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この記事の結論と要約
法改正により建設業許可を取得するためには適切な社会保険に加入することが必須になりました。法人が建設業許可を継続し続けるためには社会保険を脱退することは認められません。社保に加入していない事業者は更新申請が出来なくなりますのでご注意ください。

令和2年10月1日の建設業法改正により建設業者は適切な社会保険に加入することが義務付けられました。

具体的には適切な社会保険に加入していなければ許可は取れなくなりました

事業所様からすれば社会保険料が高くなるから嫌だな程度に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、実はそれ以上に怖いと思うことがあります。

それは事業所様が適切な社会保険に加入している状態とはどういうことを指すのか明確に理解していないケースです。

特に令和2年に関しては新型コロナウイルスの影響もあり、多くの事業所様が辛い思いをされました。経費を削減するために年金事務所に相談したら社会保険の免除か脱退を提案をされませんでしたでしょうか。

ここで脱退を選択した場合、建設業の許可継続要件を満たさなくなります

つまり国の出先機関である年金事務所の提案を素直に受入れると建設業の許可が失効になる可能性があるというわけです。

こういったリスクを最小化するためにも、建設業者様に関しては社会保険の制度に関して一定程度理解してもらことが望ましいです。

このページを読むことで建設業法上の社会保険制度につき理解することが出来ます。

建設業法上の適切に加入する義務がある保険とは

建設業法上の適切に加入する義務がある保険とは次の3つを指します。

ここで注意していただきたいことが2点あります。

◆適切に加入する義務がある3つの保険


①健康保険

②年金保険

雇用保険


それぞれの保険の適切に加入している状態を確認してみましょう。

適切な健康保険に加入するとは

まずは健康保険です。

健康保険制度に関してはイメージしやすくするために関係ないことは全て省いて説明します。

健康保険法は健康保険料を支払えば保険証が発行され医療機関の窓口で3割負担になる制度を定めている法律です。

この健康保険証を発行する団体は大きく次の4つに分けられます。

①全国健康保険協会(通称、協会けんぽ)

②健康保険組合

③土建国民健康保険組合or全国建設工事業国民健康保険組合(土建国保など)

④国民健康保険(都道府県が管轄)

日本で生活する全ての方がいずれか4つの組合等に加入義務が課せられています。

では4つのうち任意のいずれかの健康保険に加入していれば問題ないのか?というと、

そうではありません。

法人か個人事業主によって加入すべき適切な健康保険制度は決まっています。

法人が加入すべき適切な健康保険

法人が加入すべき適切な健康保険は

原則的に①全国健康保険協会(以下、協会けんぽ)と②健康保険組合です。

年金事務所で承認を受けることが出来れば③土建国民健康保険組合又は全国建設工事業国民健康保険組合(以下、土建国保など)でも大丈夫です。

よって法人格があるのに④の国民健康保険制度に加入している事業所は建設業許可を取得することが出来ません。

個人事業主が加入すべき適切な健康保険

個人事業主は原則的には④の国民健康保険に加入していれば済みます。

ただし国民健康保険料を支払わないでいると国民健康保険証の効力が失効しますのでご注意ください。

また個人事業主は③の土建国保などにも加入出来ます。

よって③か④の健康保険制度に加入していれば問題ありません。

5人以上雇っている個人事業主

原則的に個人事業主は③土建国保などか④国民健康保険に加入していれば問題ないと書きました。

しかし例外的に雇用している人数が5人以上の場合だと①全国健康保険協会か②健康保険組合の健康保険制度に加入する義務が生じます

つまり建設業法上、労働者を5人以上雇用しているにもかかわらず、④の国民健康保険に加入していれば建設業許可を取得することは出来ません

表にまとめると

色々とこんがらがりますよね。

適切な健康保険に加入するとは個人事業主と法人で異なると書きました。

それを表にするとこうなります。

それぞれの意味することは次の通りです。

◎が適切
○は手続すれば認められる
✕は不適切

☓だと建設業許可は取得出来ません。

適切な年金保険に加入するとは

年金制度は次の2つに分けられます。

◆2つの年金制度

・国民年金

・厚生年金保険

一つずつ確認しましょう。

国民年金とは原則的に20〜60歳までの日本国民全員が加入する年金制度です。厚生年金に加入していれば国民年金に加入扱いになります。よって一般的には個人事業主やフルタイムで働いていない方が国民年金に加入しています。

