建設業許可を取得するには常勤役員や営業所専任技術者等の条件を満たす者が必要です。

この条件に「一定の請負工事の経験を有している」とあります。能力を有していることを証明するために、工事にかかる請求書等を期間分用意して審査を受けて実務経験として認められることが必要です。

この実務経験の審査方法は申請する自治体によって異なります。語弊を恐れずにいえば、審査機関によって独特の癖があるということです。

特に神奈川県は工事の契約書等について「年に1件でOK」と書いてありますが、実際の審査では注意点が多いです。特に法人成りや名義変更がある場合は、思わぬ落とし穴があります。

というのも最近神奈川県に申請する機会があり、他にはない独特な癖を感じたので次回以降に備えて備忘録も兼ねてまとめておきたいと思います。

これから申請する皆様にもお役立ち出来れば幸いです。

神奈川県 実務経験の審査の癖

私が考える神奈川県の実務経験の審査の癖は大きく2つあります。

◆神奈川県 建設業許可 実務経験の審査の癖◆


①年に1件の実績提出の考え方

②請求書の注意点

 

それぞれ確認しましょう。

①年に1件実績提出の考え

現在公開されている神奈川県の建設業許可の手引には次のような記載があります。

最初の契約書等に記載された日付(契約日、注文日、請負日、工期、請求日)から最後の契約書等に記載された日付までを通算して、必要年数を上回るようにしてください。

最初の契約書等と最後の契約書等の間については、各年(法人の場合は各事業年度でも可)1年につき1 件以上の契約書等が必要です。

(例)5年の実務経験を証明する場合
最初の注文書の注文日 ・・・平成27年10月10日

(平成28年~令和元年は、各年の代表的な工事の契約書等を1年1件以上添付)

最後の注文書の注文日 ・・・令和2年11月1日
                    満5年0月 (23日) ⇒要件を満たす

このように書いております。

つまり請求書等の一番古い最初と一番最近の日付を結び60ヶ月以上あり、その間は年に1件あれば認めるという審査方法ですね。

これが自分で積んだ経験を使い個人事業主を許可するケースで証明する実績または法人設立後の実績と用いて法人で許可を取得する場合には難しくありません。

しかし個人事業主から法人化したケースや、個人事業主から会社員になり法人化して法人で許可を取得するケースだと考え方が変わってきます。

例を使いそれぞれ確認してみましょう

(1)個人事業主から法人化したケース

令和5年に個人事業主として独立して令和7年4月に個人事業主から法人化したケースで考えましょう。

もし法人化していない場合には令和7年の1~12月で請負工事の契約書等を提出するだけで済みますが、法人化するとそれでは足りません。

この場合には次の契約書が必要です。

・令和7年1月~3月までに振り出した請負工事の契約書等(個人事業主名義)

・個人事業主の廃業届出

・令和7年4月~12月までに振り出した請負工事の契約書等(法人名義)

この3つを提出すれば12ヶ月の実務経験として認められます。年に1件の請求書だけでは足りません。

法人成りした年は“年1件”の原則はそのまま使えないということです。

更に注意点としては個人事業主の廃業届出にある廃業理由が法人成りであることです。理由が書いていない場合には認めないと窓口では言われました。
さすがにそれは個人的にはおかしいと思いますが備忘録として記します。

また振り出した個人事業主と法人の請求書ですが、会社設立日以前に法人名義が記載されていれば認められません。逆に法人設立日以降で個人事業主の名義で振り込んでおり、廃業届出の記載にある廃業日と矛盾があるといって実績として認めないとも指摘されました。

個人事業主から法人の切替時点ではご注意下さい。

(2)個人事業主から会社員になり法人化して法人で許可を取得するケース

令和5年に個人事業主として独立して令和7年4月に会社員になり令和8年2月から法人化したケースで考えましょう。

令和7年4月で個人事業主は一旦終わりです。

よって一番令和7年4月までの実績で一番最近の実績まで認められます。令和7年1月20日であれば1月20日まで認められ、2月と3月は認められません。

会社員時代が建設業許可を持っていれば、厚生年金被保険者記録照会回票と許可証又はその会社から請負工事の契約書等を借りて証明します。この期間は一番古い契約書等と一番新しい契約書等の日付まで認められます。このケースで言えば、令和7年4月~12月で年に1件、令和8年は1月~2月で1件用意すればその期間の日付で証明出来ます。

では法人の実績はというと令和8年の会社設立日以降で法人の振り出した契約書等の日付が重要です。

もし令和9年の実績があるのであれば、契約書等を振り出した日を始期として認められます。しかし令和8年の実績で5年を証明する場合には令和8年の始期と終期の提出が必要です。

例えば令和8年5月1日に振り出した工事の契約書等を出して、令和8年11月1日に振り出した工事の契約書等をそれぞれ出せばその間6ヶ月が認められます。しかし1件しか出せないのであれば令和8年の実績は認められません。

このように証明主体の変更、始期と終期が関係する場合には手引に記載されている各年(法人の場合は各事業年度でも可)1年につき1 件以上の契約書等の解釈が異なりますのでご注意ください。

