建設業法上、経営業務の管理を適正に行う者のうちの一つ、「建設業に関し六年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験を有する者」について証明するための必要書類や補佐する業務とは何なのかについてまとめております。取締役に対象者がいない事業者は労働者で許可要件等を満たせないか確認してみてください。
建設業の許可を取得するためには経営者が一定以上の経験等を有していることが条件として課せられています。
建設業法7条 建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有するものとして国土交通省令で定める基準に適合する者であること。
このうちの一つに施行規則第7条第1号イの(3)の規定では次のように記載されています。
建設業に関し六年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験を有する者
この経験を有しているものを常勤の取締役として就任させられたら許可の要件を満たすということですね。
この補佐する業務とは一体なんでしょうか。
執行役員とは異なるのでしょうか。
この記事では許可要件である補佐した業務に6年以上従事した経験につき解説します。
Contents
重要な2つの概念
今回これ
この①と②が重複する期間が6年以上あれば、取締役に求められる建設業許可要件を満たすということです。
それぞれ確認しましょう。
①補佐する業務とは
補佐する業務とは建設業法上はどんなことを指しているのでしょうか。
具体的には次の業務と言われています。
経営業務の管理責 任者に準ずる地位にあって資金調達、技術者等配置、契約締結等 の業務全般に従事した経験
これらを包括的に補佐していたことが求められます。つまり建設業の資金調達だけ担当していたことは原則認められないと考えれます。
②経営業務の管理者に準ずる地位とは
補佐する業務は何だかわかりました。
しかし、この業務を経営業務の管理責任者に準ずる地位で経験した必要があります。
この定義を確認しましょう。
分かりやすく言うと、法人と個人事業主で異なります。
法人 ⇒ 部長や副支店長
個人事業主 ⇒ 一人親方の奥さん や 子供
この準ずる地位にある者とは施行規則第7条第1号イの(2)にも定められています。
建設業に関し五年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る。)として経営業務を管理した経験を有する者
では7条第1号イの(2)と7条第1号イの(3)の明確な違いはなんでしょうか。
それは(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る。)ですね。
(2)の経営業務の管理責任者に準ずる地位とは執行役員を指します。しかし執行役員とは会社法で定められている者ではありません。
よって会社が自由に制度を導入しても問題ないものです。しかしそれだと建設業法の目的である発注者保護に繋がりません。
そこで建設業法上、要求する基準を満たした執行役員制度の下で経験したものであれば認める取り扱いとなっています。それが(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る。)です。
詳しくはこちらの建設業許可の準ずる地位とは?執行役員制度の導入・証明方法にてご確認ください。
今回説明するの経験期間は経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者は経営業務を執行する権限の委任を受けてない場合でも認めるということです。
建設業法上の執行役員制度は取締役会がない会社は対象外になります。取締役会は最低でも取締役が3人、監査役が1名必要なのである程度大きな会社だと認められません。
ただ取締役会がない会社でも準ずる地位で補佐していた経験があれば、その者が取締役でない期間も経営経験として認める。
⇒ 経営者に準ずる地位である部長職などでの経験といった関係です。
よってこの補佐した経験を使って経営者の許可要件を満たすよう目指す方は次のような方だと想定されます。
•部長職の方が建設業の事務方に積極的に携わっている事業者
•個人事業主の父親の下で給料をもらいつつ仕事をしていて独立後すぐに許可を取りたい者
•現状、建設業許可は受けているが取締役を5年以上務めている者を維持する体制が難しい事業者
準ずる地位で6年以上補佐した経験を書類で証明する
補佐した経験というのは取締役の経験ではなく、労働者としての経験です。
よって登記簿謄本などといった、公的な書類で証明出来るものがありません。
つまり社内資料が経験の証明書類になるので、この書類があれば大丈夫と言い切れるものが少ないです。
よって補佐した経験を活用して常勤役員等を選任される事業者はどういったことが求められるのかを確認しましょう。
補佐経験で求められることは大きく2つです。
今回これ
