現場代理人とは

この記事の結論と要約  (2,630文字   目安:8分程度)
現場代理人の定義と役割についてまとめています。現場代理人は専任技術者や主任技術者と似ていますが全く別です。主任技術者は現場に配置する技術者で、現場代理人は請負者の契約関係事務に関する事項の代理をする者です。現場代理人は配置義務はありませんが、配置することが望ましいとされています。選任する場合の注意点もまとめたのでご確認ください。

 

現場代理人という言葉をご存知でしょうか。

主任技術者や専任技術者など混同しやすい言葉がありますが、この現場代理人も同様です。実際に現場代理人の定義や役割を正確に言うことは簡単ではないでしょう。

この記事を読むことで現場代理人の定義とその役割、選任するにあたっての注意点を知ることが出来ます。

現場代理人とは?

現場代理人の定義を確認しましょう。

現場代理人とは受注者としての立場の請負人(法人の場合は、代表権を有する取締役。個人の場合は事業主。)の契約の定めに基づく法律行為を、請負人に代わって行使する権限を授与された者です。

現場において、請負人に変わり請負工事に関して重大ではない契約内容を変更する権限が授与されています。

というのも通常、工事が施工されるときは請負人や注文者が直接工事現場において指図又は監督を行うことは少ないです。軽微な変更をいちいち請負者に確認して進めていくと、工事の進捗に影響が出てくるのはイメージ湧きますよね。

そういったことを請負人の代わりに承諾したり変更を求めたりする権限を授与されたもの、それが現場代理人です。

現場代理人の役割

現場代理人の役割は現場にて請負人の代理として請負契約の適切な履行の確保をすることです。

具体的には次の通りです。

 

・運営、取締まり

・契約関係の事務

 

これらの一切の事項を処理します。

運営取締まりとは、工事の施工上必要とされる労務管理、工程管理、安全管理その他の管理行為を指します。労働安全衛生法で定める職長のとしての職務と同等の役割です。

現場代理人を選任するには

現場代理人を選任するためには次の3点確認しましょう。

◆現場代理人を選任するための3つの確認事項


①注文者に対する権限に関する事項の通知

②請負人に対する意見の申出の方法の通知

③現場代理人に求められる条件

一つずつ確認しましょう。

①注文者に対する権限に関する事項の通知

請負人に変わって代理行為をするので、具体的に誰が何を代理するのか、どこまで代理出来るのかを明確化しなくてはいけません。

つまり代理権の授与権通知書を作成する義務があります

以下の項目を書面化して発注者に書面かメールで通知しましょう。

 

・現場代理人の名前

・意見の申し出の方法

・権限の範囲

 

特に権限の範囲には注意しましょう。

なんでも委任すると重要な事項まで変更出来てしまいます。例で代理権の範囲を定めた文言を確認しましょう。

現場代理人は、この契約の履行に関し、工事現場に常駐し、その運営、取締りを行うほか、この約款に基づく下請負人の一切の権限(請負代金額の変更、請負代金の請求及び受領、工事関係者に関する措置請求並びにこの契約の解除に係るものを除く。)を行使する。ただし、現場代理人の権限については、下請負人が特別に委任し、又は制限したときは、元請負人の承諾を要する。

上記の例で言えば青文字の部分が重要な事項として挙げられます。この部分は代理権に含まれないことが確認出来ます。

契約時には建設下請工事約款が一般的には推奨されていますのでご確認ください。

②請負人に対する意見の申出の方法の通知

現場代理人が現場で発注者に意見を申し出したい場合の手続きを明確化し認識を共有させなくてはいけません。

言った言わないを無くすためににということですね。

一般的には理由を明示した書面によることが多いようです。

③現場代理人に求められる条件

法律上、必要な資格や実務経験年数などは決まっていません。

一般的には次の条件が求められているようです。

◆現場代理人に求められる条件

・施工期間中は工事現場に常駐出来ること

・請負人と直接的かつ恒常的な雇用関係があること(正社員として雇っている)

・複数の工事現場の現場代理人を同時に務めることは出来ない。しかし、業務(役割)に支障がないと発注者が認めれば兼務出来る

元請負人と下請負人との間で合意があれば上記条件が必須になるわけではありません。

また主任技術者や監理技術者との兼務、複数現場の現場代理人兼務も基本的には発注者との約束で決めていいとされています。

現場代理人は絶対に必要?

専任技術者や主任技術者は配置義務があります。配置しないと建設業法違反になります。

では現場代理人は配置義務があるのでしょうか。

答えは、現場代理人の配置義務の規定はありません。配置義務はありませんが、配置することが望ましいとされています。

なぜならば現場代理人の役割は主に契約上のトラブルを防止し請負契約を適正に履行することです。

責任が重い請負契約だからこそ、主任技術者以外にも請負工事の契約内容を把握している人も必要です。

注意点

もし現場代理人を選任する場合には特に注意して欲しいことがあります。

それは代理権の授与範囲を明確化した書類を必ず作ることです。これは権限事項を明確化した書類を作成しないことに関して罰則があるからではありません。

仮に授与範囲を明確化した書類を作成しなくても建設業法上の罰則はないです。

では、なぜ選任する際には特に注意するのでしょうか。

それは民法上の問題を引き起こす可能性があるからです。

もし権限の範囲や現場代理人が変更したことを口頭で済ますと無権代理の問題が生じます。

無権代理とは、請負人を代理する権限(代理権)がないにもかかわらず、ある者が勝手に請負人の代理人として振る舞うことです。

無権代理ということになりますと、現代理人には損害賠償等の責任が問われることになります。

現場代理人本人の問題とはいっても請負者である管理監督責任や相手方が代理権の範囲内であることに無過失であったなど、同時に複数の問題が生じ裁判沙汰になりかねません。

これらを防ぐために授与範囲を明確化した書類を必ず作成して相手方に通知しましょう

まとめ

いかがでしょうか。

現場代理人は現場に常駐する請負契約事務に関する代理人です。ただし配置するかしないかは任意です。

配置した場合は発注者に現場代理人に必要な情報を書面や電子メール等で通知します。

権限の範囲や現場代理人が不明確な書面だとトラブルにつながりかねません。

どういう書類を作るべきか相談出来る相手がいなければ建設業の約款に準ずる形で作成することも一つの手段としては検討してもいいかと思います。