元請の建設業者は建設現場ごとに下請従業員の分まで含めて労災に加入し労災保険料を支払わないといけません。
それは建設業特有の工事現場に複数事業者が混在する形で事業場を形成し、安全管理の統括責任者である元請業者を現場の使用人と定めているイメージです。
原則、労災保険料の計算方法は原則は建設現場の従業員の賃金の合計額が必要ですが、下請業者の従業員の賃金を正確に把握することは一般的には困難でしょう。
そこで請負金額を使い労働保険料を算出する方法が認められています。機械器具設置工事業の許可を持っている元請工事の会社はこのやり方にて労働保険料を算出していますが、2点ほど知っておいて欲しいことがあります。
基本的なことも含めて、労働保険料の申告書作成につきご確認下さい。
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労働保険料の基礎
労働保険料の基本的なことを書きます。理解している人は読み飛ばして下さい。
労働保険料は1年間ある程度の予測する形でざっと支払い、翌年度の7月10日までに正しく計算させ保険料を確定させ概算の差分を精算します。これを毎年繰り返すことで労働保険料は支払われる仕組みです。手続の名称を年度更新といい、前者を概算労働保険料、後者を確定労働保険料などと呼んでいます。
保険料の算定方法は通常は1年間の合計賃金額に事業の種類ごとに定められている保険料率を掛け合わせ数値が確定します。ただ建設業は下請の従業員の賃金や賞与、通勤手当なども含めていくら支払ったかを把握する必要があるため事務手続が煩雑です。
よって建設業の元請業者は別の計算方法として請負金額を使った労働保険料の算出が認められています。工事が開始する度に保険関係が成立して、終了すれば保険関係の精算手続をする仕組みです。
ただ、いくら元請の現場とはいえ、それほど請負金額が多くなく工期が短い現場ごとに保険関係を成立させて保険料の申告をするのは手間ですよね。そこである一定程度の金額未満の現場であれば、年度更新と同じタイミング(翌年度の7月10日)で請負代金の金額を合算して保険料を支払えばいいとなっています。
このことを一括有期事業と呼び、建設業と林業のみ認められている方法です。
そして一括有期事業の報告書にて合算額を記載します。以下記載例
以上が労働保険料の基礎でした。
元請・機械器具設置工事業者の年度更新の注意点
それでは本題です。
元請・機械器具設置工事業者の年度更新において注意して欲しいことが2つあります。
それぞれ確認しましょう。
①材料代や貸与物の賃料も請負金額に含む
請負代金とは工事の注文者から支払われる金銭です。この代金の中に資材代金なども含まれておらず、材料が別途支給される場合にはその相当額を請負代金に加えないといけません。
また重機の機械等の賃貸料なども請負代金に加えます。
建設業法の請負代金と概念が完全に一致しないため、請負代金と一言で言っても請負契約書に書いてある金額が正解とは限らないのでご注意下さい。
②請負代金から控除できる装置がある
請負代金が高いと当然、支払う労働保険料は高くなります。
機械器具の代金は高額になるため、保険料が高くなるということですが、一部の機械装置の費用に関しては請負代金から控除して良い取扱になっております。
具体的には告示で次の装置は機械代金を控除していいことが確認可能です。
ただし事業の種類が機械装置の組み立て又は据付の事業(業種番号36)に該当する工事の場合のみです。該当する機械を別の業種番号で組み立て又は据え付けていれば控除してはいけません。
機械器具設置工事業の許可業者であれば取り扱い対象となる装置が多いですが控除する際にはご注意ください。
労働保険料の算出式
以上踏まえ、元請・機械器具設置工事業者の労働保険料の算出方法を確認しましょう。
まずは請負金額を算出します。
式として次のようになっています。
請負代金には支給された材料費や機械の賃料相当額を含み、告示の機械装置に該当すれば機械の代金は控除して良いことは確認しました。
そしてこの請負金額にそのまま保険料を乗じるわけではありません。労務比率を乗じます。
労務比率は工事開始日が令和6年4月1日以降に開始したものであれば、38%が労務比率です。これが賃金総額になります。
賃金総額に保険料率を乗じれば労働保険料です。
事業の種類が36の機械装置の組み立て又は据付の保険料率は1000分の6です。
該当箇所を確認してください。
労務費は建設工事の種類ごとに率が定められ、工事の開始年度により率が異なることをご確認ください。
まとめ
元請・機械器具設置工事業者の労働保険料の申告書の注意点につきまとめました。
労働保険料の申告・計算は原則は賃金の合計額に保険料率を乗じるものですが、それが困難な建設業者の場合には請負代金から労働保険料を計算することが認められています。
しかし労働保険料を算定するための請負代金は建設業法の請負代金と概念が一致しません。必要に応じて調整が必要です。
また請負金額の合計に労務比率を乗じますが、これも年度によって率が異なることがあるため毎年申告前にご確認下さい。
お疲れ様でした。