実務経験が空いた場合は

例えば令和3年、令和4年の実績はあり、令和5年の実績はないが令和6年の実績はある場合の認められる期間と必要な書類はどうなるでしょうか。

まず令和4年は契約書等の振り出した日付まで認められます。そして令和6年は契約書を振り出した日を始期として令和7年の提出がある場合には12月末日まで認められ、令和7年の実績を提出しないのであれば令和6年の一番新しい日付の期間まで認められます。

②請求書の日付の考え方

実務経験を証明する場合には、工事の契約書、注文書請書、請求書のいずれかが認められます。

契約書や注文書は無許可業者ではあまり締結している事業者が少なく、請求書で証明することが多いです。

この請求書で証明する場合の注意点をまとめました。

(1)工事名

(2)通帳の表紙と2枚目が必要

(3)請求先が屋号の場合

(4)工期のカウント方法

(5)入金額と請求額の差異がある場合

それぞれ確認しましょう。

(1)工事名

工事の請求書の案件には建物名や案件名しか書かれていないケースがあります。

請求書を作成する申請者本人にとっては、元請や発注者が分かれば別に「~~工事」と記載する必要はないですよね。

しかし証明資料として提出する場合には「~~工事」というように工事であることが明確でないと証明資料としては使えないです。

また営業所専任技術者の実務経験として使用する場合には業種が明確に分かることが必要になります。

とび土工コンクリート工事業の許可が取得したい場合には、足場組立工事や基礎土木工事等といったことも書かれていないと認められないということです。しかも、行政側が分かるように例示にあるような書き方でされていないと指摘を受けます。

請求書一枚でそれらが分からないには見積書等の提出が必要になるので、しっかり記載されているか確認しましょう。(この申請のために見積書等を作成することは認められません)

(2)通帳の表紙と2枚目が必要

書いている通りですが、通帳の入金ページだけでは証明として足りません。

表紙と表紙を開いた裏のページで口座情報等が確認されます。

ネット銀行の場合には口座情報と銀行名が分かる情報をスクショして添付しましょう。

(3)請求先が屋号の場合

請求書の宛名が屋号で、通帳で記帳されている名称が個人の名前の場合には実績として認められません。

その場合、名刺やホームページで屋号と人物が同一であることを証明する必要があります。もし名刺等で証明が出来ない場合には、その屋号の人の印鑑を押す形で証明するといったことが求められます、

提出案件が古く、屋号と人物の一致証明が出来ないのであれば実績証明資料として提出することは避けた方がよろしいです。

(4)工期のカウント方法

基本的に工事の請求書は工事が完了してから請求書を振り出すことが一般的です。

であれば実務経験は工事に着工した期間から認められたいところですが、工事の請求書を振り出した日が始期になります。

証明する期間の間であれば特に問題ありませんが、証明する始期であればもっと長い期間の実務経験が認められるのにもったいないですよね。

その場合には工事の請求書に工期の記載があればその期間を始期として認められます。その工期が20日あれば、20日間稼げるので実務経験がぴったりの頃であれば
工期の記載の有無で申請するタイミングを前倒し出来ますので工期を書くことも前向きに検討しましょう。

(5)入金額と請求額の差異がある場合

請求書に記載された金額と通帳の入金額が異なる場合、その差が分かることが分かる資料が別途必要です。

金額が少額であればメモ書き等でなぜ差異があるのか記載しましょう。例えば銀行の振込手数料負担や労働安全衛生費等ですね。

他の審査機関との比較

実は年に1件以上の提出という審査方法は神奈川県以外にも結構あります。

例えば千葉県や関東を主たる営業所とする大臣許可。

この両者は実務経験証明書の期間中に1件出せば良いとされています。

例えば令和6年1月~12月に請け負った工事を実務経験証明書に記載したとしましょう。

そしたら令和6年のどの月でも提出すればOKです。これが始期でも終期でもです。

例えば令和6年12月の工事の契約書等を出しても1月から12ヶ月認められます。もちろん、通年で実績がある前提ですが、この取扱が神奈川県とは結構異なり混乱するので備忘録として記録しました。

その他、神奈川県の審査基準の取扱 番外編

その他、神奈川県の審査方法で特徴的なことをまとめます。

・附帯工事の実績も実務経験として認める

・請求書と通帳が個人名であれば確定申告書がなくても事業主経験を認める

・給与所得があっても事業主経験を認める可能性がある

・営業所技術者の実績であれば人工工事の実績も認める

・手書きの領収書でも入金証明として認める

・電子申請は審査が遅いのでオススメしない

・窓口が閉まるのが早い(9時~15時)

・窓口に申請する場合、申請案件が複数ある場合、1人でいけば1件目の案件が完了しないと次の案件の予約ができない(15時までに順番待ちの名簿を記載しないと当日中に審査が受けられない)

・在籍証明は源泉徴収票や雇用保険の加入記録でも認める(厚生年金に加入していなくても在籍証明が可能)

まとめ

神奈川県の実務経験の証明方法につき、まとめました。

年に1件であれば簡単では?と思う方もいるかもしれませんが、結構独特な審査の癖だなというのが個人的な印象です。

また個人的には電子申請はおすすめできません。特に実務経験が関係する場合にはどうしても証明資料が多くなります。

しょうがない部分もあるかもしれませんが、電子申請の担当者と窓口を比べると対応している人数が少なく審査が進みません(令和8年2月時点)

標準処理期間で許可取得を想定する場合には窓口申請をオススメします。

お疲れ様でした。