それに対し厚生年金保険はお勤めされている方に加入義務がある年金制度です。

正社員や役員の方が加入しています。会社と折半で保険料を支払っていることは有名ですよね。

建設業法上、適切な社会保険(年金制度)に加入しているとは

原則、健康保険と同じです。

法人であれば厚生年金保険。

5人以上雇う個人事業主なら厚生年金保険。

個人事業主なら国民年金

健康保険制度より分かりやすいですよね。


厚生年金保険国民年金
法人×
5人以上雇う個人事業主×
個人事業主

5人以上雇う個人事業主への注意事項

5人以上雇う個人事業主は健康保険や厚生年金(建設業に関わらず一般的な社会保険)に加入義務が生じると書きました。

ここで注意していただきたいことが2点あります。

◆5人以上雇う個人事業主が社会保険に加入する際の注意点


①自ら年金事務所で手続きする必要がある

②個人事業主本人は社会保険に加入出来ない


一つずつ確認しましょう。

1つ目の自ら年金事務所に行き手続きをする必要がある。ということについてです。

国民年金や国民健康保険は住民票の異動届をする際に市役所等で終わる手続きでした。

どっかしらついでに終わらせることができる感覚があると思いますが、社会保険はそうはいきません。

自ら年金事務所まで行き適切な手続きをする必要があります。

つまり5人以上雇用したら自発的に年金事務所に行かないといけません

そうしないと適切な社会保険に加入しているとならず建設業の許可が取得出来ないわけです。

ご注意ください。

2つ目は個人事業主本人は社会保険に加入出来ないという点です。

5人以上雇う個人事業主は社会保険への加入が義務付けられていると書きました。

ここでいう労働者とは個人事業主以外の労働者です。

つまり5人雇っている個人事業主が適切が適切な社会保険に加入すると次のような状態になります。

ここで何が問題になるかというと、保険料です。

個人事業主本人は社会保険に加入出来ずに、労働者の保険料は半分支払う義務が生じます

もし事業主本人も社会保険制度に加入したければ、法人格を取得しないと社会保険に加入出来ません。

5人以上雇う個人事業主への注意点は以上です。

適切な雇用保険に加入するとは

次は雇用保険です。

雇用保険法では失業した際に求職活動を行なっている一定期間は生活保障の意味合いとしてもらえる給付金が有名です。失業給付と呼ばれています。

他に有名なものとしては雇用調整助成金が雇用保険料を基に支給されています。

さて、雇用保険に加入する義務がある事業所を確認しましょう。

原則的には個人事業主及び法人ともに同じ条件で雇用保険に加入する義務が課せられています

雇用保険の加入が義務付けられる条件

雇用保険の加入が義務付けられる条件を確認しましょう。

◆雇用保険に加入する義務がある事業所


①労働者を雇用していること

②その労働者が他の会社で雇用保険に加入していないこと

③その労働者が週に20時間以上働いていること

上の①〜③の全ての条件を満たす労働者が一人でもいる場合は、事業主は雇用保険に加入しなくてはなりません

これは個人事業主、法人両方と同じ条件です。

加入しないと建設業の許可は取得出来ません。

ちなみに、上記の条件から専任技術者が役員でない場合には必ず雇用保険には加入させる義務があります。専任技術者が雇用保険に未加入なんてことはございませんでしょうか。

これから雇用保険に加入される方は、最寄りのハローワークにて手続きをします。

加入の手続きに関しては別の記事にて紹介します。

今後起こるであろう問題

令和2年10月の建設業法改正により社会保険に加入していないと建設業許可は取得出来なくなりました。

令和2年9月まで、社会保険の加入は建設業法上は求められていませんでしたので経過措置として、現在未加入の方でも許可はいきなり失効することはありません。

次回の然るべき手続き時には(更新申請や業種追加等)社会保険に加入していればとりあえずは問題ないということです。

この改正により、次のような問題が生じると個人的には考えております。


①悪意のない虚偽申請

②元請業者からの社会保険加入チェックの厳格化

③建設業の更新手続きに間に合わない


一つずつ確認しましょう。

悪意のない虚偽申請

例えばですがコロナウイルスの影響によって経済的な事情により一時的に社会保険を一旦脱退して、更新申請の時に加入するといった手続きです。

年金事務所に相談にいけば脱退手続きの案内をされることがあります。そこで許可業者が一旦脱退すると、その時点で許可要件を満たさなくなります。つまり許可は失効状態です。

仮に更新申請の直前に社会保険に再加入した書類が受理されると虚偽申請に該当します。

そうなると更新はおろか今後5年間は建設業の許可を受けられなくなることも想定出来るわけです。

元請業者けからの社会保険加入チェックの厳格化

元請業者はコンプライアンス意識が高い事業所が多いです。

令和2年10月以降は社会保険に加入していないと許可要件は満たせないことは知っているでしょう。また元請業者は下請け業者の社会保険にかかる費用を現金払いで支給する義務が課せられています。

つまり社会保険への加入チェックが厳格化されることが予想されます。

建設業の更新手続きに間に合わない

建設業の許可の有効期限は5年です。

更新手続きは自治体にもよりますが、有効期限の前日までは受け付けられます。

仮に前日ではないにしろ、有効期限の直前に書類を提出しに窓口に持っていった場合、社会保険に加入していないのであれば申請書は受理しないと言われる可能性は高いと思っております

なぜならば許可要件だからです。

社会保険に加入したとみなすのはどこからかによりますが、もし事業所番号が振り当てられるだった場合に少なくとも1週間はかかります。

以上です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

社会保険に加入していないと建設業の許可は取れません。また更新や業種追加も同様です。

文中にも書きました表を再度載せますのでご確認ください。

健康保険制度

年金保険

 厚生年金保険国民年金
法人×
5人以上雇う
個人事業主
×
個人事業主

雇用保険

◆①〜③の全ての条件を満たす労働者が一人でもいる


①労働者を雇用していること

②労働者が他の会社で雇用保険に加入していないこと

③労働者が週に20時間以上働いていること


以上です。

お疲れさまでした。