この2つをそれらを証明できる書類を確認しましょう。
法人と個人事業主で異なりますのでそれぞれ説明します。
法人・経営業務の管理者に準ずる地位 証明書類
まずは法人からです。
基本的には次の書類が必要です。
(2)人事発令書 (3)賃金台帳 |
それぞれ確認しましょう。
(1)組織図
組織図とは会社がどういう指揮系統でどんな部門があるかということを図示したものです。
この補佐した経験を有する者は取締役の直下に位置していないといけません。
上の例で言うと真ん中の●3つのどれかです。●3つは部門によって分かれているとお考え下さい。建設業の部門の労働者としてトップで、その上には取締役がいる関係性です。
それが経営業務の管理責任者に準ずる地位です。
平社員ではないので、組織図には役職も記載しましょう。
(2)人事発令書
いわゆる辞令です。
辞令で役職、部門、氏名、任期、選任日を確認しましょう。
これと組織図と合わせて準ずる地位で6年間あったかどうか確認可能できる資料になります。
(3)賃金台帳
取締役直下の地位なので、あまりにも給料が低いと地位性を否定されるかもしれません。
役員と同等程度、一般的な従業員よりは多く貰っていることを証明出来れば準ずる地位としての信ぴょう性を高めると考えます。
賃金台帳だけではなく、社会保険の標準報酬決定通知書もあれば、より給与の額の信憑性も増すので可能であればご準備下さい。
法人・補佐する業務に従事したこと 証明書類
次に法人にて補佐する業務に従事したことの証明書類です。
(4)建設工事の契約書 又は 許可証の写し (5)稟議書 などの決済文書 (6)業務分掌規定 (7)厚生年金被保険者記録照会回答票 |
それぞれ確認しましょう。
(4) 建設工事の請負契約書又は 許可証の写し
この補佐した経験は請負工事に関して、取締役等を補佐した経験です。
よって経営を補佐した請負工事の契約書が必要になります。
これが法人で許可を受けていた期間であれば、許可証の写しを添付すれば問題ないでしょう。
(5)稟議書などの決済文書
補佐した業務に実際に準ずる地位で関わったことが分かる書類が必要です。
取締役などから承認を得る決裁書類や、
請負工事の契約や施工に関する書類など検印が確認できるものが認められるでしょう。
(6) 業務分掌規程
業務分掌規程とは、役職者や部門の業務内容を明文化した社内資料です。
補佐した経験を積んだ者が建設業課の部長という肩書きであれば、業務分掌規程上に資金調達、技術者等配置、契約締結等の業務が明記されていることが確認されます。
(7) 厚生年金被保険者加入記録照会票
補佐した経験期間中に、その会社の在籍証明が必要です。
厚生年金保険に加入していれば問題ないでしょう。
法人は以上です。
個人事業主・経営業務の管理者に準ずる地位&補佐する業務に従事 証明書類
個人事業主時代の補佐した経験もその直下で働いていた経験でないといけません。
その場合の必要書類は次の2つです。
•所得税の確定申告書及び専従者欄の写し ●建設工事の契約書 又は 許可証の写し |
個人事業主は法人と比べてかなり簡素でも大丈夫なケースが多いです。
基本的には父親が個人事業主で建設業を営み、家族が家業を手伝っていることをを想定としているからでしょうか、細かい書類は求められない印象がありま。
なので、6年分以上、社会通念上比べてある程度の給料の額を貰っていたかということで補佐していたかどうかを判断するようです。
そのために確定申告書上で家族への給料を経費としているか、専従者欄にて氏名と金額が確認されます。
注意点
経営業務の管理者に準ずる地位で補佐した経験を活用して、建設業許可の要件を満たすために必要なことを書きました。
法人で利用する場合には、業務分掌規程や稟議書などが必要と手引に書かれていますが、この許可制度を知らない上で完璧に書類を揃えられる事業者はかなり少ないのではないでしょうか。
なので、申請したいけど書類がないやーと思っても諦めないで下さい。
今回書いたものは理想的ではありますが、あくまでも準ずる地位であったこと及び補佐した業務に6年以上従事したかどうかを証明すればいいわけです。
全く同じ物を揃えないといけないわけではありません。この記事で書いた以外の書類でも証明すべきことが確認出来る書類が準備出来るのであれば、認められる可能性はあります。なので必要に応じて専門家にご相談されてください。
ちなみにこの準ずる地位で補佐した経験は以前働いていた会社で積んだ経験も使えますが、その場合、この記事で記した当時働いていた会社の社内資料を準備する必要があります。活用を検討する場合には社内資料を過去働いていた会社から借りることが出来るか確認しましょう。
もし大臣許可を持っている事業者は、令3条の使用人の直下で補佐していた経験も認められると言われています。これが一般的に副支店長などが該当すると冒頭にいった理由です。
許可要件の常勤役員候補を増やしたいご意向であれば、制度を整備しても良いかもしれません。
ご不明点はお気軽にご連絡ください。