を工事現場に配置することが出来ます。
建設業の許可の要件の1つに適切な専任技術者の設置があります。
専任技術者とは営業所にて請負契約等を締結する際の技術的な責任者です。
専任技術者になるためには建設業の許可をうける業種に関連した資格や一定以上の実務経験が求められます。詳しくはこちらの『建設業の許可の専任技術者になるための要件は?』をご覧ください
専任技術者は営業所ごとに常勤かつ専任でなければいけません。
よく受ける質問として
・専任とはどういうことか。
・専任技術者は現場に出てはいけないのか。絶対に営業所に請負契約の締結責任者として勤務しないといけないのか。
この2点です。
もし専任をずっと営業所にいなくてはいけないと解釈したら専任技術者は現場に出れないですね。
技術者が何人もいる会社であれば専任技術者が営業所に常駐しても問題ありませんが、専任技術者が1人の小規模事業所であったら大きな問題ですよね。
この記事では専任技術者の条件である専任性や現場に配置するための条件について説明しています。
Contents
専任とは
専任とはその許可を受けた営業所に常勤で専らその職務に服することをいいます。
許可を受けた営業所で、専任技術者として仕事してくださいって意味ですね。他の営業所や他社で働くことは原則認めていません。
つまり本店の専任技術者になれば、他社ではもちろん自社の支店の専任技術者にもなることが出来ません。
営業所ごとに専任性が求められる
専任技術者は会社単位はもちろん営業所ごとに専任性が求められます。
例えば電気通信工事業の許可を取得した会社を例に考えましょう。その会社には本店と支店で合計2つの建設業を営む営業所があります。
本店と支店の両方で1件500万円以上の電気通信工事を請負うのであれば、本店と支店には別々の専任技術者を配置しなくてはいけません。つまり2人の選任技術者が必要です。
会社単位で許可を取得すれば当然に本店も支店も許可が取得出来るわけではありません。
専任とは許可を持つ営業所で専用の技術者になり常勤で働くということです。
専任技術者の仕事
専任技術者の主たる業務は営業所内に常駐して、請負契約の適正な締結工事の履行を技術面から確保することです。
営業所のデスクの上で、請負工事が技術的な側面で自社が請け負うことが出来るのか、仮に請負う場合には金額の見積もりや納期等を提示することが必要です。
ただし令和2年に発出された緊急事態宣言中は専任技術者は必ずしも会社のデスクにいることは求められませんでした。リモートによる随時、商談が出来るような体制であれば良いとされています。
また今後も国がテレワークを推進していくことを考慮すると専任技術者が物理的に会社にいなくてはならない、という常駐性は見直される可能性もあります。現在の取扱は許可権者(許可を出している行政の建設業課)に確認してみて下さい。
話を戻します。
建設業法では専任技術者は現場の技術者になることは予定されていません。
現場では請負工事は締結出来ないからです。
現場の技術者は主任技術者
建設業法では工事現場にも技術的な責任者の配置が求められています。
その現場に出る技術的な責任者が主任技術者です。
主任技術者は誰でもなれるわけではありません。
詳しくはこちらの『建設業許可の主任技術者とは?専任技術者との違いや役割』でご確認ください。
つまり専任技術者は営業所に常勤で働く請負契約等を締結する際の技術的な責任者で、主任技術者は現場に配置する技術的な責任者。
こういった関係性です。
ここまで読むと、技術者が専任技術者1人しかいない営業所は許可を取っても工事現場に配置出来る技術者がいない。ということになります。
その場合はどうすればいいのでしょうか。下請け業者に丸投げすればいいのでしょうか。
丸投げは出来ません。建設業法違反になります。詳しくは『建設業法で一括下請が禁止されている理由とその基準と例外規定』でご確認ください。
建設業法上、ある一定の条件下で専任技術者を主任技術者に配置することが認められています。その条件下で工事を施工することになります。
・営業所の数だけ専任技術者が必要(それぞれの支店で500万円以上の工事を請け負う場合)
・専任とはその営業所に常駐して、もっぱらその職務に服すること
・現場に出る技術者は主任技術者
専任技術者と主任技術者は兼務出来る
原則、専任技術者と主任技術者が兼務出来ません。
しかしとある一定の条件下においては専任技術者を主任技術者として配置出来る、つまり兼務が可能とされています。
一定の条件とは
以下の3つ全ての条件を満たせば専任技術者が主任技術者になれます。
一つずつ確認しましょう。
①はそのまんまです。他の支店で締結された請負工事の主任技術者にはなれません。
②は営業所と工事現場が離れていない場合に限り認められる限定的な取扱という意味合いです。具体的な判断基準は都道府県によって取扱方が異なります。
③の公共性〜建設工事はほとんどの工事が該当します。
該当しないものが個人住宅の請負工事です。個人住宅以外の請負工事で請負金額が4,000万円以上であれば、専任技術者は主任技術者にはなれないとお考えください。
兼務する場合は上記3点に該当しているかどうかしっかりお調べ下さい。
専任性、常勤性の判断基準
専任技術者は常勤かつ専任でなければいけないと冒頭で触れました。
専任性、常勤性には具体的な判断基準があります。
以下の条件に1つでも抵触すれば専任性、常勤性がないと判断されます。
上記に一つでも当てはまると常勤性や専任性が否定されます。
これらの条件に抵触しない人を専任技術者にする必要があります。主任技術者も同様です。
主任技術者に関しては上記条件に加え、直接的かつ恒常的な雇用関係が必要と言われております。
派遣社員や出向社員は認められず、短期間契約の雇用者は主任技術者として配置してはいけません。
・常勤性、専任性には具体的な判断基準がある
・ほかの法令で専任が求められていても、同一営業所なら専任性が認められる
・主任技術者は直接的かつ恒常的な雇用関係が必要
注意点
専任性とはもっぱらその職務に就くことと書きました。
しかし建設業法上の適切な経営管理体制の責任者(経営業務の管理責任者)や支店ごとの責任者(令3条の使用人)とは兼務出来ます。
まとめ
専任技術者は営業所に常勤性かつ専任性が求められます。
営業所毎に専任かつ常勤性が必須です。他の営業所(支店)でも同じ業種の500万円以上の請負工事を請ける場合には、別々の専任技術者を配置しなくてはいけません。
営業所に常駐(又はリモートワーク等で随時商談出来る体制)することが求められるので原則、工事現場に出向くことは出来ませんが、ある一定条件を満たせば現場に配置出来る技術者として配置できます。
一般的には4,000万円未満の請負工事かつ営業所から現場が近接していれば兼務出来る。でしたね。
また専任技術者の専任性と常勤性は許可を受ける時点だけではなく、許可後も常に要件を満たしている状態でなくてはいけません。
営業所が複数ある事業者が特に注意して欲しいことは人事異動です。
人時異動をする場合にそれぞれの営業所の専任技術者に該当する方は在籍出来ているかをしっかり確認したうえで取組む必要があります。人事異動の結果、許可の要件を満たせていない状態になる可能性があるからです。
建設業法違反にならないように注意しましょう。