建設業の許可を受けた業種の工事には主任技術者や監理技術者等の技術者を現場に配置する必要があります。

この技術者のことを配置技術者といいます。

配置技術者は誰でも置けばいいわけではなく、技術的な能力を有していることとは別に直接雇用関係があることを条件として課せられています。つまり施工管理技士等を有していても派遣社員や出向社員は配置技術者として認めらない、ということです。これは結構厳しく、直接雇用していない技術者を現場に配置したということで行政処分を受けている例は枚挙に暇がありません。

この特例的な措置として企業内集団確認制度というものがあり、令和6年4月1日から改正され運用が新しくなりました。

企業集団制度とは申し上げた通り、自社の従業員でなくても技術者として配置できる制度ではありますが、この制度には要件があり対象になる事業者は限定的です。

自社が対象となるかどうか記事内でご確認ください。

2種類ある企業集団制度

今回、言及する配置術者の特例的な配置が認められるためには、企業集団として認められることが重要です。

つまり親会社子会社のようなグループ企業内であれば出向社員でも、直接の雇用関係がなくても現場に技術者として配置することを認めるといった趣旨で、これを企業集団制度と呼びます。具体的には株式を50%超保有しているといったケースが該当します。

そしてこの企業集団制度は大きく2つに分けられます。

◆2つの企業集団制度◆


①(即時配置可能型) 親会社及びその連結子会社の間の出向社員を現場技術者として配置する

②(3ヶ月後等配置可能) 企業集団内の出向社員を現場技術者として配置する場合

それぞれ出来ることや手続の要否が異なります。

確認しましょう。

①即時配置可能型とは 〜 企業集団制度

即時配置型とは企業集団制度の一つで、親子間の出向社員を技術者として配置が可能となる型です。

例えば親会社から在籍出向している技術者を子会社が受注した工事現場の配置技術者になれ、子会社の在籍出向社員を親会社が受注した工事現場の技術者に配置することが可能になるものです。

では具体的にどのような要件を満たせば即時配置可能型として確認を受けられるのでしょうか。

要件は次の通りです。

①一の親会社とその連結子会社からなる企業集団であること

②親会社及び連結子会社が建設業者であること

③上記②の連結子会社がすべて①の企業集団に含まれる者であること

④親会社又はその連結子会社のいずれか一方が経営事項審査を受けていない者であること

⑤親会社又はその連結子会社が、既に即時配置可能型の対象となっていないこと

連結子会社とは会計上の概念で財務諸表を合算する対象となる会社です。つまり親会社が支配力を有しているような企業グループが対象となります

建設業者とは建設業許可を受けている事業者です。

そして上記条件を満たせていることの確認申請が必要になります。

提出先は国土交通省不動産・建設経済局建設業課でメールにより申請します。

即時配置可能型の注意点

箇条書きで即時配置可能型の注意点につきまとめました。

・子会社間の技術者の出向は認められない

・親会社もしくは子会社いずれかが経営事項審査を受審することは出来ない

・非連結子会社(持分法適用会社)は対象外

・出向社員を現場に配置する建設工事に、当該企業集団を構成する会社又は非連結子会社が下請人として工事に入ることは出来ない

②3ヶ月後等配置可能型とは ~ 企業集団制度

2つ目が令和6年4月に新たに設けられたものです。人口減に伴い配置出来る技術者が少なくなってきている背景もあり、緩和されたといってもいいでしょう。

即時配置型と異なり、親子間だけでなく連結子会社間の在籍出向者を現場に配置することができます。さらに要件さえ満たせば別途手続きは要しません。つまり即時配置型とは異なり確認申請は不要です。

ではどうすれば3ヶ月後等配置可能型となれるか要件を確認しましょう。

要件は次の通りです。


①一の親会社とその連結子会社からなる企業集団であること。

②公共工事の場合は、所属建設業者から当該公共工事の入札の申込のあった日以前に出向先と三ヶ月以上の雇用関係があること。

3ヶ月後等とは出向契約を結んでから期間が3ヶ月以上経過しているということです。3ヶ月超であれば公共工事でも子会社間でも出向契約の技術者を配置出来るということを示しています。

また要件になる入札の申し込みのあった日とは指名競争に付す場合に入札の申し込みを伴わないものは入札の執行日、随意契約による場合には見積書の提出があった日、公共工事以外の工事で入札等を伴わないものは見積書の提出があった時のことを指します。

ちなみに親子間であれば民間工事の場合には、確認申請手続をすることなく在籍出向後に即時配置が可能です。

さらに即時配置型の要件としてある経営事項審査が片方しか受審出来ないことや下請人になることへの制限もないため使い勝手がいいものになっています。

3ヶ月後等配置可能型の注意点

・即時配置型とは異なり確認申請がないため、自社で①の企業集団であることを証明することが必要です。

証明書類とは具体的には次のものです。

(1)出向元との雇用関係を示す書類

(2)出向契約であることの証明書(出向契約書)

(3)親会社と連結子会社からなる企業集団内の会社でることを示す書類(有価証券報告書など)

まとめ

企業集団として認められる要件を満たせば、その企業集団内では直接雇用していない技術者である出向社員でも配置が可能になります。

企業集団制度としては即時配置可能と3ヶ月後等配置型と2つです。

即時配置可能型であれば確認申請が必要で、経営事項審査を受審している企業にとっては親会社か子会社のどちらかしか受審をすることができないので注意が必要です。即時配置可能型の企業内集団確認も受けて公共工事を受注したい場合には、どちらかの経営事項審査の有効期限が失効した後に確認申請をしましょう。

最後に表にてまとめます。

企業集団確認制度の比較表

項目即時配置可能型3ヶ月後等配置可能型
運用開始従来からあり令和6年4月新設
配置対象範囲親会社 ⇔ 子会社間親会社 ⇔ 子会社間  & 子会社 ⇔ 子会社間
配置可能時期即時原則3ヶ月経過後(※民間工事で親子間は即時可)
申請要否必要(国交省建設業課にメール申請)不要(企業集団であることを自社で証明)
要件– 親子+連結子会社による企業集団
– 双方が建設業者
– 全て連結子会社
– 親子どちらかは経審未受審
– 既に対象でないこと
– 親子+連結子会社による企業集団
– 公共工事の場合、入札申込日前から3ヶ月以上の雇用関係
制限– 子会社間の出向不可
– 経営事項審査はどちらか一方しか受けられない
– 非連結子会社は対象外
– 下請に入る場合は不可
– 経審制限なし
– 下請制限なし

証明書類確認申請書類一式(国交省へ提出)自社で保管(雇用契約書、出向契約書、連結関係を示す書類等)

お疲れ様でした。